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写真企画〜食べもの万華鏡

野菜で妄想〜かわいいトマト、がんばるホウレンソウ…

森田 満樹

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アメーラルビンズ

アメーラルビンズ

寒締めホウレンソウ

寒締めホウレンソウ

こうのとりのお米

こうのとりのお米

すぐきと

すぐきと

ちりめんじゃこの佃煮と

ちりめんじゃこの佃煮と

 近年はトマトブームで大きさも色も作り方も様々なものが並んでいる。この「アメーラルビンズ」。なんてかわいらしいんだろう。ぎゅっと味が濃い。それもそのはず、カリウム、ビタミンA、C、β-カロテン、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸が高い濃度で含有されていて、普通のミニトマトは糖度6度前後だそうだが、このアメーラは10度が出荷基準だそう。14粒で398円なんてお値段も立派で、かわいくて実力派の子役の女の子みたい。生産者は、「静岡農林水産物認証」の第1号やJGAP認証を取得している。

 今が真っ盛りで甘くて美味しい「寒締めホウレンソウ」(ちぢみホウレンソウ)は、室内練習場なんか無くったってがんばって甲子園出場を決めた野球部みたい。「寒締めホウレンソウ」は冬場のハウスでも保温効果を高め、ホウレンソウなど葉菜類の生長を促進する技術の研究中に、「育った後で寒さに当てれば甘くなるのではないか」と試しに1棟のハウスの窓を開けてみたのが誕生のきっかけだったそうだ。

 ホウレンソウに限らず、寒さに耐える植物は、体内の糖濃度を高めて凍ってしまうのを防ぐ働きを持っている。だが寒さに弱い植物・野菜はこの働きが弱く、凍って細胞が壊れ、枯れてしまう。ホウレンソウの場合は、糖度が上がるだけでなく、ビタミン類の含有量も高くなるので濃厚な味になる。この技術は2006年の10大農林水産研究成果の一つだ。ところが、寒さにさらさなくても葉が縮む品種があるので、消費者は要注意だそう。“寒締め”の場合、葉よりむしろ茎にシワがよるので、茎で見分けるといいらしい。

 地域をあげての環境保全の取り組みによって作られた美味しい「こうのとりのお米」は東京の一流大学の成績優秀で真面目な大学生。地元の期待を一心に背負って官僚になるのかな? この地域では環境創造型農業と銘打って、冬でも田んぼに水をはる冬期灌水や田植えの1ヶ月前から水をはる早期灌水でえさを育て、雑草をおさえるため田んぼに深めに水を入れ農薬を減らし、コウノトリが住みやすい環境を保っている。子どもたちには体験学習など通して環境教育を行っている。
 消費する側としては環境に配慮した手間賃を余計にお支払いして農産物を食べる気持ちで行きたいのだが、「安全をお金で買う」イメージで売られているのはちょっと悲しい。

 人にも色々な生き方があるが、用途から値段から栽培方法まで今や農産物もびっくりするほど多様化している。スーパーや小売店の店先から目がはなせない。(菅いづみ)

<参考>2006年10大農林水産研究成果  

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

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