GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
台湾のDOH(The Department of Health 保健局)長官が「他国に比べわが国のGM食品表示規制はそれほど完全なものではないが、今後3年間で組織的なGM食品表示を計画している」と述べたのは8月15日のことである(03.08.15.China Post)。
一週間後、その計画の概要が明らかにされた。
参照記事
TITLE: DOH to require labeling of food with GM soybeans and corn
SOURCE: China Post
DATE: August 23, 2003
台湾のGM表示計画は3つのフェイズに別れており、記事の通りであるなら、最初の段階ではまず一般農産物から区分するために、GM農産物に表示をさせることを考えているようだ。表示は「遺伝子組み換え」または「遺伝子組み換え(成分)を含む」と記され、後者はわが国の「不分別」に相当するものと考えられる。
04年1月からの第2フェイズでは、原材料のうちのダイズやトウモロコシ中のGMOが重量比5%以上の場合、当該食品に表示させる。豆腐、豆乳、コーン缶詰などが対象となる。第3フェイズは05年から実施され、GMダイズやトウモロコシを含むすべての食品にGM表示をさせる。ただし、醤油や植物油及びコーンシロップなどは対象外となる。しかし、原材料が明確なら表示は可能なので、これは第1フェイズとやや矛盾がある。
注目される第1フェイズであるが、原材料である農産物からまず表示をさせようという発想は、わが国のJAS法品質表示基準が消費者に渡る最終製品にターゲットを絞っているのに比べ、コンセプトが異なる。一見明快であり、定性分析だけでも行けそうな気がするが、実際にはここの扱いが難しい。
それは、いわゆる「意図せざる混入」を閾値も含めてどう扱うのかという問題である。GM作物栽培国との農産物貿易はこれを認めない限り成立しない。日本と同様、米国からの農産物輸入に大きく依存する台湾にとっても、ここがネックになる。
日本は、コストアップにつながる原料農産物に対する科学的な検証を制度的には避け、IPハンドリングに逃げたが、おそらく台湾でも最終的には同じことになるのだろう。しかし、第2フェイズにおいては、科学的な定量分析が必ず必要となってくるため、検査設備・技術などの整備に加え、検査費用などのコストアップを誰が吸収するのかも大きな問題になる。
洋の東西を問わず各国政府が頭を痛めてきたGM食品表示実施問題は、初のGM農産物商業化(95年のフレーバーセーバートマト)から8年経つ現在に至ってもなお、実行可能性に決定的なブレークスルーが登場せず、後発の優位性が通用しない。