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GMOワールド

毒素を見つけると減光して知らせるGM微生物

宗谷 敏

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 微生物の遺伝子組み換えでは、チーズの凝固酵素であるキモシンなどが有名である。農業バイオのような派手さはないが、なかなかシブい分野であり、時折、目を引く報道に接する。7月9日のTheStraitsTimes紙は、細胞のDNAを組み換えて毒素に鋭敏な微生物を作るシンガポールの研究開発を紹介している。

参照記事1
TITLE: Glowing “cop” that detects poisons in a jiffy
SOURCE: The Straits Times
DATE: July 9, 2004

 シンガポールのNanyang Polytechnic(南洋ポリテクニック)と英Crown Vision Systems社が共同開発中の微生物は、GM技術によって赤く発光させられ、発ガン物質のような有害毒素と接触すると光を減じる性質を有する。食品や医薬品をターゲットにした一種の診断ツールである。

 この研究は2年後の実用化を目指し、残留農薬のような化学物質あるいは菌類、バクテリアなどに由来する様々な有害毒素に反応する新しい生体の開発に取り組んでいる。この研究が実用化されれば、食品や医薬品で毒素を発見するために用いられている高価で時間もかかる液化クロマトグラフィーや動物生体試験に代えることができるという。

 財団法人海外職業訓練協会のサイトによれば、ポリテクニックとは中堅技術者の養成を目的とした大学に準ずる高等教育機関で、シンガポールには4校のポリテクニックが存在する。「80年代後半以降の経済の労働集約型産業化から技術・知識集約型産業化への転換を受けて急速に必要となった技術者育成の要請を受けて90年代初めに設立された。Nanyang Polytechnicの設立は1992年と4校のポリテクニックの中では最も新しい」。

 一方、Crown Vision Systemsは英国のバイオサイエンス企業であるCrown Bio Systems社の子会社であり、研究所の稼働コストは同社が負担する。このプロジェクトのために、防衛と航空宇宙システムを開発する英BAE Systems社が、100万米ドル以上の開発費用を提供している。

 ところでGM色変わりでは最近もサントリーの「青いバラ」が注目を集めたが、もう一つ思い出したことがある。食品に関係ないため今まで流してきたが、地雷探知植物の話題にもこの際、触れておこう。
参照記事2
TITLE: GM cress could seek out landmines
SOURCE: BBC
DATE: Jan. 28, 2004

参照記事3
TITLE: GM plant tracks land mines
SOURCE: Guardian
DATE: Mar. 28, 2004

 デンマークのAresa Biodetection社が遺伝子組み換えした植物(Arabidopsis thaliana)は、土中の地雷が発する窒素二酸化物に触れると、3〜6週間で緑から赤に色を変えるという。国連の推計では、世界の68カ国に1億1000万個以上の不発地雷が存在し、今なお毎月2000名以上の人々が死傷している。

 これら不発地雷の発見や撤去には当然危険を伴うが、従来の金属探知器や地雷犬の代わりにこの種子を飛行機からまくことによって、安全に土中の不発地雷を発見できるというのがこの技術の売り物である。実効性を疑問視したり、例のごとくGM植物を環境中に放出することに対する懸念を表明したりする声もあるが、開発メーカーは植物自体が虚弱で繁殖能力を待たないと回答している。

参照記事4
TITLE: Plants to Detect Land Mines
SOURCE: The Science Show, Radio National
DATE: May 8, 2004

 この話題は先日民放のテレビ番組でも取り上げられていたが、ボスニア、スリランカまたはアフガニスタンで計画された実地テストの結果が、果たしてどうなったのか気になるところである。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)