九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。
消費者庁の『新食品品表示法(仮称)に関する消費者団体とのワークショップ』が10月24日開催され、消費者庁阿南 久長官出席のもと、消費者団体15団体が参加して意見交換が行われました。また、意見交換に先立ち、消費者庁より新食品表示制度のポイント(イメージ)について説明が行われ、新法の枠組みが初めて明らかになりました。
当日の資料は同日、消費者庁ウェブサイトに公開されましたが、日程が急きょ決まり会場が狭いという理由で一般の傍聴は許されず、その内容は報道関係者のみに公開されました。
議事録は後日公開されますが、FOOCOMでは当日の概要について速報でお伝えすることにします。(文責・森田満樹)
[ 阿南 久長官ご挨拶]
一元化検討会については、多くの団体の皆様からご要望を頂いている。消費者庁が昨年から開催して8月9日に報告書をまとめたが、報告書ができてからそのまま、2カ月もたってしまった。現在は来年度の国会提出を目指して、報告書の内容を踏まえて「新食品表示法(仮称)立案の作業中である。本日は現時点における新食品表示法のイメージを消費者庁から説明させて頂くとともに、本日出席の消費者団体の皆様から一元化について、また立案にあたって意見交換をさせて頂く。消費者の方々の様々な意見をふまえて、より良い食品表示にしていきたい。
[ 事務局より説明]
谷口正範食品表示課課長補佐
本日の配布資料について、消費者庁事務局より説明させて頂く新食品表示法のイメージと、団体から出された意見について、本日、消費者庁ウェブサイトにも掲載させて頂いた。本日の進め方だが、事務局より配布資料について説明し、各団体の皆様4分以内とさせて頂く。その後、全員の意見交換を行う。まずは事務局より資料を説明する。
増田直弘食品表示課課長
本日配布した4枚の資料をもとに、今後の表示制度をどう考えているのか説明する。
一元化検討会では、今後はどういうものを表示していくことが適当かということを中心に、議論してもらった。この事がらは、法制度に落としたときに全て法律に書かれるわけではなくて、具体的には表示基準の中で書かれることがかなりの部分を占めている。その一部について法律に反映していくということで、報告書の内容がそのまま法律の中に全部書かれるわけではないことを前提に、お話を聞いて頂ければと思う。
(資料3pの説明)一元化後の法体系
まずは法律の形を最初に説明したいので3pを見てほしい。左側に現行の事項が並んでいるが、表示基準の制度は三つの法律があって、法律の中ではそれぞれの法目的に従った事項について表示の基準を作ることができる、としている。そして、事業者は基準を表示しなければならないという規定が書かれている。
今回の一元化の法律のイメージは、今3法にある表示の基準をまず作ることができるということ、そして、そこでは基準に関することについて、是正措置、調査権限といった表示基準に関係する部分を3法から元の法律から削除して抜き出して、新法へ持ってくる。新法では目的、定義に続いて、表示基準の策定手続き、違反があった場合の是正措置、違反を調べるための調査権限を規定していく。これが大枠の法律の構成となる。
(資料4pの説明)新食品表示法制定に伴う表示基準の移行について
次に4pに、それぞれの法律と、個々の下位法令(府令や告示)の表示基準が具体的に書いてある。法律でいうと、食品衛生法は「公衆衛生上の見地から必要な情報について基準を作る」と書いてあり、JAS法は「品質に関する表示を作ることができる」と書いてあり、健康増進法は「栄養表示に関する表示を定めることができる」と書いてあって、それぞれの下に、この基準が定められた時には基準に従わなくてはならないとなっている。ここまでが法律に書いてあることだ。
その下に、具体的な表示事項が、各法律の府令や告示に定められている。具体的な記載項目として、たとえば食品衛生法なら食品添加物、JAS法では原料原産地表示の対象品目22品目など、そういうことがこの中に書かれている。
新法においても同じで、表示項目を全て法律で書くのは困難であり、機動的な改正ということを考えると現行の枠組みに基本的に従う。すなわち、法律では、一定の事項について表示基準を定めることができるとして、具体的な表示事項(たとえばアレルギー表示の対象品目など)の部分については、府令や告示に書くことを想定している。
この結果、法律を作る段階で、下位法令が完全に定まっていなくても法案は作ることは可能であり、法律が定まった後でも状況によっては府令や告示を見直しができるようになる。いったん法律がつくられても表示事項が固定化されることは無いことを、理解していただきたい。
また、健康増進法については、現在、「栄養表示をしようとする者は…必要な表示をしなければならない」となっており、「しようとしていない者」には義務はない。したがって、全面的に栄養表示をするのであれば、その部分は「全ての事業者は表示に従わなければならない」と、書き換える必要がある。ここだけ書き方が違う。
(資料1pの説明)新食品表示制度のポイント
次に1Pに戻ると、上が法律レベル、下が表示基準レベルと分けられている。まず法律レベルの新制度のポイントの第一点目は、「消費者基本法の基本理念を踏まえて、表示義務付けの目的を統一・拡大」ということである。これは法律の目的であると同時に、表示基準として表示を義務付けられることの範囲を指すものになる。
現行からの改正点をいえば、現行JAS法にある「品質に関する適正な表示」について基準を設けることができるということだが、新制度では「消費者の適切な商品選択の機会の確保に資する表示に拡大する」となった。これは、報告書のことばでいえば、「消費者の商品選択上の判断に影響を及ぼすような情報」であれば基準の対象になる、ということであり、それを書きたいと思っている。
このように言葉だけを並べても、イメージがわかないと思うのだが、検討会でも、原料原産地表示の議論の時に「品質の差異」があるか無いかが論点になった。このように「品質の差異があるかどうか」という議論は、実は「現行のJAS法が品質に関する表示をさせるものであるから品質の差異が無いものに表示義務を負わせるのはJAS法の範囲を超えるのではないか」ということで、昔からその議論が続いていた。そういった意味で「品質に関する表示」ということが、表示できる事項の限界をつくっていたわけだ。そういったものについても「消費者の商品選択の機会」として表示基準を作ることができるとすれば、少なくとも制度的には、義務が課せられる範囲を広げていけるようにでき、そうしたらどうかということである。
念のために申し上げると、具体的な表示基準によって定められるので、法律の枠が拡がったことが直ちに、個々の表示が拡がるわけではないが、制度的な手当てということでこうやって広げたと考えている。
もう一点、若干蛇足だが、ここでは改正点で書いているが、報告書でもあるように食品安全確保の情報は引き続き、食品衛生法と重複する部分はあるが、その部分はあわせて表示を最初にしていくということを念のため、申し添えておく。
