九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。
消費者庁は2012年11月22日、「新食品表示制度についての意見交換会」を開催しました。(消費者庁食品表示一元化情報)。
今回行われた意見交換会は25団体が参加し、午前・午後に分かれて意見発表とその後の意見交換が行われました。新制度に対する意見だけでなく、現行制度の問題点や消費者団体としての在り方など幅広く議論されました。
FOOCOMでは他の消費者団体とともに公開意見交換会を求め、参加してきました。こうした会を通して、新制度の道すじが少しずつ、明らかになってきました。まず新食品表示法(仮称)ですが、来年3月中旬までに法案提出が行われ、その後審議を経て6月~8月には公布される予定です。それから施行まではおおよそ1年半くらいですから、新法が施行されるのは2014年末から2015年前半にかけてと思われます。
あわせて、表示基準が60本ちかくつくられることになりますが、従来のものがそのまま引き継がれる基準もたくさんあり、加工食品の原料原産地表示や遺伝子組換え食品の表示基準など、新たに検討される基準もあります。こうした検討が一段落ついたところで、栄養表示基準(施行後概ね5年以内)の義務化が待ち構えています。
このように、今後5年間くらいは消費者庁のもとで、食品表示制度がダイナミックに変わることになります。
消費者庁の議事録公開に先んじて、意見交換の内容についてまとめましので、ご覧ください。かなり長いのですが、それぞれの主張は明確で、読み応えはあると思います。
ポイントについては、小比良和威さんが「食品表示・考(12月1日)」でまとめてくださっていますので、こちらもお読みください。
Ⅰ 午前の部
●阿南 久・消費者庁長官挨拶
お忙しい中、早朝から集まって頂き有難うございます。消費者庁におきましては、昨年9月から食品表示一元化検討会を開催いたしまして、より多くの消費者が実際に商品を選ぶ際に選びやすく、分かりやすい食品表示の実現を目指して、議論を行ってまいりまして、去る8月9日には報告書を公表しました。現在は来年の通常国会への法案の提出を目指して、報告書の内容を踏まえ、新食品表示法の立案作業を進めているところでございます。本日の意見交換会は、食品表示一元化に関する幅広いご意見を公開の場でお聞きするために開催させて頂きました。皆さまには忌憚のないご意見を頂きます。
ここで私からお願いを申しあげたい。新しいこの法律は、消費者庁が所管する法律です。つまり、消費者庁が所管するといいますのは、ベースとなる考え方が肝心でして、消費者基本法に基づく法律にしなければならない。消費者基本法の中には、消費者の権利と事業者の責務、消費者の役割、消費者団体の役割などが縷々述べられている。特に事業者の責務のところには、消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること、そしてまた、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること、そして消費者に対して、消費者の知識、経験、財産の状況等に配慮すること、 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するための必要な体制の整備等に努めることなどが決められています。
今日の意見交換会では、皆様方からその視点に立って上での積極的な、積極的な前向きな提案を頂きたいと考えている。そんなことはできるはずがないとかそういうことではなく、こうしたらできるのではないかと、やりたいのにはどこまでできるのか、問題なるのであればこうしたら解決できるのではないか、という角度でぜひご意見を頂きたいと思いますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
●消費者庁による新食品表示制度のポイント(イメージ)(案)の説明(省略)
概要はこちら
●発言者の意見発表
13団体が意見発表(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、上野製薬株式会社、主婦連合会、食のコミュニケーション円卓会議、特定非営利活動法人食品安全グローバルネットワーク、財団法人食品産業センター、特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協議会、一般社団法人全国清涼飲料工業会、全国農業協同組合中央会、全国和菓子協会、特定非営利活動法人日本消費者連盟、日本生活協同組合連合会、社団法人日本惣菜協会)
概要はこちら
●意見交換会の概要
(特定非営利活動法人日本消費者連盟 山浦康明さん)
内閣府令や告示があり、検討がこれから始まろうとしているが、私達は、新法の要綱案、あるいは法律そのもののも気になるところだが、それと同時に内閣府令、告示で具体的にどういうルールになるのかということに非常に関心を持っている。これまでの法律、あるいは省令などの情報提供の仕方は、非常に良く伝わらなかったと思う。今回は消費者のための新法であることを踏まえて、ぜひどういう具体的なルールになるのか情報をあらかじめ出して頂き、それについても意見交換をするような機会を持って頂きたいと思う。
(特定非営利活動法人食品安全グローバルネットワーク 中村幹雄さん)
一つお願いだが、新法ができた時に、食品表示基準があるわけで、名称とか、原産地とか、原材料名とか、可能なものは、上の法律のレベルに持って行ってもらえないかということ。もう一つは、山浦さんが言ったことだが、これからどんなスケジュールで、多分、今は12月になれば各省庁との協議がなされて、法律の条文作成は年明けぐらいになってくると思う。もう少し丁寧に、来年の国会に上がるまでの間に早めに消費者に対しても条文等になる概要等を知らせて頂きたい。その際、可能であれば府令とか告示に至るまで、こんなものになるだろうと示して頂ければ分かりやすくなる。これはお願いである。
(特定非営利活動法人食品保健科学情報交流協議会 関澤 純さん)
表示にだけに限らないことであるが、消費者教育とか、広告、宣伝について触れさせてもらったが、全体的に消費者への情報提供手段がどうなって、どういうことが実際行われているのかをきちんと押さえていく必要がある。
皆さん、消費者が買い物される時に表示だけを見ているのではなく、毎日入ってくるスーパーのチラシとか、そういうものでこれが安いとか、今これが美味しいそうだとか、そういうことが判断材料に使われている。そういったものがもし虚偽や誇大であれば誤認させる。そういったことを押さえていく必要がある。
例えば、食品添加物は少ない方が良いということを前回のワークショップで言う方が見受けられたが、無添加と言うことを誇大に広告している場合も見られる。そういった場合に食品添加物は無い方が良いということを誤認して、本当に保存料を使っていないとか、それが安全だと思ってしまう消費者がいる時に、適切な選択を指示していないことになる。消費者団体が特定の無添加を標ぼうする業者の支援するのはもってのほかである。むしろ消費者庁としては、消費者がどういう風な知識を持って、何を選んでいくかということについて適切な教育の機会、教育の場を拡大していくことも大事なことと思われる。
