九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。
消費者庁は2012年2月21日、第6回目の食品表示一元化検討会を開催した。議題は、食品表示一元化に向けた中間論点整理(案)についであった。
今後、この中間論点整理をもとに3月よりパブリックコメントが実施される。また、3月23日に意見交換会が開催される予定となっている。
なお、前回に引き続き、twitterでの議事実況を行った。内容は以下のURLにまとめてあるので、ぜひ参考にしていただきたい。
http://togetter.com/li/261486
〇中間論点整理(案)について
中間論点整理(案)についての事務局説明に先立ち、委員から検討会としての着地点や議論の範囲について事務局への質問が相次いだ。検討会の範囲として、事務局からは容器包装された加工食品の表示について三法をまとめるという回答があり、監視体制と是正処置については対象としないことや、食品添加物や遺伝子組換え等の個別の表示ルールには立ち入らないとの説明がなされた。
また中間論点整理(案)については、前回に事務局からの説明があったものの、その内容はこれまでの委員会で出た意見の羅列であった。この内容に対して、1)整理が十分ではない、2)実際の議論に応じた重みづけが十分に反映されていないなど厳しい意見が相次いだ。
〇 Webアンケートについて
年度内に実施予定とされていたWebアンケートについて、既に年末に実施済みであったようで、その結果概要が報告された。その結果からは本来は安全のための表示では無い加工食品の原料原産地表示が、「安全のため」と認識されているなど、表示制度の主旨が十分に浸透していないことが明らかになった。
また、多くの消費者が表示項目を増やすよりも項目を絞り込んで文字を大きくすることを望んでいることなどが明らかになった。ただし、これはインターネットを使える人が対象の調査であるため、母集団を十分に反映しているとは限らないことについても指摘がなされた。
〇 感想
中間論点整理(案)が出て、検討会での議論の範囲などもようやく事務局から出てきたが、何故今頃なのかと感じた。本来ならば今回の資料や議論は、初回か、せめて第2回に行った上で、大枠から詰めてきちんと整理していくべきでは無かっただろうか?
また、パブリックコメントを行うといっても、通常のパブコメのように何らかの具体的な法案に対してチェックを行うのではなく、広く意見を募ろうという形式である。委員からも危惧する声が出ていたが、意見が発散してしまい、取りまとめは困難であることが予想される。
集まった意見の使われ方にも不安がある。事務局側が意見を「利用」して、最終報告に都合のよいところだけ使ってしまわないかという懸念だ。
というのも、消費者庁は平成22年に加工食品の原料原産地表示について、やはり意見募集と意見交換会を実施した。その結果として消費者委員会食品表示部会によって、黒糖と昆布巻きについて原料原産地表示が拡大された。
その議論を追うと、どちらかというと表示の拡大に否定的な意見が大勢を占めていたのだが、食品表示部会の座長預かりとなり、結果として表示の拡大につながった。
その再現にならないだろうか。
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。