続いて1pの下半分の下位法令は、今ある複数の下位法令の複雑な規定を一本の表示基準にわかりやすくしていくこと、用語の統一を図っていくこととしている。
また1p右の栄養成分については義務化について、全ての事業者に拡げるということで一元化の法律で手当てしていきたい。念のため申し上げると、ただし栄養成分の義務化だけを法律に書くという意味ではなくて、栄養表示の義務化も含めて表示基準によって義務付けができるような枠組みを、今の食品衛生法やJAS法と同じ枠組みに栄養表示をしていくということである。
続いて1Pの表示基準の枠組みについて、一つ目は是正措置。是正措置は不適切な表示があった場合にどういう風に是正していくことかという行政措置だが、これについて、現行JAS法では、まず指示をして指示に従わない場合は命令を発するということになっている。健康増進法でも同様だが、一方で食品衛生法ではそういった一般の是正措置は少なくとも法律上ではなく、罰則で手当てするということになっている。しかし全てに罰則がかかるわけではなく、実際には事実上の行政指導として、保健所が「なおしてくださね」と言って是正がなされているということがある。ただ、なるべく行政措置を明確化するという観点、あるいは今のJAS法では指導したものは全て公表ということになっている、そういう点も含めて行政措置について食品衛生法も含めて拡充してはどうか。
2点目の調査権限について現行の三つの法律について違反が疑われる場合は、立入検査の後、食衛については収去という規定がある。他法令をみると書類の提出命令とか、調査権限として認められている。たとえば今、JAS法では任意で書類を出してもらう、任意で写真を撮らせてもらうということで、時として十分でない場合もあるので、こうした実態も踏まえて他法令も参考に、拡充できるものはしていきたい。
執行体制について消費者庁は人員が限られており、効率的な執行、今ある執行体制を念頭におきながら引き続き検討していく。
また申出制度について、現行、JAS法においては、表示が適正でないため消費者の利益が害されている場合は、適切な処理をとるべき申出を行うことができるというもので、内閣総理大臣は必要な調査等を行わなければならないという規定がある。これについて一元化にあたり、その範囲を表示全体に拡げていきたいと考えている。
主だった部分が、法律部分の今回の改正をしたいと思っている点である。なお、下の部分、表示基準レベルで対応すべき部分は、全てではないが主だったものを書いている。報告書ででてくる文字を大きくする、個々の表示項目について原料原産地の対象品目、遺伝子組換えの表示、添加物などどう書くかは、表示基準の中で改正を行っていうものである。逆に、これらは法律に規定されるというわけではない。
(資料2pの説明)スケジュール
当面のスケジュールを2pに示す。報告書が出た後、今後の検討課題となっていた原料原産地などを示しているが、まずは24年度中の法案提出を目指す。まずは期限に間に合うように準備するのが大事なことで、法案の審議を重点に置きながら、調査等を進めていきたい。
法案の審議等の目途が立ってから、個別項目について検討の場を進めていきたいが、なお新たな検討の場はJAS法や食品衛生法等の現行の表示基準を作るときには、消費者委員会の意見を聞くと法律で明記されている。新しい法律で、基準の策定手続きをどうするかは今後の検討課題ではあるが、同様に消費者委員会での議論を法律で定めることになれば、基本的には表示基準の話は、新たな検討の場ではそういった審議会になるのかと思っている。もちろん、表示基準に直接かかわる議論をするのか、もうちょっと手前、基準に至らないような議論をするかによって変わるが、基準の議論であれば消費者委員会の審議会が想定される。
一方、栄養表示の義務化に当たっての環境整備は必要であり、特に上限下限によらない計算値方式についての普及など、法案検討の合間を縫いながら、手を付けられるところから進めてゆきたいと思っている。
[各団体の意見発表]
●主婦連合会 事務局次長 河村真紀子(資料)
表示制度の目的には3点あると思っている。1)消費者の権利の確保について、消費者の安全を確保して消費者事故を防止して消費者が適正に食品を選択できるようにすること、2)業界に対する表示の健全について、一元化によって事業者にもわかりやすいルールが敷かれることで適正な表示を実現できる制度的基盤とすること、3)行政による一元的な管理・執行体制の強化について、新たな表示整備として整備すること、この3点である。
消費者の権利について詳しく述べたい。表示には「安全の権利」や「選択する権利」だけではなく、「知らされる権利」、さらには「消費者教育を受ける権利」などの側面もある。よく、消費者は表示を読んでいないではないかという意見や、アンケート調査結果が出るが、そもそも消費者教育を受ける権利が実現なされていない。だからこそ、消費者教育推進法が新たにできたわけで、表示の拡充とともに表示を読み取る教育をセットでなされるべきである。個別の表示項目を安全に絞るのではなくて、消費者の権利の確保の文言を明記されるべき。これらの権利が侵害されないように、一元化された執行体制によって監視し、誤りがあれば是正される仕組みが大事である。
時間が短いので加工食品の原料原産地表示に絞って述べたい。現状で2つの要件があるが、この要件は消費者の要求にそぐわない。例えば50%ルールの問題は、国産もち米粉7割、中国産もち米3割を混合して製造された餅は、「原材料名・もち米(国産)、もち米粉」と表示され、中国産は表示されないということが起こっている。また、缶詰、瓶詰め、調理冷凍食品などは生鮮食品に近くないとの理由で、最初から制度の対象外の食品があるが、この中で調理冷凍食品については、東京都が条例で義務化させており、矛盾が生じている。
このように現行の加工食品の原料原産地表示は大きな矛盾の中にあり、主婦連では、消費者委員会が昨年8月にまとめた「原料原産地表示拡大の進め方についての意見」を重視することを強く求める。この調査会には、現在の消費者庁阿南 久長官も委員として参加された事実を指摘したい。
●食のコミュニケーション円卓会議 代表 市川まりこ(資料)
阿南長官、消費者庁に対して、このような意見交換の場を設けて頂いたことに感謝申し上げる。検討会の委員として報告書のとりまとめに、関わってきた。報告書はさまざまな立場の方の意見が取り入れられた。大規模なアンケート調査も行われた。消費者の大多数が今の食品表示はわかりにくいということを受けて、優先順位の考え方も導入された。新法ではこの報告書の基本的な考え方に基づくものにしてほしい。
多様な消費者がいる中で、より多くの消費者、事業者にとってわかりやすいルールにして頂きたい。わかりやすさは、まず消費者が目で見てみやすい、理解しやすい、活用できるものになっていることが重要。
