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執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

「自然のものは安全」は間違い。有毒植物で死に至ることも

瀬古 博子

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東京都薬用植物園にて著者撮影(以下同)

                 東京都薬用植物園にて著者撮影(以下同)

今年も山菜狩りのシーズンがやってきた。たらのめの天ぷら、ふきみそなどを楽しむ人もいるだろう。

しかし、気を付けたいのは、毎年この時期、山菜とよく似た有毒植物で食中毒が起きていること。

2017年5月には、北海道で、山菜のギョウジャニンニクに似ている有毒植物イヌサフランを誤って食べたことにより食中毒が発生し、死者も出ている。

今年もつい先日、山梨県で、ニラと誤食しやすいスイセンにより、食中毒が発生したと報じられたばかりだ。

山菜にそっくりな有毒植物

過去10年間(2007年~2016年)で発生した食中毒事件数は、スイセンで44件、バイケイソウで20件、イヌサフランで13件、トリカブトで11件など。死者数はスイセンで1名、イヌサフランで6名、トリカブトで3名。死者数については、このほかに、前述したとおり、2017年にイヌサフランでひとり死者が発生している。

イヌサフラン看板

食中毒の原因となる有毒植物は、多くの場合、山菜と似ている。見間違えるから、誤って採取したり、人にあげたりして、誤食につながり、食中毒が発生してしまう。

前述のイヌサフランとギョウジャニンニク、スイセンとニラ以外にも、バイケイソウとギョウジャニンニク、トリカブトとニリンソウなど、有毒植物と食用植物で似ている組み合わせは数多くある。

いったいどれほど似ているのか。

スイセン にら

ニラとスイセンなどは葉が似ているが、ニラには特有のにおいがあるので違いがわかるはず。しかし、スイセンは、ニラだけでなく、葉がノビルとも間違えやすい。また、球根は玉ねぎとも間違えやすい。

イヌサフランも、葉がギョウジャニンニクの他、ギボウシとも似ていて、球根はジャガイモ、玉ねぎと似ているなど、複雑だ。

バイケイソウは、ギョウジャニンニク、オオバギボウシに似ており、しかもオオバギボウシとは一緒に生えていることがある。

トリカブトも、ニリンソウと似ている上に、ニリンソウにまじって生えていることがあり、間違えやすい。

ニリンソウ

鑑賞用植物と間違えることも

今回、東京都小平市にある東京都薬用植物園に行ってみたのだが、実際にさまざまな植物を見てみると、一つ一つの植物には個体差もあるので、これを見極めるのはかなり難しいと感じた。

山菜狩りでは、食べられるかどうか判断できない場合は、「採らない、食べない、人にあげない」が基本だが、これを忘れないようにしたい。

また、最近はガーデニングが人気で、鑑賞用植物と食用植物を並べて植えて、間違えるケースもある。鑑賞用のものと食用のものは、明確に区別しておくことが必要だ。

キョウチクトウで被害

山菜とは似ていないので食中毒を起こす可能性は低いが、過去には問題となった有毒植物もいろいろある。例えば、キョウチクトウは、葉が竹に似て、花が桃に似ていることからこの名がついた植物だが、海外では、バーベキューの際にキョウチクトウの枝を食品にさして、有毒成分が食品に移り、死者が出た事例もあると言う。

キョウチクトウ

調べてみたら、海外どころか、日本でも2017年12月、高松市で小学生2名が学校内に植えてあるキョウチクトウの葉を食べて食中毒になっていた。葉が食べられると思い込み、3~5枚程度食べたらしい。入院したが、幸い2名とも退院し、治癒した。

身の回りの植物が何でも食べられると思うのは、自然・天然のものは安全との思い込みがあるからかもしれないが、自然のものこそ猛毒なこともあり、油断できない。有毒植物やきのこの毒、また、ふぐ毒による食中毒では、命を失うこともある。「自然=安全」ではないことをあらためて意識しておきたい。

[参考]

東京都薬用植物園

東京都「身近にある有毒植物」

厚生労働省 「自然毒のリスクプロファイル」

 

 

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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