九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。
日本の食品表示の法律はわかりにくい。食品衛生法、JAS法、健康増進法など様々な法律が入り組んでおり、消費者・事業者の双方にとって食品表示は使いづらいものとなっている。これらの法律を一元化することは、2009年に消費者庁・消費者委員会ができたときからの課題である。2010年3月の消費者基本計画の中でも2012年度中の法案提出を目指すことが決まっており、2013年度には完全施行となる。残された時間はあまりない。
これを受けて消費者庁は2011年9月より「食品表示一元化検討会」をスタートさせている。検討会は毎月1回、食品表示新法という最終ゴールを目指して来年6月まで続く。一方、消費者委員会においても新法のあり方について議論が行われており、今後の新法のあり方に影響を与えることになりそうだ。また、時を同じくしてEUでは欧州議会が11月、新しい食品表示規則を定めた。一元化検討会では国際的な整合性についても話し合われることになっており、EUの新法も注目されている。
新しい食品表示はどこに向かうのか。現況を整理してみよう。
1)消費者庁・食品表示一元化検討会
検討会はほとんど報道されることはないが、FOOCOM編集部では食品表示・考という新しいコーナーを設けて、食品表示の専門家にその概要を伝えてもらっている。11月28日に開催された第3回検討会では、消費生活アナリストの板倉ゆか子さん、食品コンサルタントの小比良和威さんが異なる角度から感想を寄せてもらったのでお読み頂きたい。なお、検討会では来年の早い時期に中間報告をいったんまとめ、国民の意見を聞く予定となっている。
今後の審議、難航は必至(第1回食品表示一元化検討会報告)~板倉ゆか子さん
食品表示の目的から議論がスタート(第2回食品表示一元化検討会報告)~小比良 和威さん
あいかわらず、迷走、紛糾が続く(第3回食品表示一元化検討会報告)~板倉ゆか子さん
消費者庁の考えが見え隠れ、原料原産地表示拡大と製造所固有記号廃止(第3回食品表示一元化検討会報告)~小比良 和威さん
2)消費者委員会・食品表示部会
11月29日に開催された消費者委員会の第14回食品表示部会おいても、消費者庁で行われている食品表示一元化検討会の検討状況について、多くの時間を割いて話し合われた。
この中で「検討会で示された表示案をみると、アレルギー物質表示を原材料と分けてまとめて表示する案があるが、患者にとっては情報が減り判断できなくなる。われわれが作りあげてきた努力が無駄になる」「原料原産地の表示の資料は、これまで消費者委員会で議論した内容が全く反映されていない」「個別表示の各論を議論せずに、総論の議論はあり得ない」といった厳しい意見が相次いだ。また、委員から「消費者庁の一元化検討会とこの部会の関係性がわからない。中間とりまとめが出た時点などで、この部会がどう関わるのか」という質問が出たが、消費者委員会事務局は「現段階では部会で一元化をどのように扱うのか決まっていない、今後の関わり方については消費者庁と相談する」と答えるに留まった。
また12月5日に開催された第76回消費者委員会でも、食品表示一元化について専門家によるヒアリングが行われ、それを受けて議論が行われた。ここでも「原料原産地表示は任意で、義務にする必要はないのではないか」「消費者に提供する表示は多ければよいのか」「景品表示法、不正競争防止法も含めて一元化しなければならないものか」といった質問や意見が出た。同日の会議の模様は動画で配信されている。
3)EU欧州議会・新しい食品表示規則を発表
欧州議会は11月22日、新しい食品表示規則(No 1169/2011)を定めた。これまでの目的である消費者の誤認防止から、消費者選択の情報提供へ向けて、4年がかりで決まった新しい食品表示ルールについて食品表示・考で紹介する。
(森田満樹)
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。