科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食品表示・考

第12回食品表示一元化検討会 板倉ゆか子さん

森田 満樹

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 第12回消費者庁食品表示一元化検討会は8月3日10時から2時間の予定でスタートした。配布資料として「食品表示一元化検討会報告書(案)」及び「加工食品の原料原産地表示に関する検討会における議論の経緯」が用意されていた。これは、加工食品の原料原産地表示の拡大は委員の意見が噛み合わず、報告書とは別に資料を作るということで事務局が作成したものである。また、委員の机上には山根委員提供資料が配られ、報告書(案)について再度、議論が進められた。

 聴力の低下に加えて、会場あるいは座った場所のせいか、傍聴席から委員それぞれの意見を正確に聞き取り書き留めることが出来なかったので、今回は議事要旨を書くのは差し控え、全体的な流れと感想を以下に書くこととしたい。

 会議のはじめに、事務局が前回の議論を踏まえて、報告書案の資料の修正点について、簡単に説明を行った。しかし、第11回の振り出しに戻ったような意見が出たのを皮切りに、案に採用されなかった自説を再度持ち出す委員が続出した。
 一方、これまでの議論の中で数々の意見を出した委員であっても、消費者庁が資料や報告書案に取り上げようとしないので、ここまできた上は、この場で議論を蒸し返したとしても無駄な時間が過ぎるだけと判断して、異議を唱えず、事務局案でまとめようとする姿も見受けられた。

 しかし、座長は終了予定時間を過ぎてからも、口をつぐむ委員の面々に向かって「他に意見はないか」と促し、複数の委員が栄養成分表示の義務化について否定的な意見を持ち出したり、現状の義務表示を減らすべきとの発言をしたり、「加工食品の原料原産地表示に関する検討会における議論の経緯」の資料の中間論点整理のパブリックコメントの原料原産地表示についての意見の具体的な件数公表部分について撤回を求めたりした。

 終了間際にここまで食い下がるのは、今後の検討会議において、自分たちの意見を有利に通していくためのステップと考えているのかもしれないが、たとえ、論理的にもっともな発言をしていたとしても、消費者サイドからみると、業界のイメージを損ない、信用をなくすことにつながりかねないのではないか。

 原料原産地の経緯をまとめるに当たって、会議途中に委員にだけ配られた資料には、原料原産地表示が合意に至らなかった点を事務局がまとめた検討の経緯(1案:A案)と、複数の委員が提出した原料原産地表示についての意見の列記(2案:B案)があったようだ。
 しかし、これについても意見がわかれ、結局はどちらも採用せずに、事務局がまとめた「加工食品の原料原産地表示に関する検討会における議論の経緯」に議事録を抜粋したものを併せて、報告書とは別の別添資料として、今回出た意見を基に修正した報告書とともに発表し、今後の検討に託すこととなった。

 会議は1時間40分延長したが、報告書案に対する細かな修正意見は事務局が取り上げたものの、大きな変更はされなかった。会議時間の大幅延長は、傍聴者に苛立ちや呆れ顔を残し、検討会の進行のまずさを際立たせた。

 今回の報告書案をみてみると、消費者基本法の理念の「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」の実現のため、「食品表示は、安全性確保や選択の機会確保に関する情報がより確実に消費者に提供されることが特に求められる」と書かれていた。しかし、ここでの消費者は、価値観の異なる多様な消費者と捉えられ、重要と考える情報が異なるために、消費者間でも見やすさやコストに対する意識が対立するという前提に立つものだった。

 しかも、栄養表示が新法施行後5年以内に加工食品を対象に義務付けられ、文字を大きくする、といったことは盛り込まれたが、原料原産地表示の義務付け拡大については合意が出来ず、栄養表示以外の具体的施策が明確ではない。

 景品表示法を加えるべきという意見やアルコール飲料を対象とすべきとの意見が出たにもかかわらず、「3法の枠組み」の維持に留まり、3法で異なる現在の表示監視のあり方、法執行のあり方、その整合性の面では、課題が残されたままで、法律案が出来てはじめて、状況が明らかになる模様である。

 わかりやすさや、安全性も強調されているが、わかりやすさは、用語の統一・整理に触れてはいるものの、文字の大きさばかりが目立つ。
 栄養成分表示は長期的にみると安全性そのものの表示であるが、事務局は健康増進と捉えており、食品衛生法による衛生管理のためのロット番号等の義務化は否定されているので、安全性に関わる表示の重視とは何を指すのかも定かでない。「コスト」と「優先順位」ばかりが目立つ報告書案は、消費者の望んだ食品表示法とはほど遠いものになりそうな気配だが、事務局は、中間整理の段階で「すでに国民の意見を募集した」との理由で、今回の報告書についてパブリックコメントを実施する予定はない。

 平成24年度中に食品一元化の法案を国会に提出することを目標に掲げていたのに、この報告書案は、具体的にどのような法案に落としこまれるのだろうか。(消費生活アナリスト・板倉ゆか子)

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。