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宗教だっていろいろ

宗谷 敏

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バチカンにあるカトリック教の総本山ローマ教皇庁の評議会が、農業バイオに肯定的な報告を9月に公表するらしいというので議論を呼んでいる。今回は、英国「ガーディアン」からの記事について。

飢えと闘うためならという名目だが、先進国大企業に益する行為だとする途上国の聖職者たちからの反対の声も上がっており、教皇庁は何らかの公表は行うが、結論が決まっているわけではないと慎重なコメントを出した。
参照記事
TITLE: Vatican backing sparks GM row
SOURCE: Guardian
DATE: August 14, 2003

しかし、もしもバチカンが農業バイオ支持を表明したら、西欧キリスト教諸国に与える影響は日本から想像する以上に大きい。教皇庁というところは、各枢機卿が長官を務める10省と裁判所、11の評議会及び事務局を擁するミニ国家ともいえる巨大組織であり、話題になっているのはレナート・ラファエレ・マルティーノ大司教が委員長を務める「正義と平和評議会」である。
教皇庁とGMやバイオとの関連をさかのぼってみると、00年11月12日のミサで教皇ヨハネ・パウロ2世は、むしろGM食品を婉曲に批判する演説を行っている。ところが02年12月、教皇庁の国連代表を務めたマルティーノ大司教が「自分は米国で16年間暮らし、スーパーで買った(GMを含む)食品を普通に食べてきたが、健康は何ともない」と発言し、ザンビアのGM援助物資拒否を「有害である」と評して話題となった。
さらにマルティーノ大司教は03年6月、米国のサクラメントにおいて開催された農業科学技術閣僚会合にも列席し、「飢えや栄養失調に苦しむすべての人々に食物供給を促進する必要性を理解すべきだ」と農業バイオを支持する発言を繰り返している。こうして見るとマルティーノ大司教は、バチカン内部では筋金入りのバイオ技術サポーターなのである。
一方、イスラム教の方はどうかというと、インドネシアの代表的回教徒組織MUI(the Indonesian Ulemas Council)が、GMダイズやトウモロコシ由来の食品を食しても問題ないというアナウンスメントを出している(03年7月8日、The Straits Times)。これに先立ちマレーシアでもイスラム組織は、植物バイオ由来の食品にはOKを与えている(02年8月6日、The Star)。
また、大学まで経営する米国中心の有力なヒンズー・カルトであり超越瞑想や空中浮遊を推奨するマハリシは、関係者がGM食品検査会社を起業し、今や世界中にビジネスを展開し大儲けしているようだ(01年1月、遺伝子組み換え食品報道検証委員会「互助関係で問題をあおる国内メディアとジェネティックID社」)。
03年1月に世界初のヒト・クローンを誕生させたと発表して世間を騒がせた新興宗教ラエリアン・ムーブメントは、一貫してGM食品支持を表明している。宗教のGMやバイオへのかかわり方もいろいろである。