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突出するEU議会環境委員会の議決

宗谷 敏

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EU議会(立法府)は、より厳しいGM食品の表示規則案を検討中である。これには今やトレンディなトレーサビリティも含まれる。フランス、イタリアなどGMモラトリアム推進派7カ国は、GMとNon?GMの食品を消費者が選択可能なようにと、この表示規制強化などを強く求めている。

従来は表示対象外だった植物油や動物飼料にまで表示させる徹底ぶりだが、このニュースで話題になっているのは閾値に関してである。議会の環境委員会は、参加各国が合意していた0.9%を0.5%に引き下げることを議決したという。もし成立すれば、0.5%以上のGMOを含むすべての食品と飼料にGM表示が義務化される。
0.5%という閾値は、実は未承認GMOのいわゆる意図せざる混入に対する上限値として当初考えられていたものである。記事にはないが、これに対しても環境委員会は、実行可能性を一切無視してGM混入率ゼロを議決した模様。
環境委員会は、併せてGM農作物を播種する場合の厳格な規則も議決したと伝えられる。おそらくこれは、EU委員会(行政府)がガイドラインとして提言しているGM作物と在来及び有機作物の共存政策の立法化を指すものと推測される。
議会の中の一委員会による議決とはいえ、時流に乗る環境委員会の力は強い。GM推進派からの実質的なモラトリアム解除は遅延するかもしれないという悲観的観測や、EU委員会のWTO訴訟に踏み切った米国の感情を逆撫でにしかねないという憂慮はもっともなことである。(宗谷 敏=GMOウォッチャー)