(全国和菓子協会 藪 光生さん)
抽象的な発言になって恐縮であるが、食品の表示とか、そのことについては難しいことをはらんでいることは皆さんよくご存じのことだと思う。多岐に渡るわけだし、いろんな考えの方がいる。今、いろいろ検討されている。例えば、栄養成分表示にしても、あるいは、原料原産地は検討の場に乗っているところであるが、そういうものをきちっとやって行こうとすると、比較的大企業というのはそれに対応することはしやすい。それに対応する仕組みを持っている、というのは人員的こともあり、予算的な処置も取れ、あるいは、そういうデータの蓄積も十分ある。日本の食生活を支えている市場は、案外、中小零細企業がもの凄く多い。
中小零細企業は、実は、今、栄養成分表示について必要ないと述べたが、実際そのことをきちんと検証して、表示を正しくしていこうとすることが現実的に難しいこともたくさんある。そういうことを抜きに何でもかんでもやって行きましょうという形になっていくと、今に日本の食産業というのは大企業だけになって、あとは中小零細の加工食品の世界はどんどん消えて行ってしまう方向に行かざるを得ない状況に陥ってしまう。それは、国民生活にとっても、経済社会にとっても決してプラスではない。もちろん、いろんな表示とか、いろんな要望があって、たくさんのことを表示することが一番いい。
私が消費者の立場として考えても表示があった方が良い場合もあるし、逆に多くを求めてないものもある。さまざまである。必要最小限のものに留めて、後は任意でその表示をする。任意で表示させる時については、任意にするにあたってのルールをきちっと取るという形が一番正しい方向ではないか。今の日本の中小企業の市場においてという前提付きではあるが、そのことをもう一度申し上げたい。
(山浦さん)
今の藪さんの意見に反論したいが、大企業は非常に財力もあるし、いろんな対応でき、それに比べ、中小零細は難しいという話で、業界の方も良くされる。規模が大きい場合は、世界からいろいろ原材料を仕入れて、同じ品質のものにしていくという工程が考えられる。小さい規模のものであれば、素性の分かった材料を使って、かなり地域限定で製造されている方とか、あるいは、差別化を図ってより良いものを作ろうと努力される方とか、いろんな場合が有りうると思う。
それを、単に大きい企業がこういった新しい制度に対応できるかもしれない、小さいところは難しいという論理だけではなくて、実際のところはどうなのかということで、事業者の声をはっきり聞いてもらって、本当にできないのか、どうすればできるようになるか、こういったきめ細かい対応すれば、クリアできるのではないかと常々考えているので、そういった要素も今後検討して頂きたい。
(藪さん)
その意見について反対、その意見について反対と言っているときりがないが、本当はこういうことを言うべきではないが、誤解を招くので言う。小さい企業はまとめて物を買うことは基本的にはできない。だから、これこれのものをこういう風に納めなさいということを指定して業者から買い取ることはなかなか難しい。あるいは、お米買いたい、お米仕入れたいとしても、何々県、どこどこで取れたどういう米を仕入れたいということを言うには、優越的な地位の関係があって、いつもの通常の取引で、大きな取引をしていればこそ仕入れ先も言うことをきくが、実態として小さい規模でやっているところは聞いてくれない。そうすると、あるものを使ってということにどうしてもなってくる。それは山浦さん、小さいところはそれでやっているからいいだろうというのは実に乱暴な理屈である。実態を知らな過ぎる。ただ、反対だ、反対だと言っても終わってしまいこの場は終わってしまうので、一言誤解があったので述べた。
(一般社団法人全国清涼飲料工業会 渡辺健介さん)
今の意見と似ているが、表示を検討する時に、実態を良くしっかり見て欲しい。今の中小の話も、山浦さんが言われている一部の特別な商品を作る場合もあるが、自分が選ぶことができないで、世の中にある原料しか使えない場合もある。世の中の原料がどんな形で出回っているのかを良く知らないで、変なルールを作ると、結局、物が作れなくなるということになる。実際の、例えば、中小、あるいは大企業、世界の原料とか、日本国内の農産物がどんな形で出回っているかとか、そういうことを良く把握して貰った上で検討しないと、今回、一年にわたった検討会の中でも、あまり実態を踏まえないで議論された部分も結構あるので、実態がどうなっているのか踏まえて上で議論を進めて頂きたいと思う。
(食のコミュニケーション円卓会議 市川まりこさん)
阿南長官にご質問させて頂いても大丈夫でしょうか。先ほど、意見を述べられた団体の中で、事業者寄りの市民団体がいるという発言があった。私は消費者団体の代表として参加しているが、例えば自分達の主張に沿わない、そういうところは消費者団体とは認めないとか、見なさないとか、そういうようなお考えを持つのかという風にも感じた。私は21世紀は、例えば消費者、例えば事業者、一体どういう風に受けていくのか、今までのような紋切り型の消費者というのはこんなものだ。事業者はこういうものだというような消費者と事業者を常に対立させて良いものかな。決してそういう状況ではないと思っている。事業者と消費者は、いつも敵対関係にあるのではなく、どうすれば良い関係は生まれるのかという、そういう肩を並べて、一緒に行動していく。食品表示について新たなものを一緒に作っていくというそういうような感覚で受け止めていかなければならない。それこそが前向きなとらえ方ではないかと思う。
前置きが長くなったが、質問は、阿南長官は今の日本の消費者をどのように受け止めておられるのか。
(阿南長官)
漠として答えにくいが、さきほど消費者の教育が行き届いていないとか、栄養のことも良く分かっていないとか、言われた方がいた。確かにそういう方達もいるとは思う。それは、消費者教育とか、啓発とかをしっかりやってこなかった。そういう環境整備をしてこなかったのは、それは行政の責任だと思っている。そのため、だからこそ、消費者庁ができたのだと思う。さまざまな生活や消費生活についても、さまざまな情報をもって、自分達が、自分で判断をして、適切に購入していく、あるいは、自分で安全を確保していく。
消費者の責任、役割を果たすためにも、そうした啓発や教育は非常に大事だと思っている。概して消費者団体も多く有るし、そこで啓発が活動させているのも良く知っている。そういう状況なので、消費者庁としては消費者の自立的な判断、自立的な行動、合理的な行動にするために、そういう環境をどうやって作って行くのかが消費者庁に求められている。
(藪さん)
阿南長官の仰る通りで、消費者教育は非常に大事である。実情についてお伺いしたいが、先日、40人の筆記試験をやったが期限表示について正確な答えを求める試験をやった。40人のうち、正確に賞味期限、消費期限について答えられたのは4人だけであった。せいぜい、我慢して半分までがなんとなく理解しているが、後は全然だめであった。期限表示は導入されてから長いのだが、消費者において、まだ、実態が有るのは事実である。