3点簡潔に述べる。1)食品表示ルールはシンプルに、2)義務表示は臆せず点検と検証をしてほしい。わかりやすいイコール単なる簡素化ではないし、事業者の意向重視でもない。いうまでもなく、食品表示はその食品を過不足なくわかるものではなくてはならない。今現在増え続けている表示事項の優先事項の検討は避けて通れない。長年の議論の積み重ねと消費者のためという要望に押されてできた義務表示だが、現代において合理性の欠くものはないか、臆せずに検討が必要だ。
3)加工食品の原料原産地表示について。アンケート調査結果から本来安全のための表示ではないのに、安全のためと間違った認識をされているなど、主旨が十分に浸透していないことは明らかである。どうしても知りたい情報で価値があるということであれば、お金を払うという選択肢があってもいい。消費者サイドの対応も可能である。原料原産地表示についてはリセットし、見直すべき。
最後に個別の表示項目は検討すべき事項は、新法ができたあとに全体を見据えたうえで検討してもらいたい。食品表示行政において、消費者にわかりやすい情報を公開してほしい。透明性、公開性はとても大事で、常に国民に開かれた消費者庁であってほしい。
3枚の資料をお出しした。私たちは意見書をお持ちして阿南長官にお会いしたいと面談を申し込んでいたが、日程調整の間に、担当者からこの意見交換会に変える、と言われた。これまで、意見書を持って消費者庁長官、担当の方との面談をしてきたので、その面談をすることがおかしいということにしないで頂きたい。どうして意見交換会に変えることになったのか、経緯について納得のいく説明を求めたい。
先ほど、公開でこのような意見交換会を設けてもらってありがたいという話だったが、一般の意見を言う人を公募するわけでもなく、随伴者は1名、一般に公開していない、消費者庁のホームページにも掲載されていない。この会は公開の会議ではないと考えているので、ぜひもう一度、こういった会議を幅広く公開してお持ちいただきたい。今回の新食品表示制度の説明は私たちだけで聞くべきものではなく、ぜひ多くの消費者に知らせて頂くべきことだ。
私たちはいろいろと注文を付けてきたが、申し出制度の拡大や、原料原産地表示の拡大についても、産地による品質の差が法律的に無くなるということは、私は一定の評価をしたいと思っている。
2枚目のペーパーには、消費者基本計画の内容や正田先生の講義の内容をひいたりしているが、商品やサービスについて正しい情報を知る権利があるということを法律の中に明記してほしいというのが、法案そのものに対する意見。
またスケジュールに「上記3法以外の表示関係法令整備の要否の検討」とある。3法だけ統一化するということだが、景表法の誤認を防ぐ表示について、景表法を持ってこなくてもそういう表示を禁止するという条文は可能である。これはコーデックスの包装食品の一般原則にも虚偽・誤認表示を禁止しているので、新法にもぜひ入れてもらいたい。
次に、府令改正の話だが、現在の府令で保健機能食品について紛らわしい表示を禁止するとあるが、紛らわしい広告を禁止するという条文はないので、府令の改正の段階で紛らわしい表示とともに広告も禁止して欲しい。さらにその下の通知の中で、添加物の簡略名を幅広く認めている。添加物表示の一括名表記と簡略名表記を是非改めて欲しい。そうでなければ、消費者は正しい情報を知ることができない。添加物の表示をさせること、こういう添加物が入っているということを皆知らずに買っているので、その点、是非府令と通知を検討してほしい。
●特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協会 理事長 関澤 純(資料)
このような場を設けていただいたことに感謝するが、全ての消費者団体や消費者に声をかけられたわけではなく、公開されているものではないことも事実である。このように重要な法令の制定に関しては、できるだけ多くの人の意見を聞いて、開かれた消費者庁として進めていただきたい。
提出した紙を主に述べる。1)は上記のとおり。
2)3法の表示部分のみを新法にすることが、本当に適切か。国民の食品に関わる情報提供手段は表示だけでなく、宣伝広告などもあり、これを考えると法律の一部を取り出して規定するのが適切なのか疑念を持っている。
3)衛生上の危害の発生の防止及び国民の健康の増進を図るため、業者間の基本情報の伝達を担保するうえで、必要な情報に限り簡潔かつ明確にするべき。食品表示には義務と任意があるが、その区別をはっきりさせる。国民の命を守るのはマストなので義務であり、選択のための表示はどちらかといえば任意。食品添加物を全部知りたいといった立場の人など、全ての人の要求を満たすのは無理。こういったことは任意にして、その場合はルールを定めて嘘の表示はさせない。一つの表示ですべてを満足させることは困難。
4)3法は目的が異なり、表示のみを一元化するのは元来無理がある。表示の一元化が誰にどの様なメリット、デメリットをもたらす可能性があるのかにつき、関係者の意見を聞き、できる限り明確にすること。一元化は言葉の定義、用語の統一で十分。
5)品質、産地などは、製造者にとっての差別化の項目であり、義務化にそぐわない。かえって偽装を招く。宣伝に関することについては欧米各国のように任意とすべきである。義務にすることで混乱し、回収、廃棄と言った問題にもなりかねない。
6)期限表示の適切な理解が無いなどによって弊害がでており、幅広い消費者教育が必要。
7)無添加で誤認を生じている。そのようなことがおきないことが重要
8)検討会でつめきれなかった課題はたくさんあるが今後しっかりつめる。リスクコミュニケーションは事業者、消費者がそれぞれ理解を深めていくことが基本である。そういった教育の充実をしてほしい。
ウォッチネットでは2か月前に書面を出しており、今回は用意していないが、3点申し上げる。1つは執行体制。消費者庁の現状を前提に考えるのではなく、体制強化も含めて検討を頂きたい。
2つめは原料原産地表示の拡大について、かなり争いがあるところだと思っている。制度を拡大することだが、審議会等に丸投げするのは避けるべきで、法律に考え方、方向性を示しておくべき。これまで品質に差が無いものについて義務を課さないというところから、新法は脱却したことは評価するべき。さらに今回の消費者教育推進法では社会的要因も含めて消費者市民を育てることがうたわれている。たとえば、原料原産地であればフードマイレージの問題とか、フェアトレードなども含めて考える消費者を育てようということになる。そことの整合性を踏まえたうえで原料原産地表示を考えるべき。
3つめ、今後の検討の場では、消費者の代表には消費者の権利を尊重する団体を少なくとも過半数はいれてほしい。消費者には様々な団体があるが、消費者の権利を尊重しようということは義務ではないが、そういう意見を消費者庁として大事にしてほしい。
私たちは連絡会であり、会員の合意がとれているわけではないが、消費者の立場として要望を申し上げたい。今回、消費者庁でまとまったのは、安全の確保と合理的な選択の確保ということだと思う。安全の確保という視点で考えると、消費期限、賞味期限、アレルギーなどが重要なファクターとなるが、しっかりと検討を重ねて記号や図式等の活用も考えてできるだけわかりやすい注意喚起になるようにして頂きたい。
