野良猫通信
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。
東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
畝山 智香子週刊現代の2026年2月16日号に「総力特集:危ない超加工食品」という記事が掲載されています。
https://gendai.media/list/author/wgendai
(最新号の表紙が載っています)
不本意ながらこれに巻き込まれているので釈明と解説をしようと思います。
まず私視点での経緯です。
1月半ばにトクホの実態をレポートするのでトクホ(特定保健用食品)の概要と問題点について取材したい旨の依頼がありました。なぜ機能性表示食品ではなくトクホなのかはわからなかったものの、個別の商品についてではなく一般論を話すこと、陰謀論のようなものはやめてほしい、自分の発言部分は事前に確認させてほしいという条件を出したところ、「事実ベースで広告内容と実態との乖離を読者に知ってもらうのが趣旨で、高橋久仁子先生にも取材する」とのことで1月19日にオンラインでの取材を受けました。
その一週間後くらいには原稿の確認があり、高橋久仁子先生の部分も含めて提示され、一部修正などを行っています。ここまでは問題は感じませんでした。新聞などでは自分の発言部分も含めて事前に確認することは不可能という対応の場合もあるのでそれに比べればいいほうです。新聞でも見出しは記者以外がつけるので事前には何も言えないのが普通です。そしてちゃんと掲載誌も送られてきました。
ただし、その構成は読者の誤解を招くだろうものになっていたため「異議申し立てをします」と記者さんに伝えたうえで、ここで書いています。
表紙には「危ない超加工食品」という文字の下に
寿命を縮める108成分/研究者が指摘「トクホのごまかし」/避けられないならどうする?
とあります。
それぞれが「第1章」「第2章」「第3章」の内容を反映しているのですが、私が認識していたのは「第2章」のみです。この部分だけの記事を予想していました。
実際の記事は以下のような内容です。
第1章で取材先として名前が挙げられているのは、ボストンに住む医学博士の大西睦子氏と食品問題評論家の垣田達哉氏です。ここで添加物が悪いといういつもの誤情報がLancetとロバートF.ケネディJrによって権威付けられたと主張します。見出しには「寿命を縮める108成分」とありますが「着色料」「香料」という雑なくくりや「判定〇(比較的安全)」とされているものも含まれるなどよくわからない表があります。根拠は明示されていないのですが大体いつもの噂レベルの主張です。
第2章が畝山と高橋先生。トクホの効果があるという根拠がしっかりしたものではないということだけを話しています。
第3章は垣田氏と戸塚クリニック院長の村松賢一氏、料理研究家の金丸絵里加氏です。表示されている添加物の数が少ないものを選ぶ、「解毒」に役立つ食材を足す、ハムを湯通しして添加物を減らす、といったあまり意味のないことも含む対策が記載されています。
この並べ方だとトクホを超加工食品の一種とみなしているかのようですが、私も高橋先生も超加工食品の話はしていません。
さらに表紙の右肩部分に「超加工食品・トクホのリスク」という文言があるのですが、トクホの安全性は食品安全委員会によって確認されているということについては取材中に念押ししています。安全性に問題があるものが含まれる可能性があるのはトクホではなく機能性表示食品のほうです。
改めて強調しておきますが、私は超加工食品という考え方そのものに賛同していません。もし取材の際に「超加工食品について警告する特集」の一部であることが知らされていたなら、お断りしているはずです。
Foocom読者なら既にご存じのように、海外に比べて日本では超加工食品の話題は全くと言っていいほど盛り上がっていません。その理由の一つはこの特集記事のように、いつものメンバーによるいつもの根拠のない添加物への難癖つけで終わっているからだと思います。
新しさがない。背景となる肥満の多さや社会・経済的格差、食事への関心などは日本には当てはまりにくいので超加工食品の問題をほぼ添加物だけの話にしてしまっている。いつもの添加物批判だけでは「超加工食品総力特集」というには足りなかったので無理やりトクホをくっつけたのでしょうか?
ただこれは超加工食品という分類の本質をついているともいえます。一見、学術的雰囲気を纏っていますが、超加工食品悪者説は手あかのついた「昔は良かった」という思想や添加物や農薬への無理解による忌避感と動機を共有しています。
Lancetや米国保健福祉省と農務省の公式食事ガイドラインような「権威」が日本の週刊誌と同じレベルであることを週刊現代が提示しているわけです。そして週刊現代は、今は隔週刊になっているようです。
かつては電車の中吊りや通勤中に新聞を読む人たちの新聞広告などで週刊誌の見出しは多くの人の目に触れ、この手の「●●は危険」といった特集が組まれるたびに事業者の方々は心配していたと聞きます。今はほぼ話題にならなくなりました。読者も高齢化しているようです。紙媒体の需要はゼロにはならないでしょうがビジネスモデルは変わっていくでしょう。新聞もそうですが、見出しで煽る競争をするのではなく、実際に役に立つ記事の中身で勝負するようになってほしいと思います。
東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
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