消費者庁が、例えば、啓発事業を行う、あるいは、パブリックコメントを行うのは代表的なこと。パブリックコメントを見て、コメントをするような人は、かなり熱心な人である。実態として、啓発事業に参加してくる消費者はかなり熱心な人で、実態としては啓発事業に来ない、その場にも来ない人が大半である。そういう人達が真の消費者ではないかと僕は思う。そういった人達にやろうとしていることをきちんと伝わる、例えば、期限表示でもきちんと伝わる。そうすれば食料残渣の問題も無くなるし、流通の横暴も無くなることにつながる。そういう関心を持たない消費者にきちっと分からせていく努力が行政として必要だと思う。ぜひ力を入れて頂きたい。
(社団法人日本惣菜協会 堀 冨士夫さん)
惣菜というのは世界に誇る、日本の惣菜類を世界に飛躍させようと。一方、やはり、足元、地域惣菜を追及しようとことで、地域惣菜をテーマに各地を回っている。素晴らしい地域に惣菜屋が有る。今日のこういったことが、出来る方法を、現場を知って頂いて、表示が多いほうがいいというのは確かだが、素晴らしい志を持った業者でも大変である。その辺りの地域の現場に関わる皆さんに見てもらいたい。こうしたら良いのではないかということを、法を作ってからやるのではなく、現場を見て頂いて、実現可能性の把握をよろしくお願いしたいと思う。
(上野製薬株式会社 荒井 祥さん)
消費者教育に少し関わりがあるが、昨年、検討会の時に消費者にアンケート調査をされたが、その時に回答された方、表示をあまり知らない方、詳しく知らない方が多かった。それが消費者の実態と言えばそうだが、これから表示の制度の設計等に参考にされる調査であれば先ほど、藪さんが言った啓発とかに出てこない、普段発言しない消費者を何とか連れてきて、そういう方にある程度教育して、その上でどう考えるのかをやって頂きたいと要望する。
(主婦連合会 山根香織さん)
消費者の意見を大事にして欲しいと思っている。消費者問題に長く関わって、食品表示の問題を知っている消費者の声を尊重して生かして頂きたいと思う。
表示の目的の大事なところには、誤認表示を排除することがあると思う。非常に重要なポイントである。それをきちんと法に入れ込んで、その下で各基準作りを始めて頂いたいと強く要望したい。よろしくお願いする。
(中村さん)
食品を作っているのは消費者ではなく、事業者である。私たちは事業者にもアンケートをするが、消費者庁の発信が事業者に伝わっていない。だから、何としてでも消費者庁がこういうことをやっていることについて事業者に対して提供することを徹底的に是非とも構築して欲しい。固有記号は届出制であるが、届出制ではなく全事業者を登録制にするとか、そうすれば、届けられる、情報を。全ての情報を全事業者に届けられるシステムを、是非とも考えて頂きたい。
(関澤さん)
先ほどから消費者教育ということを申し上げている。藪さんが指摘されたようにパブコメに参加する人は特定の人だと思う。しかし、私はリスクコミュニケーションということに十数年関わってきているが、食品安全のリスクコミュニケーションは、食品安全基本法でも書かれているように事業者と消費者と行政と専門家が一緒になって協力しないと出来ないことだ。消費者団体だけというのも賛成できない。もう一つ、消費者庁は今、日本の行政は縦割りでがんじがらめになっている。いろいろアンケート調査をした時に分かったことは、学校での教育、親から聞いたことが食品の判断の基本になっている答えがたくさんあった。先ほどから言っている無添加とか、農薬が危ないとか。確かに、昔はあった。今は変わってきているということをきちんと伝える教育をしていない。そのために、多くのパブコメに参加しない一般の方は間違った教育をされている。そうすれば消費者庁は文科省に、最近もあったが有害添加物の副読本を文科省が推薦しているということをやめさせる。省庁の縄張りを超えて、消費者に適切な知識を付けて頂けるような教育をして下さいと言えるようにお願いしたい。
私たちは最近は、リスクガバナンスという言葉を使うようになったが、これは、単にコミュニケーションするだけではなく、きちんと効果的に表さないといけない。そのためにはどう変えるか。行政においては各省庁の縄張りを超えて、必要なことは協力し、提携していくことが大事である。長官によろしくお願いしたい
(消費者庁 増田直弘課長)
最初に発言があったことにいくつか補足したい。長官が言ったとおり、新しい食品表示法はまさに消費者基本法の理念を実現するためのものである。これについて、我々はこういった考えでこれまで検討してきた。報告書もそういった観点から基本法の理念を踏まえた、新法はこの理念を踏まえたものであるべきであると報告書にも明記している。
その上で、消費者にとって何が重要かという時に、まず安全の情報であろうと消費者の視点に立った時に重要なものとして明記している。今後も、基本法を踏まえた消費者選択の一環としての新しい法案を作っていうことを検討していきたい。その前提でいくつかいうと、法律そのものは基本法の理念の下で制定されて、運用されていくことだが、いくつかの方からご意見で頂いた権利というのを明記しろという話があったが、これは検討会でも言ったが、立法、技術的な問題を踏まえた検討が必要だと思っている。いろいろな個別の法律、その基になる基本法に基づいて作っている。そのすべてにおいて○○基本法に基づいてとか書いていないということもある。法律に権利と書いた時に、それがどういう意味を持つのかというのは、通常、我々が日常用語で使う権利とはやっぱり違った意味合いを持つのではないかということからの検討が必要だと思っている。いずれにしろ今後の検討だが、そういった問題がある。
法の対象については、景品表示法と酒税保全法の表示の関係について意見があった。法律に書かれることをどこで区切っていくかということは、多分に立法技術的な問題がある。むしろどこで切った時にどういう問題が生じるかということを合わせて考えていく必要がある。確かに景品表示法は、食品の部分も不当表示は取り締まるわけであるが、まさに今、横断的に不当表示、取引条件も踏まえて、幅広く横断的な仕組みが既に設けられている中で、食品の部分だけを抜き出すことはトータルとして取り締まる上、合理的かどうか考えていく必要がある。お酒の法律については、酒税を取るという観点から一定の表示義務がかかっていて、それに合わせて表示義務の制度がある。それを一定的に、財務省で監督する法律がある中でそれを分断することが、結果としてより取り締まりを含めて、良くなるのかということを踏まえた検討が必要だと思っている。
個々の表示項目についても意見を頂いた。報告書の中で今後の課題として位置づけられている。法律を作る段階で、合わせて案を示すのは基本的に、物理的に無理であることは物理的には最初に言っておく。ただ、基本的には報告書等で書かれたもの以外については、基本は今の表示事項を移していく。もちろん新法が成立して、若干の期間を置いて施行されるわけであり、その間の表示基準の新たに合意されたものは書いていくが、それ以外は現行のルールを引き継ぐということを基本的には考えている。
個別論でいくつか申し上げたかったことがあるが、スペースの問題と表示事項の関係は、表示が小さいものについては省略等のルールは今そのままの通りである。これについては、先日、関西の方での意見交換会に出た時に、消費者の方が、スペースが小さい時にその容器包装に表示ができないのは当然かもしれないが、それは必要事項を情報提供しなくても良いという理屈にはならないよねと、もし書けないのであれば他で情報提供するのが本筋ではないかという意見をもらって、意見としてはもっともだと思っている。何ができるかというのは難しい問題だし、義務としてやらせる場合は、議論は必要である。ただ、単に書けないから書かなくて良いという考えは、そのままそうだとはならないと思っている。
