科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

第2弾も出た、週刊新潮「食べてはいけない『国産食品』実名リスト」の反響は?

瀬古 博子

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週刊新潮第二弾

週刊新潮が前号に引き続き、「大反響! 食べてはいけない『国産食品』実名リスト 第2弾」として、特集している。

読者は、意外と冷静な受け止めも

週刊新潮の記事は、ネット掲載されており、読者コメント欄も読むことができる。

週刊新潮では「大反響!」と言っているが、コメント欄をみると、「量が大切」といった意見がけっこうあり、割と冷静に受け止められているようだ。

農水省ホームページも一部分だけを切り取り?

第2弾は8ページと、第1弾よりもページ数が多いが、前半は、前回と同じ添加物の話で、今回も農林水産省や食品安全委員会の資料を一部分だけ切り取って引用している。

たしかに、週刊誌記事にあるとおり、農林水産省ホームページには、「(硝酸塩は)ヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、 メトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあるということが一部で指摘されています。」と書かれている。

だが、この一文は「しかし、生体内における硝酸塩から亜硝酸塩への転換のメカニズムは複雑」と続いているのではないか。さらに、FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)は、「硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならない」と言っていると結ばれているのではないか。

そもそも、この一文は、「野菜等の硝酸塩に関する情報」からの引用であり、添加物の話題というより、野菜に含まれる硝酸塩について解説しているものではないか。

このような部分的な切り取りは、添加物のリスク情報だけを強調し、天然物の情報を覆い隠してしまう。かえってリスクの全体像が見えにくくなるのではないか。

科学的根拠とならなかった合成着色料の研究結果

第2弾の週刊誌記事では、合成着色料の摂取と子どもの行動に関する研究結果の話がでてくる。これは、イギリス・サウサンプトン大学の研究者らによる添加物と子どもの多動との関連に関するもの(McCann et al, 2007)だが、2008年にはEFSA(欧州食品安全機関)が、6 つの着色料について、個々の着色料と行動への影響の間の因果関係は立証できないと結論した。

6つの着色料は下記のとおりで、どれもEUで承認された添加物につけられる「Eナンバー」がついている。

無題

EFSAは着色料の再評価を行い、上記のうち、キノリンイエロー、サンセットイエローFSF、ポンソー4RのADI(一日摂取許容量)を引き下げたが、いずれの場合も、サウサンプトンの研究結果をADI変更の根拠としたのではなかった。ただし、EUでは、これらの着色料に警告表示を義務付けた。

詳細は、国立医薬食品衛生研究所「食品安全情報 No. 24 / 2009」(p20~)をご覧ください。

(なお、その後のEFSAの着色料評価については、「食品安全情報(化学物質)No. 20/ 2016」(p8~)食品安全委員会「食品安全関係情報」等をご覧ください。)

というわけで、これらの着色料はADIが定められ、量で規制されている。では、日本人の摂取状況は?

厚生労働省の調査結果を見てみよう。

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(厚生労働省「平成 28 年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査の結果について」より抜粋)

上記のように、摂取量は非常に少なく、ADI比は一番多い食用黄色4号でも0.02%。合成着色料なんかとりたくないと思う人は多いだろうが、実際、心配するほどの摂取量ではないといえる。

大多数のしょうゆはクロロプロパノールを含まない

最後に、第2弾の週刊誌記事で、「発がん性が認められ」ているが、日本では残留基準がないとされたクロロプロパノール類(3-MCPD)について。

この物質は、主にしょうゆなどの調味料の原材料として用いられている酸加水分解植物性たん白に含まれているが、農林水産省によれば、日本のしょうゆ生産量の8割以上を占める本醸造方式で製造されたしょうゆは、アミノ酸液(液体の酸加水分解植物性たん白)を原料に使用しないため、3-MCPDを含まない。また、日本人のしょうゆ由来の推定摂取量も0.002~0.005 μg/kg体重/日とごくわずか。国際機関が定めた許容量(2 μg/kg体重/日)の1%未満となっている。

ただし、アミノ酸液が混合された混合醸造方式又は混合方式のしょうゆには、3-MCPD濃度が高いものがあることがわかっている。現在、しょうゆの製造過程で低減する指導が行なわれており、対策が講じられているところだ。

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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