今月の質問箱
いろいろな場面で食品安全や食品表示の質問、疑問に遭遇します。自分なりに、気になる質問のコタエを探したい
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消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。
8月25日、子どものビタミンDを含む加工食品の摂取に関する注意喚起が、消費者庁から出されました。
特に、サプリメントで摂取した場合は、おとな向けの成分含有量であることが多く、子どもにとっては過剰摂取になるおそれがあります。
ビタミンDは健康のために必要な栄養素ではありますが、摂り過ぎれば悪影響が出る可能性が。
「日本人の食事摂取基準2020年版」では、ビタミンDについて、18歳以上の男女で、目安量8.5 μg/日、耐容上限量100 μg/日としています。
子どもについては、もちろんもっと少ない値となります。目安量は3~5歳では男3.5 μg、女4.0 μg、6~7歳では男4.5 μg、女5.0 μg。耐容上限量は、3~7歳では、男女とも 30μgと、おとなの3分の1以下です。
消費者庁が作成した注意喚起のちらしにあるように、例えばビタミンDが1粒30 μgのサプリメントであれば、7歳までの子どもの場合、1粒で耐容上限量に達してしまいます。
消費者庁では、「サプリメントは成人向けの配合であることが多く、子どもが摂取すると摂り過ぎになることがあるので注意して」と呼び掛けています。
今回、消費者庁は、未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況等の調査結果を発表。この調査では、3~17歳の子の保護者又は15~17歳の者8,978名を対象とし、ウエブアンケートを実施しました。
調査結果からわかったことは:
過大申告的な回答も含まれる内容だとされていますが、「約1%で耐容上限量を超過」という、この結果を、消費者庁では「驚きをもって受け止めた」ということです。
この調査では、ビタミンDを含む加工食品(一般食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)について、ビタミンD含有量表示なども調べています。
このうち、機能性表示食品と栄養機能食品を見てみると―
《機能性表示食品》
サプリメント類(8製品)では、1日分の摂取目安量で、ビタミンD含有量は1.65 μg~54.0 μg。もっとも多いものは20.0~54.0 μgの幅表示をした製品。し好飲料類(2製品)は5.0 μg~35.0 μg。
《栄養機能食品》
栄養機能食品のビタミンDの規格基準は、下限値1.65 μgから上限値5.0 μgの範囲内で、ビタミンDの栄養機能食品では当然これは守られていますが、ビタミンD以外の栄養素の栄養機能食品では、ビタミンDが5.0 μgを超えるものが複数。サプリメント類(24製品)で、1日分の摂取目安量のビタミンD含有量は1.8 μg~17.0 μg。し好飲料類(21製品)では、1.2 μg~10.3 μg。
この調査事業では、「栄養素等表示基準値の改定に関する調査事業(2019年度)」の検討委員をはじめ、ビタミンDや食事調査等の専門家からなる検討会を設置しています。
報告書では「検討会における議論」として、
・栄養機能食品について、ビタミンD以外の栄養機能食品であっても、ビタミンDの上限値を超えないことが必要
・特定保健用食品や機能性表示食品では、栄養機能食品のビタミンD上限値を勘案した製品設計や栄養素等表示基準値に対する割合表示が望ましい
などの考えを示しています。
スーパーやコンビニで見たところ、「1日分の〇〇をとれる」的なゼリー飲料では、ビタミンDの上限値を超える栄養機能食品がありました。
例えば、「inゼリー(森永製菓)」。栄養機能食品(ビオチン)で、ビタミンDは5.5~16.4 μg。
もう一つ、「1日分のビタミンゼリー(ハウスウェルネスフーズ)」。栄養機能食品(ビオチン)で、ビタミンDは5.5 μg。
こうした食品には、「小児は本品の摂取を避けてください」、「乳幼児は摂取をお控えください」といった表示がありますが、表示位置は裏面が多く、裏までよく読むことが必要です。
ゼリー飲料以外でも、ビタミンDが栄養機能食品の上限値5.0 μgを超える食品はいろいろあります。
ビタミンDの栄養素等表示基準値は5.5μgで、栄養機能食品の上限値と0.5 μgしか違いません(下図参照)。
「1日分のビタミンDがとれる」と表示して販売するには、栄養素等表示基準値を満たすことが必要ですから、含有量が5.0 μgにとどまらず、5.5 μgとなる製品が多くなる―。そういう現実的な問題があるようです。
サプリメントもいろいろありますが、ビタミンDのサプリでは1日分の摂取目安量が1粒25 μgのものも。マルチビタミンでは、1日の摂取目安量に含まれるビタミンDが10.0 μgのもの、21 μgのものもありました。
これらはおとなの耐容上限量を超えてはいませんが、おとなの目安量8.5 μgを大きく超えるものもあり、子どもに飲ませるようなものではありません。
食品安全委員会でも、「ビタミン・ミネラルをサプリメントでとると過剰摂取のリスクがある」としています。
「特に必要量と過剰量の差が少ないセレンや鉄などの微量ミネラル、ビタミンA、ビタミンDなどの体内に蓄積しやすい脂溶性ビタミンなどは過剰にならないように注意が必要」と、「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」で指摘しています。
今回、ビタミンDの摂取状況の調査が行われた背景には、「日本人の食事摂取基準2020年版」で、ビタミンDの目安量の引き上げ(5.5から8.5 μgへ)があり、過剰摂取が懸念されたことがあります。
また、新型コロナウイルスとの関連で、食品で免疫機能アピールの宣伝が多く見られるようになったり、外出自粛で日光浴の機会が減りビタミンD不足への懸念が多くなったりしたことも、摂取状況と関係しているかもしれません。
しかし、新型コロナに関しては、ビタミンDの効果は確認されていません。
「ビタミンDでコロナ予防、〇〇サプリがお勧め」といった表示については、消費者庁が景品表示法(優良誤認)及び健康増進法(虚偽・誇大広告)の観点から、改善要請と注意喚起を行っています。
ビタミンDの特徴は、日照により、皮膚で産生されること。
「日本人の食事摂取基準2020年版」でも、
「日常生活において可能な範囲内での適度な日光浴を心がけるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
とされています。
特に子どもは、サプリ利用で過剰摂取となることのないように注意しましょう。おとな向けに作られた製品は、おとな向けとわかるように、明確に表示してもらいたいと思います。
参考:消費者庁 未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況の調査結果等について
(9月10日FOOCOM会員向けメールマガジンを加筆修正しています。)
消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。
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