科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食品表示・考

第7回食品表示一元化検討会〜小比良和威さん

森田 満樹

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この検討会も第7回を迎えた。中間論点整理と、そのパブコメを終え、後半戦に入る。今回の議題は「中間論点整理に対する意見募集と、意見交換会の概要」「論点についての検討方向」であった。事務局からは今後の予定について、今回と次回で、たたき台をもとに議論を行い、その議論をもとに報告書案を作成するという説明があった。その報告書案については残りの2回で議論すると、方向性を示した。

なお、前回に引き続き、twitterでの議事実況を行った。内容はこちらのURLにまとめてあるので、参考にしていただきたい。

混乱の原因は見通しの悪さ

 たたき台についての議論は、これまでの6回の議論と同様に混乱した。原因は、これまで何度も指摘しているように事務局の進行に起因している。一言で言うと、全体の見通しがつかないのだ。事務局が示したたたき台案(資料3)にはこれまでの検討会の意見やパブコメ等の意見を入れつつ論点ごとにまとめてある。しかし、このたたき台案の記述内容が、最終的な報告書に反映されるのか、さらには新法の条文にまで影響するのかがわからない。しかし、報告書の記述と条文では、適切な表現なども異なる。そのため、委員は必要以上に細部の表現に対する確認を行う必要が生じた。

 事務局からは、あくまで報告書の内容についての議論であると説明があったが、それがあらかじめ明示されないため混乱が生じた。また、内容についても、検討会で議論されなかった遺伝子組換え食品の表示ついては、議論の対象としないとされる一方で、食品添加物に表示においては、これまで話題にもなっていない識別番号による表示(EUで行われている)が登場するなど、一貫していない。一つ一つは細かいことかもしれないが、それらが積み重なって議事進行が遅滞する結果となっている。全体の方向性や、全体に対してどの部分の議論を行っているかなど、俯瞰できるような情報提供と進行をあらためて事務局に求めたい。

パブコメについてのそもそも論

 ところでたたき台の議論に入る前段として、パブコメの結果報告をまとめた資料1について、山根委員から正確な数値が記載されていないことは問題であると意見が出された。資料1では、各論点ごとに主な意見と、その意見に類似した意見が何件あったかが記載されている。しかし、100件以上の意見については「100件超」と、数字が丸められていた。事前に委員に配布された資料では、この部分について細かな数字が記載されており、当日に差し替えられた形になっていたようだ。

 事務局からは、参考資料である意見募集結果にほぼ全文が記載されているので、それを参考にしてほしいこと、微妙なニュアンスの違う意見のどこまでを同一意見として扱うのか判断も難しいことなど、資料のまとめ方についての理解を求める発言がなされた。しかし、委員からは「そもそも、意見の取りまとめが困難なことは意見募集前に予想されていた」「他の省庁のパブコメでは正確な数字が記載されている」などの意見が相次いだ。鬼武委員から発言があったように、どのような取りまとめをおこなったのか説明をしつつ、誤解を生まないような表現で、なるべく正確な数値を出すべきだろう。資料1の数字の部分については後日差し替えて欲しいと思う。

 さて、数字は正確さが求められる一方で、パブリックコメントは多数決では無い。少数意見であろうが、多数意見であろうが、その内容が重要となる。同じことは意見交換会での発言にも言える。意見交換会の概要をまとめた資料2では複数の発言者からの意見には◎印がつけられている。

 しかし、意見交換会の傍聴記事でもお伝えした通り、活動を共にする市民団体がそれぞれ同趣旨の発言を行っている。山根委員は提出資料において、多く寄せられた意見について尊重し、公正に反映されることを要請すると述べている。しかし、自身の所属する組織も含めて「意見の水増し」のような行為を行いながら、そのような意見を述べることが公正な態度と言えるのか?改めて疑問を呈しておきたい。

 なお、パブリックコメントの意味については、次の記事がわかりやすいので、こちらを一読されたい。パブリックコメントは何のためにあるのか  FoodScience過去記事 うねやま研究室

今後の展望

 次回は、いよいよ論点4と5についての議論である。論点4は原料原産地表示、論点5は栄養成分表示、共に表示の義務化や拡大の是非について議論が絶えないテーマだ。意見交換会では、事業者団体を中心に、義務化が困難かつ消費者メリットにつながりにくいことが示されていた。一方で、原料原産地表示の拡大は消費者基本計画において決定されている。両者の落とし所をどこに設けるのか、各委員の冷静な議論と事務局の舵取りに期待したい。

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。