栄養表示の問題は、環境整備と表裏一体と報告書でも書いている。表示上難しい点もあるので、環境整備、消費者庁もできるところから取組んで行くことを考えている。特に上下20%の誤差の許容範囲について、何らかの例外をつくるということについても具体的な検討を進めたいと思っている。ただ、表示そのもの論の話としていうと、この表示事項は基本的に事業所が自分で製品の管理、製品チェックをして、内容を確認して出荷するという仕組みである。例えば、アレルギーの表示なども多分加工事業者はそれなりにご負担がある中で原材料を含めてアレルギーがあるかどうかを確認して表示して頂いているということは今もやって頂いている。そういった意味では、栄養表示についても基本は事業者が義務となれば、必要に応じて調べて確認するルールで、表示して貰うことになる。そういう意味で、報告書の議論の中で、期限を明示的に定めてその上で事業者になるべく早い段階から表示に取組んで頂くことが大事だと言われている。
何が申し上げたいかというと、環境整備ができないからとやらないとかいうことをやっていると、最後に非常にしわ寄せが来るので、事業者にはできるところからでも取組んで頂くということが、結果として円滑な導入に繋がると思っている。頂いた意見に全て答えていないが答えられる範囲で答えた
●阿南長官の挨拶
たくさんのご意見を頂き有難うございます。消費者が出しているペーパーにスケジュールがある。法案の検討と同時にやっていくのは、栄養表示の環境整備を並行してやっていく。事業者の皆さん方の現場を踏まえながら、あたっていく。
それ以外の今後の検討課題とされている部分もたくさん意見を頂いた。まさにおっしゃられたとおり、現実をしっかり把握してから、調査をしてから検討していきたいと考えている。その時にさまざまな意見を協力頂くこともあると思っている。
加工食品の原料原産地表示についても、今日たくさん意見を頂いた。私は原則的には全ての食品に表示すべきだと考えている。こうしないと、今の現行制度でこのままで行くと、それでもなお要件のところは納得いかないところもあるので、見直しを図っていきたい。十分に皆さんの意見を踏まえながら、調査をしっかりして、もちろん中小零細企業に担えない負担をかけるつもりは全くない。どこまでならできるのか、現実的なところを踏まえながら検討していきたい。今後ともご意見をよろしくお願いしたい。
Ⅱ 午後の部
●阿南長官挨拶、新食品表示制度のポイント説明は午前と同じ)
●発言者の意見発表
12団体が意見発表(特定非営利活動法人くらしとバイオプラザ21、財団法人食の安全・安心財団、食の安全・監視市民委員会、食品表示を考える市民ネットワーク、新日本婦人の会、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、全国農業協同組合連合会、全日本菓子協会、社団法人日本果汁協会、公益社団法人日本べんとう振興協会、社団法人日本冷凍食品協会、一般社団法人 Food Communication Compass)
概要はこちら
●意見交換
(全国農業協同組合連合会 立石幸一さん)
原料原産地表示については、本当に各論がいっぱいあるが、まず申し上げたいのは、今回の一元化検討会に選ばれた委員の方の件について言いたい。私も阿南長官も消費者委員会食品表示部会の委員で、調査会の時に8人で議論したが、意見が2対2で分かれた時に、原料原産地表示に反対された後ろ向きな方だけが一元化検討会に選ばれた。さらに事業者が入っていったが、これではまとまるものもまとまらない。それから何故か消費者のふりをした方がいらっしゃるということもあり、非常にこの議論は、こういう形で決めたら全く進まない。そこをまず言いたい。
それから検討会には生産者団体は誰もいない。1次生産者は外されている。それから申し上げたいのは、私どもは全国農業協同組合連合会の傘下に80社の食品メーカーが加盟していて事業者団体の顔を持っており、中小企業として冷凍調理食品を作っていて、それでも東京都の基準に従ってやっている。それらの方々の意見を聞くと大半が反対である。事業者の立場に立てば、これはやりたくない。それが当然で、面倒臭い、コストがかかる。でも実はコストはかからない。それは私どもも分かっている、私は事業者だから。
そこのところをもう一度、皆様が事業者の声、私どもは内部でやっているので分かっていて、どれだけコストがかかっていて、どんなことができているか分かった上で言っている。ですから、それでもやってほしいと。これは消費者としてやってもらいたい。私は常々こういう議論をする時に言うのは、皆さん方もし自分が消費者の立場だったらどう考えるかと言った時に、誰もが事業者の立場の人も言う、やっぱり知りたいと。
自分の口に入る食品、これは工業製品ではない。工業製品はどこで作っても構わないが、自分の口に入る食品の原産国がどこなのかを知りたいというのは当然の思いだと思う。どこで作っているのか、原料は何なのか。皆さんそうではありませんか?(会場から拍手)
ここにいらっしゃる方、事業者の方もたくさんいらっしゃいますが、自分の口に入るものの原料はどこのものか知りたいというのは本音のところだと思う。そこのところでもう一回原点に立ち返って、消費者庁はその立場に立てるかどうか、それが試されていると思う。
(社団法人日本果汁協会 土屋三之助さん)
今、立石さんが消費者ということを強調されたが、以前の検討会においてもあったように、消費者が選択する際に重要なのはまず価格だ。いかに安いものを買うかといった価格の問題。そこにみんな焦点を当てている。食品を選択するのは3秒。また、多くの食品は輸入原料を使っている。
それともう一つ、消費者庁にどう考えているのか聞きたいのは、日本で作った加工食品については原料原産地を求めて、海外で製造された加工食品には求めるのか求めないのか。はっきりしていただきたい。これは大きな問題だ。今、全農さんが80何社持っておられると言っていたが、もしも国内の全農傘下の工場にそれを求めて、海外の方に求めないということならば、皆海外で作って日本に輸入すると思う。それが経済であり、みんな資金が海外に流れる。
既に飲料メーカーの多くは海外で工場を買収したりして持っている。いつでも清涼飲料を作れる状態。ただ、日本ではまだそういったシビアな締め付けがない。最終的には、食品工場が無くなった場合、消費者も労働者である。産業の空洞化が起こるようなことをしてどうするのか。私も消費者、年金生活にそのうち入るが高いものを買って生活できるかという話。そこを十分に考えてほしい。
(立石さん)
少しだけ反論させていただく。原産国は表示される、どこかというのは。今言ったように海外で作ったものは作られた国が分かる。例えばシンガポールで作ったものはシンガポールという国が原産国として表示されるんですよ。
(土屋さん)
今、消費者庁が求めているのは原料の原産国表示である。
(立石さん)
だから原産国が分かればいいんでしょ?
