科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

畝山 智香子

東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。

野良猫通信

アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)2025-2030 について(その1)

畝山 智香子

2026年1月7日、Robert F. Kennedy, Jr.長官率いる米国保健福祉省(HHS)は米国農務省(USDA)と合同で、遅れていた「アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)2025-2030」を発表しました。

Kennedy, Rollinsは米国の栄養政策の歴史的リセットを発表、本物の食品を健康の中心に戻す
Kennedy, Rollins Unveil Historic Reset of U.S. Nutrition Policy, Put Real Food Back at Center of Health | HHS.gov
January 7, 2026

DGA 2025-2030はこれまでの栄養学を否定するものになるだろうと書いてきましたが、実際どのようなものなのかについて概要を速報します。関連情報や専門家や各団体の反応などは追って紹介しようと思いますのでその1にしました。

●背景とこれまでの経緯

アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)は、これまでの最新のものは2020-2025年版で、5年に一度改定してきています。
Previous Editions | Dietary Guidelines for Americans
(過去のものは改変されていないと思います)

改変にあたってガイドライン担当のUSDAは専門家を招集して科学的根拠のレビューを行い、その会議や情報収集はできるだけオープンにして一般からの参加も可能な形で準備していました。そして2024年12月には科学助言委員会による報告書が公開されパブリックコメントにかけられました。
Scientific Report of the 2025 Guidelines Advisory Committee | Dietary Guidelines for Americans

これまでのDGAでは、ガイドラインの確定版は、幾分かの調整はされるものの概ね科学的報告書の内容に沿ったものになっていました。
しかしその後政権が変わり、DGAの行方が不透明になりました。

第二次Trump政権で農務長官に任命されたBrooke Rollins長官は、Kennedy長官率いるMAHAを支持していて2025年3月にはDGAの大幅改定を示唆する発表をしています。
USDA, HHS Share Update on Dietary Guidelines for Americans Process | USDA
March 11, 2025

この時点ではDGA 2025-2030は期限である2025年12月31日までには最終版を発表すると言っていました。
その後Kennedy長官からDGAについて「根本的改定になる」「数ページの簡単なものになるだろう」、「4月には発表できる」、「夏には」、「9月までには」、「年内には」といった断片的な情報が出されていました。
そして2026年1月にようやく発表されたわけです。この時点でタイトルのDGA 2025-2030は正確ではなくDGA 2026-2030です。(2030年までこれが有効なのかどうか不確実ですが)

●発表された内容

ガイドライン本文はPDFで10ページと、予定より少し長い?ものになっています。
Dietary Guidelines for Americans, 2025–2030

凝った作りのガイドラインの専用サイトがあり、
Eat Real Food
本文以外に「科学的基礎」「科学的基礎の付録」「一日の摂取量ガイド」などがここからダウンロードできます。
そしてHHSからファクトシート
Fact Sheet: Trump Administration Resets U.S. Nutrition Policy, Puts Real Food Back at the Center of Health | HHS.gov
が発表されています。

プレスリリースで強調されているのは以下です。

  • 全ての食事でタンパク質を優先
  • 添加された糖を含まない全脂肪乳製品を摂取
  • 一日を通して野菜や果物を食べる、丸ごと食べることを重視
  • 肉、シーフード、卵、ナッツ、種子、オリーブ、アボカドなどの丸ごと食品から健康的な油脂を取る
  • 全粒穀物に焦点をしぼり、精製炭水化物は大幅に減らす
  • 高度に加工された食品、添加された糖、人工添加物を制限
  • 年齢、性別、体型、運動量に応じて、正しい量を食べる
  • 水分補給には水と甘くない飲料を選ぶ
  • 健康のためにアルコール摂取を制限

専用サイトで強調されているイラストは、「新しいフードピラミッド」と呼んでいるものです。
Eat Real Food

これまでのガイドラインではできるだけ摂取量を減らすように助言されてきた肉と動物性脂肪を、最も重要な栄養として積極的に食べることを薦めているのが最大の特徴です。
そして加工食品は基本的に排除すべきものとして、許容できる加工としては野菜や果物をそのまま冷凍あるいは缶詰にしたものをあげます。

加工については現在FDAで超加工食品(ultra-processed foods, UPF)の定義について情報募集を行った Ultra-Processed Foods | FDA結果の分析がまだであることとの整合性が気になりますが、このDGAでは高度加工食品Highly Processed Foods(HPF)というものを独自に定義しています。

その定義は「主に食品から抽出した物質(精製糖、精製穀物/でんぷん、精製油など)で作られたあらゆる食品・飲料・あるいは設計された食品のようなもの(engineered food-like item)、および/または工業的に製造された化学添加物を含むもの」となっています。NOVA分類による超加工食品よりはるかに広いものを含み、普通に食べられているパンやパスタも含まれます。
精白した小麦やコメの主成分であるでんぷんは構造的にブドウ糖がつながったものであり、消化されると血糖が上がるので「砂糖と同じ」だといいます。

加工や精製されていない丸ごとの野菜・果物・肉のようなものを「真の食品Real Food」とよび、それ以外は偽物とし、乳製品は低脂肪のものではなく全脂肪のものを勧めます。
そして当然のことながら、食事は手料理をその場で食べるようにと言います。

この昔ながらの家庭料理への懐古趣味と低炭水化物ダイエットやたんぱく質重視のウェルネス業界の最新流行のミックスである食事は、普通の人の食生活や食料供給の現実とはかけ離れています。
しかしそれに対する回答はファクトシートに記載されています。

「Biden政権では健康の公平性equityを重視していたがDEI(多様性・公平性・包括性)は否定すべきものなので健康だけを優先した」とあります。つまりすべての人に安全な食料が十分いきわたるかどうかよりも道楽による理想こそがガイドラインで示すものだということです。これは加工食品を巡る近年の一連の議論の非常にわかりやすい補助線だと思います。

(今回は速報で、今後も続きます。)

執筆者

畝山 智香子

東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。

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