科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

FAO:パンデミック中、健康的な食事を維持する提言 「新型コロナウイルス感染を予防できる特定の食品、サプリはない」

瀬古 博子

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新型コロナウイルスの感染者の増加が続いています。
「食品を介して新型コロナウイルスに感染した事例は報告されていない」と厚労省は言っており、海外でも「食品を介して、このウイルスが伝播したというエビデンスはない」と、WHO(世界保健機関)EFSA(欧州食品安全機関)などが言っています。

一方、「これを食べれば感染を予防できる」という食品やサプリは、存在しません。
健康食品や食品素材の情報を広く提供している国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所でも、ビタミンD、納豆、オリーブ葉エキス、マヌカハニー、水素水、プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)、にんにく、ビタミンCなどについて、予防効果を否定する情報を出しています。
はちみつは、テレビ番組でウイルスに効くかのように取り上げられ、売上が急増しているそうですが、乳児ボツリヌス症の危険がありますから、1歳未満の乳児には与えないように注意してください。

WHOも、にんにくの予防効果などデマ情報を否定
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters

それでは、消費者ができることは?
家にいること、手洗いの徹底…、いろいろありますが、食事に関しては、できるだけ健康的にしたいもの。
今回は、FAO(国連食糧農業機関)が3月に出した「COVID-19 パンデミック中の健康的な食事を維持」をご紹介します。

●良好な栄養状態を守ろう

良好な栄養状態は、感染の前後を通して、とても重要です。感染は体に負担をかけ、特に発熱すると、体は余分なエネルギーと栄養素を必要とします。

どのような食品、サプリメントでも新型コロナウイルスの感染を予防することはできませんが、その一方で、健康的な食事を維持することは、免疫機能を支える上で重要です。

<健康的な食事を維持するためのFAOの推奨事項>

・重要な栄養素を適切に摂取するために、あらゆる食品群から、そして各食品群から、多様な食品を食べよう。
日本の食事バランスガイドを参考に。

果物と野菜を十分とろう。
これらはビタミン類、ミネラル類、食物繊維を供給してくれる。

全粒穀物、ナッツ、健康的な油(オリーブ、ごま、ピーナッツの油など、不飽和脂肪酸が多い油)が豊富な食事をとろう。

脂肪、砂糖、塩の摂取に注意しよう。
ストレスの多いときは、食べることで気持ちをなぐさめて、食べ過ぎにつながりがちだし、脂肪、砂糖、塩、エネルギーが多いものはおいしく感じられて、手が伸びてしまう。食品表示をたしかめよう。

よい食品衛生の実践を続けよう。
新型コロナウイルス感染症は食品由来の病気ではないけれど、食品安全の5つの鍵を覚えておこう。1)清潔に保つ、2)生の食品と加熱した食品を分ける、3)よく加熱する、4)食品を安全な温度に保つ、5)安全な水と原材料を使う。

水を定期的に飲もう。
普通の水をたっぷり飲む(ほとんどの成人で1日にコップ6-8杯)ことで、十分な水分補給ができ、免疫機能にも役立つ。

アルコール飲料の消費を制限する。
アルコール飲料を飲むことでストレスを解消しようとする人は多いが、アルコール飲料は栄養価がほとんどなく、高エネルギーであることが多く、飲み過ぎは多くの健康問題につながる。飲む場合は控えめに。

●食品ロスを防ぐには

多くの人がスーパーの棚で食品がなくなるのではと心配していますが、ほとんどの場合、空の棚は、食品供給がまったくできないということではなく、流通のボトルネック状態(A地点からB地点に食品を移動できない)を示しています。世界中の販売事業者がこの課題に取り組んでいます。
インターネット通販などで食品を購入することも可能でしょう。地域の小規模農家の直売システムを利用するなどで、地元の農家を支援することもできます。

FAOでは、不必要な食品廃棄を減らすために、家庭で必要となる以上に買わないことを勧めています。
また、家庭で食品ロスを減らすために、次のような9つのステップも推奨しています。

食品廃棄を減らす9つのコツ

 

 

 

 

<食品廃棄を減らす9つの簡単なコツ>

1)少量を頼もう
2)残り物をうまく活用しよう
3)賢く買い物をしよう-買い物リストを作って計画的に
4)“不格好”な果物や野菜も買おう
5)冷蔵庫を確認しよう-在庫や温度、入れ過ぎていないかなども
6)先入れ先出し(FIFO)を実践しよう-冷蔵庫や棚で先に入れたものから食べるように
7)食べ物の期限を理解しよう-きちんと保管されていたら賞味期限が過ぎても多くのものは食べられる
8)廃棄物をたい肥に
9)分け合うことは気遣うこと:分かち合いましょう

健康的な食事に加えて、次のことも重要です。

・喫煙しない
・定期的に運動する
・適度な睡眠をとる
・ストレスを最小化し、対処する

参考:
FAO:Maintaining a healthy diet during the COVID-19 pandemic
WHO神戸センター:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)WHO公式情報特設ページ
FAO駐日連絡事務所
WHO:迷信や不安に対するアドバイス(Myth-busters)
公益社団法人日本栄養士会:新型コロナウイルス感染症について

 

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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