(土屋さん)
それはおかしい。あなたが勘違いしている。食品自体ではなくて加工食品の原料の原産地がどこかというのを求められている。ブラジル産のオレンジ果汁か南アフリカ産のオレンジ果汁かという問題だ。食品自体に日本産と書いてあって、ブラジル産の果汁が入っていると消費者の誤解を招くというのが消費者庁のおっしゃっていることで、我々もそう理解している。
(全日本菓子協会 奥野和夫さん)
同じ意見だが、輸入品は輸入されていることが分かればいいというのは、全然おかしいと思う。例えば韓国産のキムチで韓国産が分かればいいということにはならないのじゃないでしょうか。中国の白菜を使っているキムチもあるし、東南アジア各国で加工貿易しているところは、ほとんど国外から原料を仕入れている。それは分からなくていいのか?その話と国内の話は全く矛盾しているのではないか?
(立石さん)
この議論は当然原料原産地を示していただきたいという基本原則に立っている訳だが、これをできない、できないというのはメーカー側の主張として、その中間加工品、例えばシンガポールで作ったさつまいもの原料が中国かも分からない。だから原料のところまでは分からない。そうすると、最低でもシンガポールで作ったさつまいもというのが、原産地を示すことでいいのではないかという、私どもから言うとこれは提案。本来は示していただかないといけないが。無理だ、無理だと仰られるのはメーカー側、その先分からないと。そういうことであれば、原産国でもって、少なくとも海外から来たことさえ分かれば、よしとしましょうということ。
(消費者庁・谷口課長補佐)
すみません、他の方にもご発言いただきたいので、そろそろ…。
(土屋さん)
立石さんは誤解している、完全に。要するに最終製品の原産国がどこかではなくて原料の原産地を求められた場合、これは国際的にも大変なこと。中身の原料の原産地が問題になっているのであって、最終製品をどこで製造したかという話ではない。だから皆、工場も海外に出て行きますよと言っている。そこの理解が立石さんはこんがらがっている。
(食の安全・監視市民委員会 神山美智子さん)
何年間も議論してきたことをここで決着させるのは不可能だと思うので、具体的な表示方法について、先ほど森田さんが仰っていたように作業部会を設けてちゃんとやっていただきたいと思う。
私はそれとは関係なく、午前中の議論で消費者教育という話が出ていたが、期限表示については消費者教育の前に製造者教育も必要で、期限表示が分からない製造業者の方もたくさんいらっしゃる。私は、この期限表示について、賞味期限とか消費期限とかは、私たちが普通日常使わない言葉を使い続ける限り、消費者教育を100年やっても定着しないと思う。
「use by」とか「best before」とかいった英語圏の人が日常的に使っているような言葉でやらないとダメ。賞味期限と消費期限とを聞いたら一字しか違わない訳なので、こういうことを根付かせようとするのがそもそも無理ではないか。先日テレビでやっていたが、賞味期限の1/3を過ぎると、その食品はメーカーに返されるというようなことやっていた。こんなことは消費者が望んでいることではない。消費者が新しいものを好むから食品ロスが出るのではなくて、それをやっているのは流通の段階だと思うので、消費者のせいにしないでいただきたい。
それから、先ほど申し上げたが、賞味期限と消費期限ではなくて、日本人として分かるような言葉にしていただきたいと思う。
(社団法人日本冷凍食品協会 尾辻昭秀さん)
午前中、市川さんが仰っていたが、消費者と事業者は対立すべきものなのかということについて、食品事業者は私も含めて皆、消費者である。自分の子供、家族を抱えて美味しいもの、いいものを食べさせたいと考えている。こういったところで事業者だから消費者だからという議論は非常に不毛だと思う。あわせて真の消費者だという言い方もやはりおかしいのではないかと思う。消費者はいろいろな方がいらっしゃって、価格が大事、表示が大事、原料原産地が知りたいといった、いろいろな方がたくさんいらっしゃる。
ですから、それぞれの方が代表してご意見を言われればいい。それで自分と異なった意見の方を真の消費者の団体の代表ではないということは極めて破壊的で議論が進まないと思う。それが前提だが、事業者の立場として、私たち事業者は何を一番大事に考えているかと言えば、消費者の皆さんから共感を得ていただく、あるいは支持していただく、そのことが一番大事。
ですから、多くの消費者の皆さんが本当に必要とされることは、義務化されなくても必ずやることになる。実際にそのことが消費者の皆さんの消費行動を変えるインパクトを持っていて、どうしてもその表示があるものがほしいというように考えて、それが実際に動いているのであれば、間違いなく進んでいくと思う。
そういう観点からいくと、最初に義務化ありきではなくて、任意の表示から拡大していって、そのことが消費者の皆さんに共感していただけるということが進んでいけば、表示というのはもっと変わっていくと思う。
(奥野さん)
消費者庁にお伺いしたいのだが、今日の毎日新聞に原料原産地表示の拡大について、消費者庁が決定したかのような記事が出ていたが、その辺の事実関係というか、原料原産地の話は別の場を設けて検討するというのがこれまでの整理だと理解して、私はここに臨んでいるのだが、そのことを超えて拡大を決められて、新聞に出ているというのはどういうことなのですか?その辺のご説明をお願いしたい。
(消費者庁 増田課長)
原料原産地の議論については、最初に森田さんからもご指摘があったので、今までの議論の経緯を少し振り返りたいと思うが、原料原産地の今の2要件というのは、JAS法の品質に関する表示という観点から、表示できる範囲としてつくられるようになっている。
消費者委員会等の原料原産地の議論の中でも、新法ができるのに当たっては、JAS法で規定している品質に関する表示という範囲を超えて、書ける可能性があるのであれば、品質の差異にとらわれない要件について検討する必要があるのではないかという提言、これが消費者委員会のご意見だった。
それを受けて一元化検討会でも議論のたて方としては、まさに品質の差異を超えたところでどういった要件がたてられるのか、それはもちろん表示を見る、表示する必要性等を踏まえたうえで、どういうことが可能かという議論をして、そこについては検討会報告書にある通り、その部分については検討会では結論が出ずに今後の課題として整理されたということ。
