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執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

岡山県産バナナに未来はあるか

瀬古 博子

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 1月に岡山県に出張した際に、地方紙を読んで知ったのだが、岡山県産バナナが生産され、話題になっているという。

 記事によれば、岡山県笠岡市でとれたバナナ「瀬戸内完熟バナナ」がはじめて発売され、1本300円で道の駅で35本並べたところ、約1時間で完売したそうだ。
 その後、テレビの放送でも、岡山県でのバナナ生産の話題を見ることがあり、ああ、本当に生産がスタートしているのだなぁと思っていた。
 そして、つい最近、朝のテレビ番組で、岡山県産バナナの紹介をあらためて見る機会があった。

 この番組で紹介されたのは、岡山県産「もんげーバナナ」。前述の「瀬戸内完熟バナナ」とは生産農園が異なるようだ。
 「もんげー」とは方言で「すごい」という意味で、「もんげーバナナ」は1本650円ほどで、岡山市の岡山天満屋で販売されている。

 「もんげーバナナ」は、甘みが強く、皮ごと食べられると言う。
 テレビ番組では、ゲストに「もんげーバナナ」が配られ、試食された。そのようすを見ていると、たしかに甘くて、皮ごと食べられるのだと言う。皮はフキのような食感だそうだ。

 そこで思い出したのが、バナナの残留農薬の基準値の話だ。青果物の残留農薬は、例えば、桃であれば果皮と種を取り除いて検査するというように、可食部を検査部位とすることが多いが、バナナについては、なぜか皮ごと検査することになっている(正確には、果柄部を取り除いたものが検査部位)。
 それはなぜなのか不思議に思っていたが、どこかの国だかどこかの食文化で皮を食べる場合があるから可食部に入れているという話もきいたことがある。
 今回、ゲストたちが、皮ごとおいしいと食べるのを見て、ああ、こんなバナナがあったとは! バナナの残留農薬が皮ごと設定されていてよかった!と思った。

 ただし、「もんげーバナナ」は、“無農薬”でつくっているそうだ。生産者側の説明では、国内(本州)ではバナナが生産されていないので、病害虫がいないから無農薬で作れる、ということらしい。

 現在市販されているバナナはほとんどがキャベンディッシュ種だが、岡山県産バナナはグロスミッチェル種だ。
 グロスミッチェル種は以前の主流品種だったが、パナマ病というバナナの病気にやられてしまい、現在はパナマ病に強いとされるキャベンディッシュにとって代わられている。
 ところが、近年、新パナマ病の襲来が話題となっており、キャベンディッシュも壊滅状態になってしまうのではないか、そうすると、もうバナナは非常に貴重な食品となり、今のように気軽には食べられなくなるのではないかといった説が流れている。

 パナマ病、新パナマ病とは、赤かびとして知られるフザリウム属が起こす病気である。
 フザリウム属は多種あるが、植物に害をなすほか、穀類で赤かび病などを起こし、食品を介して人の健康に害を与える要因ともなる。

 岡山県産バナナも、本格的に生産するのであれば、いつまでも「病害虫がいない」とは言っていられないのではないか。「無農薬だから安心」と、のんきに喜んでいる場合ではないはずだ。
 FAOでも、バナナのフザリウムによる害の急速な拡大を防ぐために世界的対応が必要だと呼びかけている。

 せっかくの国産バナナを大切に育てていくために、慎重な病害対策を願いたい。

<参考>
検体(厚生省告示370号(昭和34年12月28日)食品、添加物等の規格基準(抜粋 残留農薬等関係)(平成29年4月11日更新)より

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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