虫愛でる爺
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事
モモアカアブラムシは、花、野菜、果樹、庭木など非常に多くの農作物に寄生する害虫です。日本応用動物昆虫学会が編集・発行したの農林有害動物・害虫名鑑(増補改訂版2006年)で調べたところ、何と63種ありました。カンザワハダニと同数で、全害虫の中で最も広食性でした。
野菜や花に寄生して種名がよくわからないアブラムシは、とりあえずモモアカアブラムシにしておけばいいと言われるほどですが、この数字からなるほどと思います。この言葉には無責任さも含まれますが、実はアブラムシ類は馴染みの害虫でありながら同定は非常に難しいので、仕方がない事情もあります。正確な同定は顕微鏡を使わなければなりませんが、圃場で80%の確率で見分ける方法を紹介します。
モモアカアブラムシのコロニーの中には、緑、黄、赤と体色の違う個体が見られます。黒く見える個体はほとんどありません。緑や赤だけという小さなコロニーもありますが、そのコロニーが大きくなってくると3色の個体が見られるようになります。野菜や花で3色の個体が見られたらほぼモモアカアブラムシでしょう。また、この3色は季節が変わっても同じように現れます。
なお、いくら広食性とはいえ、モモアカアブラムシはイネ科作物、ネギ類では発生しません。このような情報も合わせて、同定をしてみて下さい。アブラムシは農薬抵抗性が発達し防除の難しいところもありますが、同定を正確にすることにより、農薬の選定や圃場やその周辺での生活史を知る重要な情報になります。
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1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