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GMOワールド

コーンゲート事件再燃@ニュージーランド

宗谷 敏

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ニュージーランドでは、01年10月に決定された3年間時限のGM作物商業栽培モラトリアム(禁止措置)が今年10月29日で終了する。隣国オーストラリアは、既にGMワタと観賞用生花を商業栽培しており、今年の7月には食用植物としては初のGMナタネ商業栽培に対する安全性認可を与えている。

しかし、両国とも農業国として政策的にGM作物を推進したい中央政府と、消費者の安全性への不安や貿易上の不利益を懸念する地方州政府との軋轢をはじめ、各層各界でGM作物導入に対する賛否が割れて、熱い論争が展開されている。
そのような背景の下、ニュージーランドのヘレン・クラーク首相が、コーンゲート事件と呼ばれるGMトウモロコシの混入に関連したスキャンダル再燃のために危機に立たされている。
参照記事
TITLE: Suppressed memo laid at PM’s door
SOURCE: The New Zealand Herald, by Kevin Taylor and John Armstrong
DATE: August 28, 2003

コーンゲート事件とは、02年7月10日「不信の種」(’’Seeds of Distrust’’)という1冊の本が出版されたのが発端である。
その概要は、「00年11月、米国のノバルティス社から輸入されたGMフリーのトウモロコシ種子約6トンに実はGMトウモロコシが混入しており、その半量が178ヘクタールに作付けされていたのが政府により発見された。しかし、事態のもみ消しを計った政府は同年12月に急遽GM種子の混入に0.5%の閾値を定め、ノバルティス関連現地法人のロビー活動により本来破棄されるべき収穫されたトウモロコシが、残り半分の播種用種子と併せてフードチェーンに流された」というもの。
目前の7月27日に総選挙を控えていたためメディアは沸騰、クラーク政権にとっては衝撃的な出来事となった(02.7.24 Guardian)。
緑の党をはじめ野党からの集中砲火を浴びたクラーク首相は、この一件には関知していなかったとし、事件に関連する政府内部資料を全面公開することに踏み切って、この難局を何とか乗り切り選挙には辛勝した。
ところが、今年の8月になり当時全面公開されたはずの内部資料から、実は1枚のメモが当局によって外されていたという事実が発覚した。関係者の証言内容は現在のところ藪の中ではあるが、それは00年の年末にクラーク首相が、この事件について既に知っていたことを立証するものだという。
72年、米国で民主党本部に盗聴器を仕掛けようとした侵入者が逮捕されたウオーターゲート事件では、関与を問題にされて故ニクソン大統領が辞任に追い込まれた。他党との連立及び閣外協力でやっと政権を維持している労働党クラーク首相の運命は、いったいどうなるのだろう?