科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食の安全・考

超加工食品ってなに?食べてはいけないの?

森田 満樹

キーワード:

最近、「超加工食品」について質問されることがあります。週刊誌等で、摂取量が増えるとがん罹患リスクが増大するとか、避けたい超加工食品ワーストリストだとか、関連記事が最近増えているようです。本当のところはどうなのか、現段階の情報をまとめてみました。

●ブラジルの研究者が提唱した超加工食品

超加工食品とは、ブラジル・サンパウロ大学の研究者らが提唱したNOVA分類The NOVA classificationの、グループ4「Ultra-processed food and drink products」のことを指します。そのまま訳すと「超加工された食品と飲料製品」となるのでしょうが、週刊誌等で「超加工食品」と紹介されており、ここでも便宜上その言葉を使います。

このNOVA分類は、食品を加工の程度によって4つの分類に分け、グループ1が加工度の最も低い食品、グループ4が最も加工度が高い超加工食品に位置づけています。研究者の解説から概要をまとめてみました(下表)。

NOVA分類(筆者作成)

研究者によれば、この分類は「これまでの伝統的な手作りの食事から国際的食料システムの出現によって、高度の加工食品が増え肥満のパンデミックを促進している」という問題意識から2009年に発表したとのことです。「やっぱり手作りのほうがよくて、加工食品はダメだよね」という仮説のもとにつくられた分類と言えるでしょう。

ただし、この分類をよく見るとおかしな点もあります。たとえば牛乳は低温殺菌だけがグループ1となっているが、殺菌温度で加工度の分類ができるのか?保存料を加えた塩味燻製肉がなぜグループ3なのか?パン屋さんでつくられる焼きたてパンでも添加物は使われることもあるのにグループ3に区分されるのか?と、疑問が出てきます。

●パリ第13大学の論文は仮説の域を出ていない

とはいえ、この分類を評価する動きもあり、実際に肥満や疾病のリスクとどう関連するのか研究を行う人たちもいます。その1つが2018年2月に公開されたパリ第13大学等の論文でした。日本では約1年遅れで週刊誌の記事で取り上げられ、「超加工食品」ということばを週刊誌の広告などで見るようになりました。

この論文はイギリスの医学誌BMJ(British Medical Journal)に2018年2月14日、「Consumption of ultra-processed foods and cancer risk」というタイトルで掲載されたものです。大規模前向きコホート研究によって、超加工食品の割合が増加するとがん全体のリスクが増加する可能性があると報告しています。(オープンアクセスはこちら

研究は7年間にわたって行われ、健康なフランス人成人104,980人(男性22%、女性78%)(平均年齢43歳)が対象で、24時間オンライン食事アンケート(異なる食品3,300種類について通常の摂取量を測定するようにデザイン)を少なくとも2回完了した人となっています。

この対象者にがん発症について平均5年以上追跡したところ、食事における超加工食品の摂取割合が10%増えることで、がん全体で12%、乳がんで11%のリスクの上昇と関連していたとしています。なお、前立腺がんと結腸直腸がんとの間には有意な関連はみられませんでした。

論文ではこの結果を説明するために、これまでの研究とも比較したうえで、超加工食品の栄養面の問題や添加物の問題等について仮説を立てています。しかし、いずれも可能性を示唆するもので、確たる結論を引き出すことはできないと観察研究の限界を述べています。また、分類が複雑で誤分類もあるかもしれず追跡機関も短いため、今回はあくまで超加工食品の摂取とがんに関する最初の研究であると位置づけており、さらなる研究が必要としています。

つまり、この研究は超加工食品ががんを引き起こすことを証明するものではありません。週刊誌の見出しは、超加工食品でがんが増えると決めつけていますが、論文はそのような書きぶりではありません。

また、他の研究でも超加工食品を肥満、高血圧、コレステロール値のより高いリスクと関連付けている報告もあります。しかし、超加工食品はエネルギー、脂肪、糖質、ナトリウムが高い傾向にあり、その影響も含めると確たるところはよくわかっていないというのが今の状況です。

●英国では国や他の研究者が解説

さて、この論文が発表されたときに、国際的にもあまり大きく取り上げられることはありませんでした。それは国や他の研究者がこの論文の内容について、きちんと説明したことが背景にあると思います。

