斎藤くんの残留農薬分析
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
「中国産野菜続く輸出減、薄れるメリット」として、中国産ブロッコリーの輸入量と卸売価格の紹介があった。(農業新聞2008.7.10)以前は中国産がキロ当たり70円くらい安かったものが、今年3月にはむしろ20円くらい高くなったこともあったとか。年間1万tを超える輸入量があったものが、10分の1以下の量、4,5月にはゼロになったとか。だからといって、それ見たことかとか、今こそ国産志向とかだけでは簡単に処理できない問題だろう。
今年も梅雨が明け、暑い夏が巡ってきた。昨年は40.9度で埼玉県熊谷市と日本一を争った岐阜県多治見市に住むものとしては先が思いやられる夏である。とはいうものの、実際は寝に帰ってくるだけだから、その日本一を実感したわけではない。暑い暑いといいながら抹茶アイスを食べている。
このコラムが掲載される7月24日は土用丑の日である。お店などでも圧倒的に国産品が多く、誰かが無理をしていなければよいがと思ってしまう。南高梅や佐藤錦が盗まれる話は最近多いが、20日には岐阜県可児市のウナギ料理店で「愛知県一色産(本物)」のうなぎがいけすから160匹が盗まれたという。世知辛いというか情けない世の中になったものである。
1月の冷凍ギョーザ事件以来、中国産野菜類などの輸入量は3割以上減り、敬遠ムードという。代わりに台湾産、ベトナム産、タイ産などからの輸入が増え、リスクが分散されてきているのはバランス上良いことである。最近の輸出検疫強化による輸出しにくい環境や、中国国内での経済発展もあって国内での販売も増えており、余計日本への輸出が滞ることとなる。ブロッコリー等など中国国内でそれなりの卸売価格になればやっていける食材はよいが、中国の食文化に合わない原料は大変である。上記のウナギの蒲焼も困ってしまう商品の代表である。
中国という名がつくと嫌われる風潮がある中、生鮮野菜などは上記の通りかなり苦戦しているが、いろいろな商品の原材料としては価格、安定的供給等の理由から使用されているのが現状である。タケノコ、シイタケ、ゼンマイ、ニンニク、黒ゴマ、春雨、レンコン、ネギ、タマネギ、ニンジン、ゴボウ、野沢菜、キャベツ、ホウレンソウ、サトイモ、ソバ、ダイズ、枝豆、はちみつ、ワカメ、シジミ、ウーロン茶、ウメ、モモ、リンゴ(果汁)などなど枚挙に暇がない。魚等も泳いでいるところは外界でも、採れた国となると中国が多くなる。唯一自給率が100%に近いコメでも米粉となると中国産が多くなるのが現状である。スーパーなど消費者が直接目に触れる商品では国産原料!という表示も目立つが、外食産業など業務用となると価格、供給面から中国産はさらに増える。
だから我慢しろとか、あきらめろとか言うつもりはない。現状はこうだ。こういう現状で何が出来るのか。自給率(カロリーベース)39%の日本で中国産原料を断っても実際にはそれほど寄与しないだろう。カロリーの多くを担っている穀類、油類、肉類はこの中にあまり入っていない。
しかし、消費者の願望はもっと満たされても良い。米粉は出来るだけ国産も使ってほしい。いろいろな食材の中で、国産にこだわった肉などを使った商品にはせめて国産の野菜を使ってほしい。リンゴ、ウメなど価格が折り合わない面は分かるが出来るだけ使ってほしい。ダイズ等は国内生産量を増やしてはほしいが、中国の有機ダイズ等は遺伝子組み換え問題も含め国際的な基準で手間隙かけて管理されている原材料は大切にしていきたい。
今一番大切なことは、国内自給率が低い日本がいろいろな素材を、当面海外に頼らざるを得ないことである。そういった現実の中、日本の関係者も含め多くの人が日本人向け輸出商品を生産してくれているのだが、冷凍ホウレン草事件、ギョーザ事件など日本人の健康を害する商品を生産する国とのレッテルを貼られて急にすべてがストップしてしまうと彼らも路頭に迷うのである。そこには日本に対する恨みつらみしか残らない。
そういう関係論を作っておきながら、世界的な食料不足の余波を受けて中国からまた大量に買わざるを得なくなる状況もないとは決して言えない。そうなった時、何が大切かといえば買えるお金を持っていることも大切だが、日頃の関係がもっと大切である。日頃無視するが、つれない態度をとっていて、ここで急にニコニコされても気持ちいいものではないし、協力してくれるわけがない。そこでビジネスライクに物を売ってくれたとしても、食べ物としては大丈夫かなと疑ってしまう。
中国で生産される商品にかかわっている方にお願いしたい。逆境ではあるが、今こそ商品の整理整頓を行い、将来的に日本の消費者のためになる食材を確保し育てていってほしい。またそれを、地道にいろいろな方法で消費者に熱く伝えてほしい。矛盾するようだが、それこそが地産地消、国内生産を育てながら、安定した(住み分けできた)バランスの取れた食生活を約束してくれる基盤作りであると思っている。プロとしての見識を示してほしい。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)