科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

宗谷 敏

油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

GMOワールドⅡ

丸わかり 米国のGM食品表示問題(下)

宗谷 敏

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 米国のGM(遺伝子組換え)食品表示問題について、オーバービューと関連するセクター別に主なイベントを整理している。(下)では、地方自治体、表示推進・反対組織と企業の動きを追う。

<地方自治体(主な動きのみ、状況が特殊なハワイ州を除く)>

 各州状況については2013年10月に本欄で一度整理しているので( 米国各州のGM食品表示法案と住民発議の現状) 、そちらもご参照下さい。

 2012年11月6日 カリフォルニア州のGM食品表示を求める州民投票(Prop.37)が実施され、賛成48.6%、反対51.4%という2.8ポイントの僅差で否決された。投票率は68.68%。

 11月6日 ワシントン州サンファン郡では、GM作物・動物の生産を禁じる住民投票(Prop. 2012-4)が実施され、賛成5,183票 対反対3,329票で可決された。

 2013年1月31日 ワシントン州務長官が、約35万人の請願が提出されたGM食品表示を求める住民投票Initiative 522 (I-522)の実施を認める。投票日は13年11月5日。

 5月10日 ヴァーモント州議会下院は、5月7日に司法委員会を賛成7票、反対4票で通過したGM食品表示法案(H.112)を、賛成99票、反対42票で可決。2014年1月7日から上院が審議を開始。

 6月3日 コネチカット州議会は、自州に隣接する1州を含む他の北東部4州が類似の法案を通過させ、それらの人口合計が2千万人を超えた場合のみ発効する条件付きで、調整粉乳とベビーフードへのGM食品表示法案(H.B.6527)を可決(下院は賛成134、反対3票、上院は満場一致)。

 6月27日 メイン州議会上院は、GM食品表示法案(L.D.718)を可決(下院は6月12日可決)。但し、他の5州が類似の法案を採用するか、1州または複数の州の人口合計が2千万人を超えた場合のみ発効する(因みにメイン州の人口は130万人程度)とし、23年1月1日までに条件が満たされない場合には廃案とする。

 10月2日 オレゴン州議会は、傘下の郡や市による独自GM規制を禁ずるSB863 を議決し、州知事が10月8日に署名。レイン郡とベントン郡のイニシャティブは阻止されたが、既に1月9日に2014年5月のGM栽培禁止住民投票が決まっているジャクソン郡は適用除外。

 11月5日 ワシントン州のGM食品表示を求める州民投票(I-522)が実施され、賛成49%、反対51%という2ポイントの僅差で否決された。

 12月12日 コネチカット州Dannel P. Malloy知事が、H.B.6527に署名。

 2014年1月6日 ワシントン州議会下院で、GMサケなど魚類への表示を求めるHB2143  が提案される。

 1月8日 メイン州Paul LePage知事が、LD718に署名。

 1月8日 ミズーリ州議会上院で、GM食肉と魚類への表示を求めるSB533 が提案される。

 1月8日 コロラド州下院で、Non-GM任意表示の閾値を1%以下とするHB14-1058が提案される。

 1月9日、15日 ロードアイランド州議会下院でGM食品表示関連法案H7042 H7093が提案される。

 1月22日 ニューハンプシャー州下院は、GM食品表示法案(H.B. 660)を賛成162票、反対185票で否決。

<表示推進・反対組織と企業>

 2012年11月8日 カリフォルニア州Prop.37で敗れたJust Label Itキャンペーン、環境NPO Green Americasなどが、消費者の知る権利に基づくGM食品表示を求める全米組織としてGMO Insideキャンペーンを立ち上げ。12月には食品製造大手General Mills社(本社ミネソタ州ミネアポリス)のシリアル「Cheerios」FacebookページにGM成分排除を求める4万通以上の大量投稿を扇動し炎上させた。

 2013年3月11日 339店舗を展開する有機製品主体の食料品スーパーチェーン店大手Whole Foods Market社が、2018年までに全取扱商品にGM自主表示をすると発表。

 6月3日 アイスクリーム販売大手Ben & Jerry’s社(本社ヴァーモント州)が、2013年末まではGM成分を自主表示し、2014年までにGM成分を自社全製品から段階的に排除すると発表。

 6月14日 米国外も含め1,400カ所以上に店舗展開するメキシカンファストフード・レストランのチェーン店Chipotle (Mexican Grill)社が、自社オンラインメニューにGM成分自主表示を開始。

 7月3日 GM成分が含まれるのに「all natural」表示をしたとして、2012年6月5日にカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所へ集団訴訟を起こされていたPepsi Co社子会社Naked Juice社は、2007年9月27日から2013年8月19日までに購入した当該39製品に対し2013年12月17日まで5ドル~75ドルの返金(総額9百万ドル)に応じる和解を発表。

 2014年1月2日 General Mills社は「(Original)Cheerios」 からGM成分(コーンスターチと蔗糖)を排除し、「Not Made with GMO Ingredients」と任意表示すると発表 (本欄1月13日付「企業の勘定と業界の事情~General Mills社と全米食品製造業者協会」の参照を)。

 1月7日 GMA (Grocery Manufacturers Association全米食品製造業者協会)が、FDAに対しGM食品の安全性評価を義務化し、「GMO free」と表示できる任意表示システムの開発をさせて、同時にGM成分を含む製品にも「natural」表示を許すよう連邦議会に請願しようとしているとPolitico紙がスクープ 。

 1月17日 Post Foods社(本社ミネソタ州)は、「Grape-Nuts」ブランドのシリアルがNon-GM Projectによる認証を得たと発表。

 1月21日 GMO Insideは、General Mills社に対し「Honey Nut Cheerios」からもGM成分排除を求める追い打ちキャンペーンを始動。

執筆者

宗谷 敏

油糧種子輸入関係の仕事柄、遺伝子組み換え作物・食品の国際動向について情報収集・分析を行っている

GMOワールドⅡ

一般紙が殆ど取り上げない国際情勢を紹介しつつ、単純な善悪二元論では割り切れない遺伝子組 み換え作物・食品の世界を考察していきたい