合理的な選択の機会の確保については、食品の品質と中身が見合っているのか、表示でどう伝えるのか別途検討する課題だ。また水分について原材料名に表示することを考えてほしい。また、義務化される栄養成分表示については、平成23年8月に検討会で方向性がまとまっているので、それに沿って早急に準備を進めてもらいたい。
要望だが、新法を消費者に役立つものにするためには、一つは環境整備に力を注いでもらいたい。法律に規定されなくても、消費者からの要望が多い事項については、企業努力で何らかの情報提供がなされるべき。私の手元につい先般まとまった農水省の「平成23年度食品情報提供活動推進委託事業による商品情報の消費者の適切な情報に関わるガイドライン(案)」があるが、このように企業努力を重ねることで、最終的に消費者に選ばれる商品を提供するという土壌ができれば、そういう商品が世の中に広く出回ることで消費者も必要な情報が得られるようになると思う。
また消費期限や賞味期限に加えて、購入後や開封後の管理方法や、時間がたつと変化するものなどの情報、たとえばキムチやヨーグルトなどの発酵食品などや、ペットボトル飲料の色合いの変化など周辺情報の提供も大事。消費者が食品を扱ううえで安全性を担保する役立つ情報が提起されることで、今ある期限表示がより有効に活用されると思うし、食品ロスの削減にもつながる。
わかりやすい表示については、印刷のポイントを大きくしたり識字効果についても議論されていたが、限られたスペースを有効に活用するために、省略や優先順位を決めるよりも、情報を提供する側とわれわれ受け取る側双方のルールの共有化が必要。そのルールを読み取るために、私たちの理解も必要で、すぐ役に立つ表示ルールの周知のために事業者や行政の方と一緒に学習の場を設けることが大事だと思う。
栄養成分表示の義務化について、先日ニュースになったのが、イギリスの例だがGDAという1日に必要な栄養成分に加えて、一目見て栄養成分がわかるような信号機表示方式が流通最大大手のテスコで導入された。それに追随する流通事業者も現れている。環境整備をたくさんして頂いて、多忙な中で商品選択が簡単にできるように力を注いで頂きたい。
法律ができた後に、府令や告示が整備されると思うが、行政、事業者、消費者も含めて関係者が知恵をしぼって、わかりやすい日々の生活に役に立つ生きた表示になることを望んでいる。
●公益社団法人全国消費生活相談員協会 食の研究会代表 澤木佐重子
全国の消費生活相談員が消費者の生の声を受けており、具体的に表示のことを要望したい。消費者の情報を知る権利を踏まえて、消費者が目で見て、その内容を理解しやすく活用しやすいことが重要。
今回決まったのは栄養表示の義務化だが、消費者に本当に役に立つ表示になるためには、厚労省が定めた2010年の食事摂取基準の中で推奨量を示しているので、それに対する充足率を記載して頂ければとてもいいと思う。あとどのくらい食べればいいのか判断できる。
栄養成分表示の計算値導入について、栄養素も旬のものや外国産のものなどで変わってくるので考慮して、データベースを決めてほしい。今回、栄養強調表示には書かれていないが、消費者は数値でイメージが与えられるので、カロリーオフはゼロとイメージしてしまう。ゼロといっても4kcalを意味するとか、カロリーなど強調表示については誤解の無いようにしてほしい。
字を大きくするのはいいことだが、今まで書かれていた情報量は残してほしい。海外の表示をみると、小さい字でもたくさん書いてある。また商品のアピール文言のかわりに、原材料の割合表示があると、品質を選択する目安として消費者は選びやすくなる。
食品添加物の見直しはぜひお願いしたい。一括名だけでは何が使われているかわからないし、化学物質名だけではなく簡易名でよいとなっているが、それが数個の化学物質が使えるようになっているとどの物質をつかっているのかわかりにくい。用途と物質名はセットで表示してほしい。添加物名だけ表示されても何の用途で使われているかわからない。たとえば保存料ソルビン酸は使われなくなってきたが、グリシンが日持ち向上剤として使われているが、グリシンだけでは何のための目的かわからない。
遺伝子組換え表示についても改訂してほしい。EUの表示を参考にして、使われていても表示が免除されているということはなくしてほしい。製造段階でタンパク質が分解されてしまったり除去されてしまったりする醤油や油、コーンフレーク等や、上位3位以内に入らないので表示免除されている食品についても、消費者は使われていないと思うので、改善が必要。
アルコール飲料については、一見すると清涼飲料水と見分けがつかないようなものは食品として表示対象にしてほしい。
その他、常日頃、私たちは食品表示の啓発講座を行っているが、消費者がいかに表示の見方がわからないか、購入時にいかに見ていないかがわかる。表示の読み方を説明すると感心されるので消費者教育に力をいれてもらいたい。
●全国地域婦人団体連絡協議会 事務局長 長田三紀
表示の目的の中で「商品選択に影響を及ぼす重要な情報」というご紹介があったが、それであるならば、景表法の考え方、広告表示も含めて今回は考えるべきではなかったか。効能効果があるようなイメージを与えながら、個々の法律にははっきりと違反にならない広告表示が増えている。健康食品の体験談などは表示にかかわる部分であり、今回は検討から除外されているが、考え方として入れるべきだったのではないか。
●東京都地域消費者団体連絡会 中央委員 西澤澄江
消費者庁長官に10月1日に意見書を提出した。本日は意見書を添付していないが、その内容を申し上げると、消費者に対して、商品を購入するために安全安心なものを選択するために表示を見るよう啓発しているが、表示を見て購入するという教育ができていない。それを消費者教育の中に入れてほしい。
今回の法律には消費者の知る権利が抜けている。事業者には知らせなければならないと書いてあるが、これは事業者有利の改正ではないか。消費者が選ぶ権利を使おうとしても、事業者が提供してくれなければ、消費者は知る権利を使うことができない。水の表示も含めて原料の表示をしてほしい。私たちの勉強では、韓国の表示は水から何から、全部表示されている。私たちにとっては有利だが、製造者にとっては大変だと思う。そういうところまで、消費者としては、添加物はキャリーオーバーで抜かされていることがなく全部知りたい。
法政化されて3法は抜き出されて新法ができるということだが、法律ができればいいと言うものではない。他の法律もそうだが、まずは一旦できたあと、改悪されていくケースもある。新法をつくるときは慎重に消費者の意見も取り入れて決めて頂きたい。
袋の全体に、商品名と違うイメージが書かれているものが多い。商品名と一致していなくて、そういう広告を見て消費者は購入するので、そういうものも含めて一元化も含めて考えていただきたい。
