野良猫通信
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。
東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
2025年1月に、筑摩書房からちくま新書の一冊として「サプリメントの不都合な真実」が発刊されました。
この本は、2024年3月に発覚した小林製薬の紅麹を含む機能性表示食品による健康被害事件をうけて企画されたものではありますが、その目的はこの事件の解説ではありません。紅麹製品を巡る事件についてはここFoocomでもいくつかの解説がありますが、事件そのものはまだ現在進行中で全容がわかっているわけではありません。原因の究明や対策は今後も継続して行われ、何らかの形でふりかえることができるのは数年先になるでしょう。
この本は、この事件をきっかけに、サプリメント形状のいわゆる健康食品をなんとなく使っていた人たちに、その周辺の情報をある程度まとまった形で、わかりやすく、簡単に手に取れるように提供しようと試みたものです。
私は2016年に日本評論社から単行本として
「健康食品」のことがよくわかる本を書いています。
その一節に紅麹のことを書いているのは、Foocom「紅麹サプリ問題を2016年の著書で警告」でご紹介したとおりです。残念ながらこの本は現在紙の本としてはほとんどなくなっていて、電子書籍でのみ購入可能となっています。
「健康食品」を巡る問題点についてはこの本を執筆したときとあまり大きく変わってはいないのですが、日本における健康食品の状況は健康食品史上最大の健康被害を出すことになってしまったわけです。
この事件を受けて、私も多数の報道機関からの取材をうけました。一般むけのニュースや記事を担当している記者さんたちでは、圧倒的な量のいわゆる健康食品の広告宣伝で植え付けられているイメージと実際のギャップを説明するのは大変でした。特に不純物や分析方法に関しては医薬品との違いを説明するのに苦労する場面も結構ありました。
取材している記者さんたちの多くは「『健康食品』のことがよくわかる本」を読んでもらったうえで話をするようにしていたのですが、「ずっと前から指摘されていた多くのことを知らなかった」「初めて聞いた」といった反応をされることが多かったです。食品安全委員会や厚生労働省、消費者庁などの国の機関も結構頑張って情報提供はしていたのですが、結局伝わっていないことが多いと思い知らされました。
そんな中、新書という媒体は、単行本より多くの人に手に取ってもらえる可能性が高いこと、専門家ではない一般の人が読者であろうことなどから、出版社の方から新書を出しましょうという提案がありました。
最初は、私は先の本で概ね要点は指摘しているので、特に目新しいことは書けないとあまり乗り気ではなかったのですが、内容がそれほど新しくなくても対象とする読者層が違うので需要はあるのだろうと納得しました。健康食品への関心が高まっている時期に出版することにも意味があるため、結構急いで執筆したことは事実です。でもだからとって手抜きで適当に書いたというわけではありません。
そしてできた新書を手に取ってみると、確かにコンパクトで手軽に誰かに手渡すことが可能です。専門書に比べると若干煽り成分多めのタイトルと帯ではありますが、とにかく手に取ってもらうため、ということで了解しました。
新書を普段からよく読むような人たちはもちろんですが、それ以外の人にも届けたいと思います。特に、日頃あまり積極的に他人と話すことなく通販でたくさんのいわゆる健康食品を購入しているような高齢者の方などには、是非家族がこの本を勧めてほしいと思います。
いわゆる健康食品の間違った使い方に、何種類もの製品を同時に使うことがあるのですが、通販の定期購入のような形で購入されると誰からも気が付かれることなく大量摂取してしまうことがあります。医薬品の通信販売は規制されているのに健康食品にはそのような制限はありません。
また、講演などの際によく質問されるのが、親や配偶者のような「家族がいろいろ使っているのが心配なのでどう説明したらいいか」、といったことなのですが、時間をかけて改まって話し合いをするのは難しいような場合でも「こんな本があるよ」といって渡す、近くに置いておく、といった使い方ができるのではないかと思います。
実はつい先日、ある駅の中にある普通の本屋さんにこの本が置いてあるのを発見しました。これまでの単行本は相当大きな書店でしか見たことがなかったので、新書のリーチがそれより広いということを実感したばかりです。
Foocomの読者の皆さんにも是非手軽に活用して頂きたいと思います。
東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。