今月の質問箱
いろいろな場面で食品安全や食品表示の質問、疑問に遭遇します。自分なりに、気になる質問のコタエを探したい
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消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。
米国CDC(疾病予防管理センター)のアラートで、病原大腸菌O26感染に関連した小麦粉の回収事例が出ていました。
5月24日の情報によると、米国で、ALDI(食料品を扱うチェーン店)が販売した小麦粉が原因と考えられる病原大腸菌 O26の感染が、ニューヨーク州、オハイオ州など複数州で起こり、CDC、FDA(食品医薬品局)が地方衛生部局とともに調査しているということです。
<経緯>
5月22日、この小麦粉の未開封サンプルが分析され、O26 が含まれていることを確認。消費者に、食べないよう警告が出されました。
ALDIと製粉会社ADM millingは、ニューヨーク州バッファローのADMの生産施設から供給された小麦粉の回収を発表。
5月24日、全ゲノムシークエンス解析により、未開封サンプルに含まれていた大腸菌と、8州で17人に感染を引き起こしたO26株に、高度な関連が認められました。
CDCは消費者に
・ ALDIから購入した小麦粉を、包装とは別の容器に保管していてブランドや期限がわからない場合は、捨てる
・ 容器を再使用する前に徹底的に洗う
・ 生の生地を食べない
などの呼びかけを行っています。
●以前もあった小麦粉の食中毒
「小麦粉で食中毒なんて」と不思議に思うわけですが、過去にも同様の事例がありました。
2015 年 12 月から2016 年9 月にかけて、米国の24州で、63人のO121、O26の感染が報告された事例です。原因は、General Mills 社のミズーリ州 Kansas City の施設で製造された小麦粉とされました。63人中17人が入院、一人は溶血性尿毒症症候群を発症。死者はありませんでした。
このときは、聞き取り調査を行った38人中19人(50%)が、生の自家製生地を味見した、また、小児患者3人はレストランで生の生地を食べたり、それで遊んだりしたとの報告がありました。
一方、今回のALDIの小麦粉の事例では、2018年12月から2019年4月で、8州で17人に感染が報告され、3人が入院。死亡は報告されていません。
聞き取り調査を行った7人中4人は、生の生地またはバッター液を食べたりなめたりした、より詳細な情報のある2人については、ALDIからの小麦粉またはベーキングミックスの生の生地またはバッター液を食べた、などが報告されています。
小麦粉を生で食べるということは信じがたいのですが、米国では、「クッキー生地を生で食べたい」と思う人たちが、たしかにいるようです。
FDAは生の生地の取り扱いに関する注意喚起を出していて、これを読むと、クッキー生地を生でつまみ食いしたいという願望が、アメリカ人には本当にあるのだなとわかります。
なお、ここでは、小麦粉には殺菌工程がないこと、小麦畑が動物により汚染される可能性もあることなども説明されています。
実際、「生で食べられる安心なクッキー生地」といった海外のレシピも、ネットにあがっています。こうしたレシピでは、小麦粉を加熱してから使う、卵は使わないといった特徴があるようです。商品販売サイトもあり、「保存料は使っていません」などと書いてあると、どういう意味か、考えてしまいます。
●日本ではどうなの?
実は、日本にも「ノー・ベイク・クッキードウ」、つまり焼かないクッキー生地をアイスのような形態(コーンにのせて)で出す店が登場しています。そうした店では、やはり「卵不使用、小麦粉は加熱処理済」だから食べられる、としています。
日本人はいくら“生食好き”といっても、クッキー生地の生食が新たなグルメブームになるとは、とても思えませんが…。
けれど、たしかに小麦粉は、いちど購入すると長く保管しますし、米国の事例のように、何か問題が生じると、長く被害が発生するおそれがあります。
日本の小麦粉製品の中には、「小麦粉の使用にあたっては、必ず加熱調理してお召し上がりください。」と注意喚起表示をしているものもあります。小麦粉の製造・流通段階できちんとした衛生管理、品質管理が行われることはもちろんですが、消費段階でも、加熱すべきものはきちんと加熱するという、当たり前のことを守ることが基本だろうと思います。
(FOOCOMメールマガジンより加筆。)
消費生活アドバイザー。フーコム・アドバイザリーボードの一員。
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