一元化検討会の委員には消費者団体、純然たる消費する側の消費者団体の意見も十分にとりいれてほしい。年寄りの意見としてそれだけは申し上げたい。
●特定非営利活動法人東京都地域婦人団体連盟 飛田恵理子
今回の一元化検討会には基本的には賛成である。新法は、長年の運動を踏まえて、消費者基本法の理念に基づく方向性を取り入れたもので、国際的の評価にも耐え得るように、わが国の健康寿命や食品にかかわる未然防止の視点も入れ、誇大広告による消費者被害も起こっているのでそのような視点を入れたユニバーサルデザインに近い内容であってほしい。
私たちは昭和40年代より今日にいたるまで、多くのJAS規格や審議への参加、試買、分析などを行い、食品安全のための添加物規制の必要性など表示へのあり方の提言など主体的に参加し、活動してきた。テレホンサービスなどで、栄養関連情報を消費者に発信してきた活動の経緯がある。事業者がつくる多くの公正競争規約などにも積極的にかかわってきた。一元化検討会に先立つ栄養成分表示検討会にも加わった。
消費者に対する情報開示のための表示、バランスよく食べる健康栄養政策のための表示、具体的な目安などを追及するため、消費者運動の一環としてやってきた。用語が統一されていないこと、食品の成り立ち情報、アレルギー表示、栄養表示、遺伝子組換え食品表示が分かりにくいこと、加えて縦割りであったためか、法改正や被害救済などの置き去りなどの問題も散見された。
これから第一弾の食品表示の統一に加えて、検討が深められていくものと思うが、食品表示のありかたについてより深めて検討頂きたいことを申し上げる。
義務表示事項については、原材料の植物油・動物油脂といった大括りの表示は改めて、具体的に表示して頂きたい。
食品添加物は、原材料と区分して用途と個別名称を表示し、簡略名や別名はしないで頂きたい。キャリーオーバーや加工助剤はチェックされているかどうか心配しており、そこをチェックしてほしい。
アレルギー表示は責任回避のための表示ではなく、重症者の安全を優先して表示項目数ともに、表示面積を考慮して省略されるという規定を見直して頂きたい。遺伝子組み換え食品はEU方式にしてほしい。
栄養成分表示の追加は嬉しく思うが、メリハリのあるものにして頂きたい。賞味期限表示にプラスして、製造年月日表示は復活してもらいたい。
表示の範囲については、インターネット販売、カタログ販売、自動販売機なども適用範囲にしてもらいたい。
不使用といった強調表示や広告表示は義務表示にしてもらいたい。
原料原産地表示は見送られたが、身の回りの食のグローバル化は留まるところを知らず、消費者は輸出国側のいろいろな情報を知りたい。製品のフードマイレージを知る上でも重要な情報と考えている。また、カントリーリスクもある、慎重に検討して頂きたく、できればパーセント表示もして頂きたい。そうでなければ中間加工品の情報もわからない。産地偽装や事故原因の究明、事故品の回収を円滑に行うためにも原料原産地表示は有効となる。
任意表示については、栄養表示では食塩相当量を併記したり、一日の必要量など見える化をしてほしい。信号表示などわかりやすい表示にしてほしい。誤差については根拠のあるもので幅表示は仕方ないが、どういう根拠でその数値が表記されているのか、過剰摂取の懸念とか、欠乏とかを配慮してほしい。これからに期待したいことは、従来のものを並べればいい、いたずらに簡略化すればいいというものではない。長い長い消費者運動の歴史があるということを、若い方には十分認識してもらいたい。長い歴史や人々の努力に、静かに思いを果たす必要があると考えている。
●財団法人日本消費者協会 佐伯美智子(資料)
議事録と報告書を読んで、新法のイメージが湧いてこなかったので資料を提出したが、先ほどの説明でよくわかった。私たちは食品表示を学ぶ場を提供しているが、複雑な現行法では、個別の消費者の問い合せに応じることは難しい状況である。そたがって表示事項の一元化と分かりやすい表示方法について、新法のすみやかな立法を希望している。そのうえで問題点を3つあげる。
1)加工食品表示について、消費者にとって表示項目を重点するところは異なり、消費者のニーズはそれぞれに幅広く多様化している。特に高齢化社会や少人数家族が増えて食生活が変化しており、少量の調理済み食品が増えており、そこでの栄養成分表示等を優先してほしい。
2)表示の監視体制強化について 漬物やカット野菜など、加熱しないですぐに食すものを購入するが、消費者は製造工程がわからないので、調査権限を拡充して、監視体制の強化を法案に盛り込む。また、消費者のイメージに訴えるような強調表示もぜひ検討してもらいたい。
3)消費者啓発について、一般消費者の食品の表示知識は曖昧なままであることが現状である。法律をつくるだけでなく今後、消費者教育の一環として食生活に関する知識の普及啓発にも力を注いでもらいたい。
●特定非英梨活動法人日本消費者連盟 共同運営委員 天笠 啓祐(資料)
新法は消費者庁の真価が問われていると考えている。本当に消費者のためになるか、その場合、どのように消費者のためになるのか、消費者の知る権利が基本にならなければならない。消費者が食品表示を見て、わかるもの、選べるものにすることが重要である。
今日のご説明の中では、強化、拡大、充実ということばがたくさんでてきたが、それを現実のものにしてもらいたい。
そのためには、文章で言えばいつ、どこで、誰が、何を用いて、どのようにつくったかという基本的なことが書かれてなくてはいけない。ところが、今の状況ではわからない仕組みになっておらず、これを入れてほしい
例えば「いつ」については製造年月日表示が無くなってしまった。「誰が」は製造所固有記号となっているがほとんどが販売者と記号になっており、誰がつくったのかで全然わからない仕組み。製造所固有記号を無くしてメーカー名を書くべきだ。「何を用いて」は、食材は原料原産地表示が消えてしまって、どこでつくられたものかわからない。原料原産地表示が加工食品にもなければおかしい。
食品添加物についてもこれまで話が出てきたが、一括名表示、簡略名、キャリーオーバーなど、食品表示がほとんどされていない。消費者は、何がどういう食品なのかわからない仕組みになっている、これが今の食品表示だ。消費者の知る権利、選ぶ権利から考えると、この問題にぜひ取り組んでもらいたい。
それから、遺伝子組換え表示制度については、遺伝子組換え食品であることがわからない制度になっていることが問題である。EUは全食品表示になっており、アメリカのカルフォルニア州では遺伝子組換え食品法案が提出されていて、成立する可能性がきわめて高くなってきており、アメリカ全土で食品業界が遺伝子組換え食品の表示に向けて動き出してきている。州の法案も、原則として全食品表示である。これはあくまでも消費者の選ぶ権利に基づいてつくられる。カリフォルニア州で表示ができると、アメリカ全土で表示ができる可能性が高くなってくる。その時に日本の表示制度がいかに遅れたものになるのかがわかることになる。そういう意味でも、遺伝子組換え食品表示制度に取り組んでもらいたい。カリフォルニア州のような全食品表示制度に向けて取り組んでほしい。
