科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

モスバーガーで、腸管出血性大腸菌O121食中毒発生。O121って? 

瀬古 博子

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長野県上田市内のモスバーガーで、腸管出血性大腸菌O121による食中毒が発生しました。ハンバーガー類、フライドポテト等を食べた4グループ8人のうち、4グループ4人が下痢等を発症。患者便から腸管出血性大腸菌O121が検出されました(長野県2018年9月10日プレスリリース)。

●腸管出血性大腸菌O121って?

ハンバーガー店で食中毒なんて、めずらしい。それに、腸管出血性大腸菌といってもO157ではなく、O121です。どのような菌なのでしょう。そもそも、腸管出血性大腸菌とは?

大腸菌は、動物や人の腸内にも存在する菌ですが、大腸菌のうち、下痢などの症状を起こすものが病原大腸菌。病原大腸菌にもいろいろあり、感染すると、腸管内でベロ毒素と呼ばれる毒素を作り、出血を伴う下痢の原因となるものが、腸管出血性大腸菌と呼ばれるものです。腸管出血性大腸菌はO157が代表的ですが、O121はその仲間。血清型の違いにより分類されており、他にも、O26、O103、O111、O145などがあります。

<潜伏期間と症状>

腸管出血性大腸菌の食中毒では、おおよそ3~5日の潜伏期間ののち、下痢、腹痛、発熱などの症状が起こり、血便が出て、HUS(溶血性尿毒症症候群)などを併発することがあります。HUSを発症した場合の致死率は1~5%とされています。

●原因食品は?

腸管出血性大腸菌は75℃、1分間以上の加熱で死滅します。

ハンバーガーパティは加熱されてから提供されるはず。では、ハンバーガー店での食中毒、何が原因なのでしょうか。今のところ原因はわかっていませんが、人の手や調理器具を介した汚染なのか、それとも野菜類に付着していたのか、気になるところです。

フランチャイズチェーン本部の(株)モスフードサービスは、今後、全国の店舗で衛生管理の再徹底を行うとしています。

●世田谷区の保育園でもO121の食中毒が

ところで、O121の食中毒はあまり聞かないようですが、今年は7月に東京都・世田谷区でも、区立保育園の給食でO121による食中毒が発生しています。

このときは園児19名、職員5名の計24名が下痢などの症状を起こし、保育園給食の検食(冷菜)と調理従事者を含む患者便から、O121が検出されました(東京都2018年7月26日プレスリリース)。

また、2014年には、兵庫県の高校で、飼育されている牛との接触が感染経路と推定されたO121感染事例も起きています(国立感染症研究所2014年12月報告)。

海外では、2016年に米国で、小麦粉に関連したO121及びO26の食中毒が起きています。ミネソタ州など24州から63名の感染患者が報告され、原因の可能性が高いとされたゼネラル・ミルズ社の小麦粉製品は回収されました。

それにしても、なぜ小麦粉製品で腸管出血性大腸菌の食中毒が、と首をかしげたくなりますが、米国の聞き取り調査で、患者38人中19人(50%)が生の自家製生地を食べた、または味見したと報告しているそうです。米国当局も、生の生地を食べたり味見したりしないよう消費者に注意喚起しています。

腸管出血性大腸菌でこわいのはO157だけではありません。でも、安全対策でやることは同じ。調理や食事前の手洗い励行、調理器具や生野菜の汚染防止、十分な加熱など、ごく当たり前のことを大切に!

(2018年9月10日長野県のプレスリリースより)

参考:厚生労働省Q&A

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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