それまでの経緯で前提としてたっていることは、具体的な要件は今後の検討課題なのだが、今の3法を一元化するのにあたって、従来JAS法で決められていた品質に関する表示というのは、ある意味もっと広い範囲の概念になっていくことが当然予想されるという前提で消費者委員会も議論はたてていて、それに基づいて一元化検討会でも品質の差異を超えた部分についてどうしようかという議論がなされたということだ。
それとともに一元化検討会では新しい表示の目的として、消費者基本法の理念等を踏まえて安全性の確保と商品選択、商品選択が重要な情報なのかということはワーディングの問題なので、この際措きますけれども、ということが表示の目的として決められたということ。
このことは、逆に言うと新しい表示の目的を今のように置くことは、JAS法に書いてある品質に関する表示の枠は必然的に法律の範囲としては、表示の目的の範囲としてはこういうことになるので、超えることになるので、そういう意味では従来のJAS法では制度的に書けなかった表示が書けるようになる、少なくとも枠組みはできるのではないか。
このことは、原料原産地に限らず、今まで3つの法律がそれぞれの理念で作られていた表示基準を包括的なルールにすれば、言ってみれば隙間の部分が埋まっていくことは当然あり得ることなので、そういうことを差して、ご提示したイメージ等では、拡大という言葉を使っている。
ただ、これはワークショップでも申し上げたが、そのことと個々の表示基準をどういう要件で具体的に決めていくかということは、行ってみれば、当然枠が広がったから表示基準が広がるかというのは、表示基準としてのレベルの議論が必要だということ。
今まで決まっていることというか、進んでいることの範囲は、今申し上げた通りで、逆に言うと、今後表示基準を具体的にどういうふうにしていくかということについては、整理としては今後の課題として整理されている状況だということ。
(阿南 久長官)
今の件だが、消費者庁からのペーパーの2ページ目にスケジュールが出ている。当面やっていくのは、上の方にある2つ、法案の検討と栄養表示の義務化に向けての環境整備のところ。それはすぐに始めるところ。下の残された検討課題のところは、調査をしながら、それは中小やいろいろな事業者の状況等の現場も考えながら、調査したり検討しながら、新しい検討の場の立ち上げるための準備に入ろうということがスケジュールに書かれている。
原料原産地表示に関しては、一番下「新しい検討の場での検討」のところは、「対象品目の選定2要件の見直し等」も入っていて、この通りである。その時には要件の見直しも含めた抜本的な基準の設定を行いたいと、そのための検討をしたいということを言っているということ。よろしいでしょうか?
(土屋さん)
一つ確認したいのだが、この資料の2ページ目の「現行制度下での拡充の実施」というところで、対象品目の追加を検討しますとあるが、内外無差別でやられるということで理解してよろしいか?
(増田課長)
原料原産地については、まず現状のルールとして、何度かお話しがあるとおり国内製品について原料原産地を表示するということになっている。この仕組みは原料原産地、主としてまさに原料の原産地が国産かどうか、ということを消費者の方が関心があるということを念頭に置いて制度を作っていて、輸入品であればもちろん輸入国が書かれるわけですから、今の日本の状況から言って、海外で作られて国内の農産物が使われているということは基本的にはないだろうなということで、輸入品であれば基本、少なくとも海外の原料であるということが分かればそれで足りるのではないかというふうに整理されているというところである。
ただ、ここについては今もご意見があった通り、非常に不公平感が強いというのも事実だろうと思っている。国産かどうかということを知ることが非常に重要な課題であるとすれば、韓国もそうやっているようだが、輸入の場合は輸入品と書いてもいいとか、そういうルールの作り方もあるのではないかということは考え方としてあると思う。これは検討会の場でも原料原産地の表記の仕方も検討してはどうかということについて、我々からは提案したところだ。
それについてはもちろん、むしろ否定的だったというのが検討会の状況であったが、そういった今後のことを考えればいろいろな選択肢はあるかと思うが、今の整理は今、申し上げた通り。
ここで書いてある「現行制度下での拡充の実施」も、言ってみれば現行のJAS法の枠組みの中の要件での追加検討ということなので、従来の枠組みで追加していくことを念頭に置いている。
(生活クラブ事業連合生活協同組合連合会 萩原妙子さん)
いくつか、森田さんも含めて質問したいのですが、さっき森田さんが言われたことで、「この検討会で決めたことが覆されておかしい」と言ったが、検討会で私たち国民市民はそこまで委任いなかったと思う。というのは選ばれ方にしても、消費者庁から選ばれた方で、さっき真の消費者がどうこうとかいろいろあったが、推進する側も、そうではない意見を持っている側も公平に入っているわけではなかったはず。なので、そこまで仰る意味は私にはよく分かりませんでした。
それから土谷さんですが、消費者は価格だけが大事なのだと言い切られましたが、とてもそんなことは信じられないことで、私たちはもちろん価格は大事なことだが、それ以上に命はもっと大事。命を含めて価格を決めていく、それには双方の努力もあるのではないかと思った。そんな風にいられるとつらいなあ、私たちって価格だけなのかしらと、そう言われてしまうとつらいなと思ってしまった。
それから先ほど尾辻さんが仰っていたことで、表示があることで信頼に結びつく、それは本当にそうだと思う。でも何も知らされなければ、何が隠されているか分からない。このことから何を私たちは知っていて、何が分からないのかも分からない状態だ。一番言えるのはGM食品。遺伝子組換え食品というのは、本当はたくさん含まれていて、お菓子でも飲み物でもたくさん含まれている。でも多分知らない。私は一生懸命勉強しようかなと思って少しは分かりますけど、知らずに食べる。それはやっぱり表示が先にあるべき。それは義務化が必要なのではないかなと思った。ぜひ、私たちは事業者の方達と対立したいわけではなくて、ともにいい食生活、いい市民でありたいと思っているので、そんな価格だけで消費者が選ぶなんて仰らずに、ぜひ命の大事さを基本に作っていたければなあと思いますが、いかがでしょうか?