●公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 食生活特別委員会委員長 戸部依子(資料)
食生活において、私たちが食品表示をどれだけ大事にしているかは今の皆さんのご意見の中でもわかるし、日々消費者の皆さんと接している中でも感じることである。その一方で、表示内容が複雑になってきてわかりにくい。
最近心配なのは、表示だけをみて判断してしまい、食品としてのおいしさ、良さを文字で判断する傾向が、極端な例ではあるがみられる。その中で表示の部分も重要なので考えたい。
資料にも出したが、五感を大事にする施策を考えて頂きたい。表示に頼りすぎることを考え直す必要がある。表示の検討の中で直接ではないが、重要だと思う。これを考える時に、原料産地表示では、今回の課長のご説明の中で、「品質の差異があるかどうかという視点から離れて、選択の際に重要であれば、表示の対象として拡げていきます」というご説明があったが、消費者の声として原料原産地表示が重要ということだが、そこの部分がなぜ知りたいのか、分析することが必要。
先ほどからのご意見を聞いていると、原料原産地が品質や安全をあらわしているのではないかという誤解や期待があるようだが、私は品質、安全は生産者の管理や技術で支えられているもので、それを原料原産地という文字で消費者が判断するのであればそれは間違っていることだし、間違っているのならきちんと情報提供をしていかねばならないと思う。
フェアトレードや産地育成という点では大切なので、その目的をきちんとして表示をしたほうがよい。ここはもう一度考えて頂きたい。
先ほどの説明でも、ルールや制度の見直しをどんどんするということだったが、商品もニーズも変わる中で見直しは重要だと思う。ただ、これまでもされてきたが、守られているかどうかの監視だけでなく、もし守られていない状況があったり、消費者がうまく使えていなかったり、普及していない場合はどうしてなのか、検証も必要である。
●日本生活協同組合連合会 執行委員・組織推進本部長 山内明子
3点申し上げたい。今回の新法について、もう一度国の果たす役割、事業者の果たす役割、消費者自身の努力について、考え直したほうがいい。本日のたくさんの意見の中からもわかるように、消費者の要望は広く多様である。
法律のように、違反した場合は罰則を含めて制定するものと、国が率先して事業者に対してガイドラインで示して守った方がいいという方向を示すものと、事業者が自主的に消費者の要望に応えて表示していくものと分けて考えた方がいい。そのうえでわからなければ、消費者自ら聞くという努力や学ぶことを大事にしながら考えた方がいい。
今回は報告書をつくられるうえでご苦労されたが、目的は「食品の安全性確保に係る情報が消費者に確実に提供されることを最優先とし、これと併せて、消費者の商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報が提供されることと位置づけることが適当と考えられる」と明確に示されている。これをもっと明確にして頂いて、法を作って頂いたらいいと思う。私も食品の安全に係る情報が大変重要だと思う。
限られた資源の中で国がやることが何か、国がこれまで決めてきた原料原産地表示の品目以上に拡大して、責務とすべきかは疑問である。消費者は知りたいが、事業者の自主的な情報提供に委ねてよい。
栄養成分表示が義務化されたが、これをどう読み解くかも重要。食育の活動が展開されているが、既にナトリウムを減らすことについてキャンペーンなども行われているが、こうした活動と一体になって1日のくらしの中でどう摂るのか、キャンペーンなどを展開して考えて頂きたい。大学や団体などでカードを作ったゲーム等もつくられているので、そうした協力も得ながら、環境づくりを進めて頂きたい。
●一般社団法人 FOOD COMMUNICATION COMPASS 森田満樹(資料)
このような意見交換会の場を設けて頂いたことを感謝している。意見を3点、資料にまとめている。
1)新法は消費者基本法の理念に基づき、報告書の内容にそったものにしてほしい。先ほどの事務局の説明の中で、新制度の目的は「消費者の適切な商品選択の機会の確保に資する表示に拡大」ということだった。法律だから報告書の内容を全て盛り込むことはできないことはわかるが、報告書の目的は、山内さんが読み上げられたように、安全性確保に係る情報が最優先となっている。併せて商品選択上の判断に影響を及ぼす重要な情報が提供されることとなっているが、ここの文面も変わってしまい、拡大ということばになっており、報告書の目的の内容がつまみ食いされているように思う。ご説明では安全確保は当然であり表示基準レベルでという話もあったが、二本柱とともに優先順位を付けたという基本理念を活かした新法を求めたい。
消費者の権利という話も出ていたが、消費者基本法の基本理念として第2条があるが、権利の尊重はもちろんだが消費者の自立の支援もあわせて、どちらか片方だけでは片手落ちである。そこを活かして新法に盛り込んで頂きたい。現在の表示の制度には肝心なことが伝わりにくく、消費者にとって使い勝手のよいものになっていない。新法では重要性の整序と見やすさが優先されることで、消費者・事業者双方にわかりやすくコミュニケーションができるものを求めたい。
2)新法成立を最優先に進め、個別の表示を後に検討するというスケジュールについて支持する。個別の項目については、今回の説明で青写真を掲げて頂いて初めて工程表がわかったわけだが、その検討を行う際に忘れてはならないのは、消費者は多様であり重要性は異なるということだ。拙速な導入は一部の消費者には重要でも、多くの消費者にとって不利益にもつながりかねない。そこでも報告書の考え方、メリットとデメリットをバランスさせて検討を行ってもらいたい。
3)これからの食品表示の全体像が見えるよう、情報公開を進めてほしい。今回のワークショップは日程と会場の都合で一部のみとお聞きしているが、今回のように新法のイメージがでてきたわけだから、これは個人や様々な団体に公平に機会が設けられて、その情報が公開されるべきである。
食品表示は消費者にとって関心の高い問題であることは言うまでもなく、その重要性は現代社会に変化に応じて重要性を増してきている。同時に表示事項の見直しは事業者にとっては相応の負担を伴い、準備期間の不足は様々な弊害を生み、それは結局、消費者の不利益につながりかねない。今後も引き続き、消費者、事業者に適切な情報公開を進めて頂きたい。
西澤 輸出用の表示と国内用の表示で、同じ品物なのに表示事項が異なる。輸出用では全部書いてある。しかし、国内用表示はキャリーオーバーを抜かしたり、添加物も香料で一括されていたり、それがとても不思議に私たちは思う。こうした表示義務の統一についてはどうなっているのか。
