多幸之介先生の健康と食の講座
食や健康に関する間違った情報が氾濫し、食品の大量廃棄が行われ、無意味で高価な食品に満足する奇妙な消費社会。今、なすべきことは?
食や健康に関する間違った情報が氾濫し、食品の大量廃棄が行われ、無意味で高価な食品に満足する奇妙な消費社会。今、なすべきことは?
藤田保健衛生大学で臨床検査技師の養成教育に長年携わった後、健康食品管理士認定協会理事長に。鈴鹿医療科学大学教授も務める
消費者団体FOOCOMのお誕生おめでとうございます。設立趣意書を拝見してこれこそ今の日本の消費者のための最も必要な団体と感じましてこのネットに連載記事の依頼を受けさせて頂くことになりました。これからしばらく種々の問題について書かせて頂きますので、今回は小生の簡単なプロフィールと考え方を紹介させて頂きます。
まず小生のペンネーム、多幸之介(タコノスケ)と言いますが何故そんな名前ができたかの簡単な説明をさせて頂きます。小生は20代後半の頃から頭髪が少なくなり、一時はそのことにかなり深刻になり非常に悩みました。しかし、こうしたコンプレックスを抱えて人一倍(?)気にしていたことが小生の人間としての考え方を大きく変化させてくれました。
どうしようもないコンプレックスを克服してから、家では自らタコのニックネームで通しておりました。その内にワープロなるものが世の中に現れ、タコを誤ってタコウと打ってしまった時に多幸という漢字が出てまいりました。多幸というのはなかなか良い漢字なのでそのまま小生のペンネームとして多幸之介を用い始めたのがその所以です。
頭髪が少ないという普通の人からはなんでもないと思われるような些細なことでも真剣に悩んだことは悩んだ者にしか分からないと思います。しかし、この経験は非常に多彩かつ多感な学生教育と言う小生の現在の職業にとっても重要な意味を有しており、こうしたコンプレックスの大きな原因を与えられたことに感謝しています。
教育的基盤は薬学の出身で、学んだ大学は岐阜薬科大学です。岐阜薬科大学の大学院を終了後直ちに縁あって愛知県豊明市にある現在の藤田保健衛生大学に就職し、ここで臨床検査技師の教育に33年間取り組みました。藤田保健衛生大学は大きな教育病院を有しており、医学部の臨床医と検査学を通して種々の研究上の付き合いをしていましたが、そんな研究活動を通して健康を支えることにおける「食」の重要性の問題に目覚めてまいりました。
平成10年代に入った頃から健康食品の情報が余りにもいい加減であることに気付き何とかしなくてはと考えるようになっていました。そんな矢先に厚生労働省が、保健機能食品の利用を中心として消費者に健康な食生活をアドバイスするアドバイザリースタッフの養成に関するガイドラインを出しました。そこで、臨床検査技師、薬剤師、管理栄養士を養成している大学の教員が中心となって教育の現場においてアドバイザリースタッフとしての素養を身につけさせて国民の健康に寄与することを計画し、健康食品管理士という認定資格を作り、健康食品管理士認定協会という法人組織を立ち上げました。
この健康食品管理士認定協会の仕事を通して食と健康の問題に取り組んでいるうちに今度は鈴鹿医療科学大学において管理栄養士の教育を行うことになり既に3年を経過し今日に至っています。こうした変遷を通して食と健康の問題に種々な角度から取り組んで、講演会などを全国各地で開催し市民への啓発活動を行っています。
小生が大きく問題にしたいことは、一つは消費者が誤った危険情報に踊らされて食と健康に関する正しい理解をしていないことです。それが、最終的には大量の食品廃棄や、意味のない高価な食品に満足すると言う奇妙な消費社会を作ってしまっています。特に健康と食の安全関係に関しては学者も含めてその情報発信に大きな問題があります。食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品、BSE、環境ホルモン、有機栽培食品、自然食品などに関する情報は非常に問題情報が多いと感じています。
もう一つは管理栄養士の教育を始めてから極最近分かりだしたことですが、健康食品ではなく、健康な食の情報を得ることで確実に病気になることを防いだり、発症してしまった疾患の治癒を促進したりすることができる、と言うことです。がんになりにくい食事、糖尿病の進行を抑える食事、糖尿病にならない食事、メタボから脱出するための食事等々最近の研究は食事と健康および寿命について非常に重要な結論にたどり着きつつあります。
最後に、健康食品の問題も情報がすくないことと、かなり誤った情報が流されていることから消費者はとんでもないことに出会っているようです。トクホを含めての健康食品は近年毎年約2兆円市場と言われております。この額は一般大衆薬の売り上げが7千億円以下であることと比較すると非常に大きな額であることがお分かり頂けると思います。
健康食品の問題点は有効性表示、品質、安全性確保などの問題に加えて医薬品との相互作用があります。こうした問題の根源の一つは日本では健康食品に対して明確な定義がないためにニンジンや豚肉と同じ食品として扱われている点にあります。そして食品だからどんなに摂ってもあまり害はないだろうとか、摂れば摂るほど健康になると錯覚している人が少なからずおられます。しかし、なんでもない健康食品で命を落とすような危険なこともあります。
以上のような分野の問題は現在小生が主催させて頂いている健康食品管理士認定協会の活動を通しても種々重要な情報が入って参りますし、小生自身が問題点として発信する事項もあります。このスペースではそんな情報を書かせて頂こうと考えております。
例えば最近の東日本大震災においても健康食品には直接関係がありませんが、会員に次のような情報提供を行っています。
ただ、科学の世界でも今日の常識は明日の非常識と言うことは多々あります。相当安全なはずであった原子力発電所の今回の一連の動きを見ていると、絶対安全と便利さはどこに線を引くべきであるかという点において随分考えさせられるものがあります。そうした問題にも言及させて頂きたく考えております。どうかよろしくお願い申し上げます。
藤田保健衛生大学で臨床検査技師の養成教育に長年携わった後、健康食品管理士認定協会理事長に。鈴鹿医療科学大学教授も務める
食や健康に関する間違った情報が氾濫し、食品の大量廃棄が行われ、無意味で高価な食品に満足する奇妙な消費社会。今、なすべきことは?