(一般社団法人 Food Communication Compass 森田)
今、ご質問をいただいたので、お答えさせていただく。私が委員としてふさわしいかどうかは別として、検討会で決められたことは重いことだと思っている。そこで決められたことを踏まえて新法ということになっているわけで、それはこれまでもいろいろな、例えば栄養成分表示にせよ、健康食品にせよ、そうやって検討会で今まで決められてきたことをベースにしている。今までの食品表示、JAS法とかでも私委員をやっておりましたけれども、そこで決められたことを基に法律が決められてきた、それはルールだと思ってきた。そのルールを覆すのですか、という質問を消費者庁にしたということだ。なので、私は手続きの話をしているのであって、それは消費者の意見ではありませんと言われると、そこはちょっと話が、筋が違うと思う。
(萩原さん)
私が言ったのは、委員として委任はしてないということ。
(森田)
委任はしてなかったら、検討会の意見は全然尊重しないでいいのか?
(萩原さん)
尊重する範囲で留めて、もちろんこの会でもそうだが、私たちは意見を申し上げる、いろいろな意見の中から、その上で最後に決めるのは議会であって、議会は私たちが選挙で選んでいる人なので、そこで決めないと。それなのに自分達の意見が通らないのがおかしいような表現をなさったので、それは少しおかしいかなと申し上げました。
(森田)
私もそちらの意見がおかしいかなと思う。いろいろな消費者、消費者は価格だけで選んでいるわけではないということでしたが、ものによって違うと思う。価格で選ぶ場合もあるし、原産地にこだわる場合もあると思う。私は今、生協に入っていて、福島のものを応援してそれを買っている。そういうこだわりがある中で、選べるか選べないかということを言えば、原料原産地のことで言うと、本当にほしければ、そのこだわりは生協とか、それなりの商品で選べるのが実態だ。
それを全てのものに義務付けたら、それはコストが上がる訳で、それがどのようにかかるのか。立石さんがコストは全然上がらないと仰る、だったら作業部会で本当に上がらないのかどうか、それからよく韓国の調査と仰るが、それは本当に国際的にみてどういうものなのか、それをきちんと作業部会で事実を一つ一つおさえていかないと、こうやっていつまで経っても話が進まないということになる。
今日の生協の方のお話しを聞いておられたかと思うが、生協は何人の組合員を持っておられるか。その方達がこれ以上の原料原産地は要らないと仰っている、私は、それはすごく重いと思う。そういったことで真の消費者が誰かという議論はそろそろ止めたほうがいいのではないか。確かに原料原産地を知りたいかと言えば、知りたいとなるかもしれないが、でもそうやって知りたいものをどんどん重ねていって表示がこれだけ見づらくなったわけで、見づらくなったから検討会が行われたということ。それで分かりやすくという方向性が出たのに、また戻るのかということを言っている。1年かけて国民の税金で検討会の議論を積み重ねて、そして報告書をまとめたことを、それを覆されるということはやはり、消費者庁の責任にもなりますよということを私は申し上げている。
もう一点、先ほどのご説明で、報道では2要件を外して全ての加工食品に原則表示ということだった。今のご説明だと、毎日新聞の報道が間違っているということで良いか?
毎日新聞2012年11月22日記事「加工食品:原料原産地、表示義務の品目拡大へ 安全への関心高く」
(阿南長官)
ずっとそう言いました、私。
(森田)
そうなのですか。ということは2要件を外す?事務局のご説明だと・・・。
(阿南長官)
そうではなくて、2要件はこのまま行きますと、このままいくと今回、原料原産地表示は新たな検討が始まるまでの間は今のままでいうことになりますが、しかしそれは今の制度の中でも拡大の方向にあるということ。拡大は確実なんです、それは。要するに、原則的に今の2要件では私はやっていけないと思っていて、拡大の方向を取る以上は、原則的には全ての食品に表示をすることを原則として、そうした上で何ができるのか、できないのか、いろいろな条件を考えながら議論をして検討していきましょう、ということを申し上げた。
(森田)
私もそのような理解です。2要件はずっと付いたまま、検討の見直し、つまり2要件の見直しをある時期からそれを外すとか加えるとか検討を始めるということですよね。それまでは現行の制度のまま行くということでよろしいですよね。報道では、2要件をすぐ外してどんどん拡大するという報道だったものですから。そうではないですよね。
(阿南長官)
そうです。
(土屋さん)
先ほど私が申したのは、消費者が商品選択するのは価格だけと申した訳ではない。一般的には価格が最も重要な要素になっているということを申し上げた。そこを誤解しないでいただきたい。
(新日本婦人の会 浅井まりさん)
私が思うに、やはり私の中で、意見の中でも申し上げたが、やはり圧倒多数の国民はこういった論議がされているということもまだまだ知られていないと思う。それで検討会の意見を覆すのがどうかということもあったが、やはり検討会自身が中間にパブリックコメントを求めた時に、全ての加工食品に原料原産地を表示してほしい、義務化すべきという圧倒多数の意見が、検討会に反映されなかったこと自身、私は検討会の存在意義がなんだったのかと疑問に思う。
やはり広く国民にパブリックコメントを今後も求めていく、消費者のための消費者庁という立場であれば、国民に意見を求めていくということが、公平、公正な行政の在り方なのではないかと思っている。
それから私は価格だけというか、先ほども荻原さんが仰られたように、やはり口に入るものは工業製品とは違って、極めて特殊なというか重要な意味があると思う。食品の原料原産地とかそういった表示には命の重みがあるので、やはりそういった消費者の、まあ皆さん消費者なのですが、本当に安心・安全なものを食べていきたい、子供達にもそういったものを手渡していきたいという思いを、ひとつ前進させていく内容に是非していただきたいと思う。前向きな検討にしていきましょう。ぜひよろしくお願いします。
(食品表示を考える市民ネットワーク 西分千秋さん)