事務局 表示制度については各国がそれぞれルールを定める。我々が定めるのは国内流通のルールであり外国から輸入された食品も日本の規制が及ぶ。外国で売るものは当該国のルールに従うもので、国が違えばルールも異なるし、使用できる添加物の範囲も異なる。外国で売るためにはそのためのルールが必要だが、それを国内向けにも必要かというと、そういうルールは当然なっていない。ちなみにキャリーオーバーについては、コーデックスでも省略していいことになっているので、キャリーオーバーを書いている国は無いと思う。
西澤 ご説明はもっともで私たちもそこは理解している。しかし、外国の製品に付けられるだけの情報はあるのに、日本の国民には知らせられないという、そういう表示の差別を感じる。国内用にも同じように表示できるのではないか。添加物はEUでは頭文字で表示されているというが、日本もそうしてくれれば頭文字の少ない物を選ぶことができる。日本の表示と国外の表示を統一してほしいというのが消費者の要望だ。
事務局 おっしゃることは正直なところなのかと思うが、状況として国内の製品をそのまま海外に輸出している事例は少ないのではないか。パッケージが同じように見えても中身が異なることがあるかもしれない。仰る趣旨はわかるが、事業者に働きかけて情報提供をするということは重要だと思うが、輸出した人だけに国内へも義務をかけてやりなさいと言うことは難しいのではないか。
関澤 今の意見に関連して2点申し上げたい。このワークショップは表示であり表示に限って討論しているが、情報提供の手段は表示に限られない。もっと強力な広告宣伝や、間違った情報で人に誤解を与えるようなことが幅広く行われていて被害も出ている。そうなると情報提供のあり方はどうあるべきかの中から表示も位置づけることが必要。表示に全て期待することは無理で、全て書き込むことはあり得ない。
そのうえで消費者教育が大事とか、広告宣伝は適正に規制すべきという考えもある、その中で情報提供がどうあるべきか消費者庁として考えたうえで、表示をどう位置づけるかを考えるべき。
それから知る権利と選択する権利には同感するが、合理的に選択するということについて、考えてほしい。食品添加物がどんなものが入っているかを知るということが、安全性や判断のうえでの合理的な判断になり得るのかどうか、そこをきちんと抑えないといけない。何でも知りたいということは妨げるつもりはないが、たとえば先ほどの方は、添加物の数が知りたいということだが、数が少ないということが本当に合理的な判断につながるのか。添加物の数を10個より5個がいいというのは合理的な判断とは思えない。何が合理的な選択なのかを考えたうえで、それに資するような情報提供が求められる。
神山 消費者庁のHPに子どものお酒の誤飲事故への注意が掲載されているが、その文章の中に、缶にフルーツの絵が書いてあったりしてお酒と間違えて飲むというようなことがあるので注意とされている。食品衛生法の食品の定義は飲食物全部で、そこから除外されるのは医薬品と医薬部外品だけであり、酒類は除外すると書いていない。
表示基準の中で酒類は入っているわけだから、新しい制度をつくるのであれば、遠慮しないでお酒の表示もこちらに取り込んでほしい。アルコール100%というのは別にしても、缶にフルーツの絵を描いてはいけないとか、こういった誤飲を防ぐような表示や、○○オフ、○○ゼロといったものがいっぱいあるが、オフって書いてあるからアルコールが無いと思ったら、糖類がオフでお酒と書いてある、こういった紛らわしい表示を防ぐことについても新制度に盛り込んでほしい。
飛田 論点は異なるが、子どもには量的にはあまり食べさせないほうが良いものがある。例えばカフェインはよくないなど、青少年への配慮があまりされてなかった経緯がわが国にはある。現在、アメリカで議論になっているのは、カフェイン入り飲料を飲んで心臓発作を起こしたということがあるようだが、その他、カラメル色素に有害物質を含んだものがあるという議論が起こっている。消費者庁も海外で起こっていることをいち早くキャッチして、対応してほしい。食品添加物にも様々なタイプがある。合成のものがあぶないというわけではなく、天然物が必ずしも安全とも言えないように複雑な部分があり、素人でよくわからないが、果たしてこの添加物は今、世界で問題になっていないかという視点を忘れずに持って頂きたい。法改正にも関わってくる問題だと考えている。
天笠 わかりやすい表示について、簡略化して良い表示もあると思う。たとえばカロリーオフとノンカロリーを知っている人はほとんどいない。アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの違いを知っている人もほとんどいないと思う。豆乳と調整豆乳、豆乳飲料の違いなど、こういうものは簡略化するのは大変重要だと思う。ただ、わかりにくいものに対して、わかりやすくしてほしいが、そこで何が使われているかはわかるようにして頂きたい。これが私たちとして重要なことだと思う。
河村 感想めいたことだが、今日の消費者団体とのワークショップとなっているが、何人かの方から真の消費者代表にという声があったかと思うが、私は大変今日は不思議に思った。消費者団体は消費者の声を代弁するもので、消費者としてどう思うかということを言っているつもり。ところが、消費者はこうあるべきかという評論家のような人がいる。
なぜそういうことを言うかというと、何を優先順位をつけるかについて、多様な消費者がいることは十分に考えられるとは思うが、この表示は誤認するから表示しなくてもいいというようなことを消費者が言う、ということは考えられない。
この表示、要りませんという消費者がいるだろうか。それは、字が小さくなるけれどもいいですか、と言われればいやですけれども、わかりやすければ表示は欲しい。情報が欲しくないと言う消費者は考えられない。
何が申し上げたいかというと、消費者団体とのワークショップというからには、消費者の声として、私はこれが大事という方はいてもいいとは思う。しかし、少なくとも事業者としてこれは負担があるのではないかということや、消費者とはこうあるべきだということを研究者が仰るのは審議会や検討会の場ではあってしかるべきだが、消費者の声を聞きたいということであれば、それをいっしょくたにして、消費者の声もいろいろありますというのは、問題があると感じている。
いろいろな対立があるということはわかっているが、消費者の声を聴くからには、消費者として何を望むかということであり、消費者はこうあるべきだという評論家的な発想では無くて、消費者は色々なことを知りたい、それを誤解するなら教育も受けたい、分かり易く表示して誤認しないように受け取りたい、それが素直な消費者な気持ちであり、そのあたりをごちゃごちゃにすると、消費者も多様ですねという振り出しに戻ってしまうのではないか。
市川 今の意見に対して、私も消費者です。消費者団体の代表をしている。まさに消費者が多様化している、目線も主張も意見も多様化している、ということを河村さんも実感されたのではないか。こういう意見交換の場に、多様な意見が持ち込まれるということが、私は大事なことだと思う。それから一点、消費者庁にご質問したいが、ワークショップという名前をつけておられるが、そう仰るからには、今日の谷口さんがファシリテーターとしてしっかりと盛り上げて頂けるんであろうなとことを期待しており、終わりには振り返りという大切なこともあると思うが、いかがか。