論文が発表された翌日の2018年2月15日、英国の国立健康サービス(NHS)が、「超加工食品に含まれる食品は多岐にわたるため、特定の食品ががんリスクの増加原因になっているのか、理由を突き止めるのは困難です」「超加工食品を食べる人の中には、他の点でも不健康な傾向がある人もいます」「がんのリスクを減らしたい場合は、禁煙、果物や野菜をたっぷり含んだバランスの良い食事、アルコールを少なく、十分な運動をしてください」などの情報提供をしています。

また、他の科学者も疑義を唱えています。こういうときは英国のサイエンスメディアセンターのウェブサイトが役に立ちますが、ここでは栄養学研究のイアン・ジョンソン博士が「慎重かつ厳格なデータ収集を用いた大規模な観察研究であるが、問題は、それを使用している超加工食品の定義が非常に広く、不十分であることだ。もし影響があるとしても因果関係が観察されたものを正確に決定することが不可能である」と述べています。

さらにロンドン大学キングスカレッジのトム・サンダース名誉教授は、「この研究は、男性の特定のがん部位に有意な影響はなかったが、男性のほとんどがオンラインの食事記録を提供できなかったため、研究された男性の数は少なかったということ」「超加工食品という用語は、食品品質の観点から定義するのは困難であり、栄養科学者は使っていない」「栄養学的観点からこの分類は恣意的である。工業的に生産された製品は、家庭や職人によって生産されたものとは異なる栄養組成を持つという前提は間違っている」と、やはり否定的です。

●日本の週刊誌のワーストリストが問題

パリ第13 大学の論文はこのように否定的なコメントが相次ぎ、海外では時々話題にはなるものの「加工食品の取りすぎは気をつけようね」くらいの記事で収まっていたようです(一部の健康食品、有機食品業界は盛り上がっていたようですが)。

ところが1年ちかくたって、日本の週刊誌が突然、独自の視点で超加工食品を取り上げ、さらにワーストリストまで掲載しました。そのランキングの根拠として「超加工食品に特徴的な添加物等」として、香料、化学調味料、人工甘味料、着色料、色素、発色剤、増量剤、光沢材、乳化剤、膨張剤、賦形剤、保湿剤、たんぱく加水分解物、転化糖、異性化糖などを選び、市販されている食品のパッケージから、これらが使われた種類の多いもの順に並べています。そこに量の概念はありません。

たとえばワーストにランキングされた総菜パンなどは、具となるハムやソース等に含まれるごくわずかな食品添加物もすべて表示することが基本になるため、どうしても原材料名欄に添加物が多く並びます。この数だけで超加工食品をランク付けするのは不適切だと思います。もちろんパリ第13大学の論文は、超加工食品について使われている添加物の種類でランキングするような内容ではありません。

週刊誌の記事では、添加物を多種類摂ると複合影響があるとして、使われる添加物の数が多いものが危険としているようですが、この点は食品安全委員会がQ&Aで解説しており、過剰に心配することはなさそうです。そもそも日本の食品添加物は国が安全性を評価したものや長年の食経験があるもので国が認めたものだけが使ってもよいとするポジティブリスト制度となっており、安全性については厚生労働省がQ&Aで解説しています。

実際に今回の週刊誌の超加工食品の記事を真に受ける人は少なかったようで、食品企業への問い合わせもほとんどなかったと聞いています。それでも、身近な人にがん患者がいると、このリストを見て「あー、これ食べていた」と辛い気持ちになるかもしれません。超加工食品を避けようとして、かえって偏った食生活になったりすることも心配です。

超加工食品を避けるよりもたいせつなこと、それは「バランスのよい食生活」「野菜たっぷりの食事」「塩分少なめ」の3つ。先月、食生活改善普及員の方から「私たちはこの3つで普及活動をしています」と聞きました。アルコールの過剰摂取も注意が必要ですが、NOVA分類ではアルコール飲料はグループ2で、グループ3には塩分の多い加工食品も含まれます。グループ4の超加工食品だけに気を取られてはいけません。「バランスの良い食生活」は英国のNHSが言っていることと同じで、真実は世界共通のようです。
(森田満樹)

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食の安全・考

食品の安全は消費者の身近な関心事。その情報がきちんと伝わるよう、海外動向、行政動向も含めてわかりやすく解説します。