消費者庁の方に質問と意見があります。検討委員会の委員に選ばれる基準というか、ルールは明確にあるのか?もしなければ公募という形も考えていただきたいと思う。
(消費者庁・増田課長)
検討会の委員はもちろん消費者庁で選んだ訳で、それぞれ検討会の性格に応じて基準を作るということだと思うが、今回の食品表示一元化検討会においては幅広い考えの方々を選んで議論をお願いした。公募等をどうやるのがいいのかについては次以降に考えていきたいと思う。
(尾辻さん)
先ほど荻原さんから名指しにされましたので、少しお答えさせていただく。確かに知りたいということはよく分かる。私どもが申し上げているのはいきなり義務化ではないでしょうということ。例えば、調理冷凍食品は東京都で義務化されているが、それ以外の食品についてもお客様からお問い合わせがあれば、それぞれの会社がお答えする体制になっている。
そういう観点からいくと、お客様からの声が大きくなって対応しきれなくなる、一つの例が栄養成分表示だ。栄養成分表示はもともと義務化ではありませんし、現時点では。ただ、今のマーケットで売られているいわゆる加工食品のほとんどに栄養成分表示がなされている。これはやはり消費者の皆さんがいろいろとお問い合わせをされる、これはやはり消費者の皆さんにとって関心のある事項なのだということで、メーカーが対応してきたという観点があるので、最初から義務化してやっていくということではなくて、そういったお互いのやり取りの中で、本当に必要な表示だとなれば事業者側も当然変わっていくと思う。
(立石さん)
何度も仰られているが、現行の要件1、2というのは阿南長官も委員だった調査会の中で全員がこのことについて異議申し立てをしなかった。おかしいということが確認されて、さらに消費者委員会からも、JAS法の枠組みにとらわれない形で新しいルールを作りなさいという提言が出ている。
そこのところを、また、今回も検討会で振り出しからやった。何にも消費者委員会からの提言は無視されたことが大変残念だ。あれだけ労力をかけて、長官も一生懸命やっていただいて、7~8回議論したと思うが、その議論が全く反映されないで、この検討会の中で一から始めて中間論点整理をされたという、この進め方に私は非常に不満足だということを食品表示部会の中で申し上げた。ここなんです、それぞれピン止めしていかないと。
それから作業部会についてだが、これもさんざんやっている。様々な検討会、それから実態調査や、あの時も2回調査に行った。だから、そういったことを踏まえて最終的にあの結論を出したはず。それにも関わらずそのことは全く反映されていない。それどころか積極的な意見を述べた私と山浦委員は外されて、逆に言えば後ろ向きな方が選ばれたということが非常に不本意である。その間40品目くらい消費者からの要望があったのに、義務化されたのはたった2つ、緑茶とピーナッツだけ。それからピーナッツだって、私が何回も申し上げた50%ルールとか変なものがいっぱいある。そういったことを散々申し上げた上で、やはりこのままやるというなら具体的なルールを示さない限り何も進まない。その上でこんなルールでやれるのですかということを皆さん突きつけて、運用ルールを定める。頻繁に変わるから分からないとかそういうものは輸入品と書けばいいのではないか、大括り表示をやりましょうということ。
実質的変更が日本で行われた時に、このことが国内産となっていることがおかしい。それで原料を作っている1次生産者が困っている。黒糖について議論した時も、黒糖について、消費者からもあがっている、情報の格差があり過ぎる。要するに国内で作られたものかどうか、国産原料で作ったものか外国産原料で作ったものかさっぱり分かってない。黒糖なんかそうだった。だから要件1に当てはまらないと散々議論した上で押し切ったわけだ。だから今の要件がある上で原料原産地表示が進まないのは明らか、このことは、様々な要望がありながら。一番困っているのは1次生産者。皆さんが国産だと誤認して買う、でもそれは輸入原料で作られたもの。そこのところで苦しんでいるのが1次生産者ということで、再度お願いしたい、訴えたい。
(財団法人食の安全・安心財団 中村啓一さん)
議論が混迷するのは、やはり全てを義務化という話になってしまうからだと思う。事業者は努力している。それで自主的な表示ルールを作ったりして、中食・外食についても進めている。それについて消費者から支持が得られればそれは広がっていくのだ。全て無理して、全て義務化して、違反者を続出させて、結果的に食品業界全体の評判を落とすよりはむしろ自主的な努力にインセンティブを与えて推奨する。そういう行政施策も必要なのではないか。そういったことをぜひお願いしたいと思う。
(森田)
何度も申し上げるが、原料原産地表示拡大について絶対反対ということを言っているのではなくて、オンかオフかという議論になっているのが問題だと思う。拡大を全ての加工食品にしようとすると、どうしても物理的にできないもの、ブレンドするとかそういったものも絶対出てくる訳なので、そうではなくて、できるもののところで今ある矛盾点がどこにあるのか、そこについて、まずは何からできるのか、どうしてもできないものは何なのか、全ての加工食品の原料原産地表示に関してはケースバイケースだと思っていて、それを細かく詰めていくということが前向きな議論になると思う。それが消費者団体皆さんが求めていること。
(谷口課長補佐)
そろそろお時間の方が大分過ぎておりますので、まだまだご意見あろうかと思いますが、意見交換に関してはここまでとさせていただきたいと思う。最後に阿南長官の方からご挨拶申し上げる。
(阿南長官)
大変今日はありがとうございました。どうも今後の検討課題の基準作りのところに関して盛り上がってしまった訳だが、本来今日は法案の作成と栄養表示の義務化に向けてのところが中心だったのですが、でも、少しは意見をいただきましたので、その作業にできるだけ反映させるような形で進めたいと考えております。また、時々このような意見を出していただければなと思っておりますので、今後ともぜひよろしくお願いします。今日は大変ありがとうございました。
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。