谷口 過剰な期待ということで難しいのですが、せっかくのワークショップなので、消費者庁への意見だけではなく、せっかくお集まりどうしの意見ということもあるだろうと思うので、どうぞご自由に意見交換をしてください。
天笠 今日の意見の中で、ぜひ公開の席上で意見を聞く機会を設けてほしいという声が出た、ぜひ公開の席で、法案が固まる前に皆さんの意見を聞いて頂く場を設けてほしい。
神宮寺史彦審議官 今までご意見を頂いたが、本日のワークショップの一つの目的は、法律事項で考えているものは何か、法律より下の事項で考えていることは何か、ご説明させて頂くものだ。私どもが考えていることをご説明させて頂き、私たちの考えていることの認識と共有させて頂きたかったということがあった。
いろいろなご意見が出たが、下位法令についての事項があったが、法律事項に関することについては聞きっぱなしと言うわけでもないので、簡単にご説明させて頂く。
まず一つ、消費者の権利というものを法律に明記できるかということについて、検討会の報告書で消費者基本法の理念のもとに実現をはかるということがこの新食品表示法である、その位置づけを明確にして今後、その基本理念の実現を意識した作業を行っていく。
あとは法律の条文の中で、消費者の権利について明記するということについては、法律の内容は、事業者に対して義務を課すという形のもので、消費者に直接的に権利義務を生じるものではないので、その点では慎重な検討が必要だろうと思うが、そこはこれからまさに条文を作っていくことで、今のような要望があることも含めて検討していきたい。
次に景品表示法の話を先にさせて頂く。景表法が業種横断的な法律であるということは既にご意見のなかでもあったが、景表法が横断的な法律であるということの意味は、たとえば商品の内容だけでなく、取引条件に関する表示も規制の対象となっている。その場合に、景表法に定めなければならないルールの中には、食品とそれ以外の商品との間に、共通のルールを定めなければならないものがある。それはたとえば取引条件の中で、二重価格表示などに関するものが典型である。
そうすると、景品表示法の内容自身を全部、食品表示法に適用しないように新しい法律を定めてしまうと、新食品表示法の中で今度は取引条件に関する表示を無くすわけにはいかないので、全部それを定め直さなければならない。これは法体系として整合的なものではないと思う。
もともと、表示については現段階においては、景表法が一番一般的な法律の形になっているので、一番横断的な法律になる。その意味では、新しい食品表示法は今までの法律を統合して新しい法律として一貫したものにするが、それでも食品に関するルールであるという意味では、景品表示法との関係で言えば特別なルールというものになるので、特別法の内容が一般法の内容を排除しないような形で両方の関係を定めておかないと、ルールに空白ができてしまう。
そして食品に関して一本の法律があるとしても、それで全てその法律の中で、食品に関することを決めなくてはならないわけではないと思う。今現在、問題になっているのは、一つの同じ食品に対して、食品衛生法とJAS法で二重に規制がかかっているという点であり、新食品表示法ができたとしても、一部特殊な食品について特別なルールがあるということは十分にあり得ることだと思う
次にお酒の話もあったが、現在は酒税保全法で、徴税上必要な表示義務にあわせて品質表示等といった表示制度が両方設けられている。酒類も食品であるという意味においては、食品についての特別なルールが酒税保全法にあるということだが、それを消費者庁の食品表示法の中に移管することになると、地方機関を持っていない消費者庁に移管することになると、全国津々浦々の地方機関を持つ国税庁の執行よりも弱体化する恐れもかなりあり、そこを考えなくてはならない。また、酒類の問題について食品表示に関する法律と酒類に関する法律両方を別々に設けている国は、特に珍しくはないので、一部の食品だけを別法で規制することが特異というわけではない。
神山 制度的な説明はわかるが、酒類の別の法律があるといってもその法律が機能していないから、消費者庁が誤飲の防止をホームページに載せなくてはならないことになるわけで、消費者庁は司令塔な役割を持っているわけだから、他の法律に対して缶にフルーツの絵を描くというようなこと、小さい子供が誤飲するかもしれないようなことは辞めさせるようなルールを作れということは言っていかなくてはならない。それができないのであれば、この法律に取り込んだ方がいいというそういう主旨もある。
事務局 他の法律で規制されているような分野に関しても、消費者庁から言うべきことがあれば言っていかなくてはならないということは、ご指摘のとおりである。たまたまこういう問題ではなく、食品表示課ではなく表示対策課で対応しているが、現段階において所管省庁における対応、それを受けた事業者側での対応については、概ねというところだが、消費者団体側の問題意識にお応えする形で事業者が対応を図っているという認識だ。
消費安全課で出している注意喚起については、それを出したからといって、今の事業者側の表示にについて十分であるという評価をしているわけではない。それでも注意喚起を出しているということだ。
阿南長官 今日は熱心なご議論をありがとうございました。これから考えていくべきことが明確になったと思っている。法案をつくる作業の中で、意見を反映できるような形で進めていきたい。それから最初に面談できなかった件について、実は最初に主婦連合会の役員さんたちに来て頂いてお話をうかがった。
他の団体のお話も聞いているうちに、どんどんと他の団体からも要望が出て、意見書も出されており、その段階でちゃんと明快に消費者庁が何をやろうとしているのかを示す必要がある、答える必要があると考えた。内部で検討してきて、未定稿になっているが、やっとイメージができた。先ほどの意見にもあったように、景品表示法をどのように考え方に活かしてゆくのかという議論も続けている。まだこれからも続けなくてはいけない。
イメージがやっとできて、お申込み頂いて面談ができなかった団体には大変申し訳ないが、このような場をいったんもちましょうということで設定させて頂いた。今日、初めてこれが説明されたということだ。
今後はご要望があったように、公開の場でディスカッションの場を持ち、また各地の地方でもこうした場を持ちたいと考えている。それぞれの団体で説明せよと言って頂ければ、担当が行って説明をさせて頂きたいと考えていて、ぜひ呼んで頂いて活発なご議論をして頂ければと思う。どうぞよろしくお願いします。本日はたくさんの意見を頂いて、大変ありがたかった。
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。