科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

今月の質問箱

粉ミルクの中のトゲ状の異物、その意外な正体とは?

瀬古 博子

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 昨今、ペヤングの害虫、マックチキンナゲットのビニール片、和光堂ベビーフードのコオロギなど、食品の異物混入が話題になっています。
 メディアの報道ぶりは当初、マクドナルド社の記者会見が生中継されるほどの盛り上がりでしたが、混入事案があまりに続出したためか、 “マスコミは「騒ぎすぎ」では? 「異物混入」報道ラッシュに消費者から冷めた声も”(J-CASTニュース 1月8日) といった状況にもなり、 “食品異物混入 企業も消費者も冷静に対応を”(読売新聞1月9日)という論調も出てくるなど、クールダウンしつつあります。

 食品に関連した仕事をしている人にはよく知られているとおり、異物混入はさまざまな原因で起こりうるものです。混入物は、製造工程で使用する器具や機械の部品の破片、原料の袋の一部だったり、害虫が入り込むことも。
 ただし、すべての異物混入が、安全上問題があるわけではありません。例えば、ジュースの中に果実の破片が入っていたなど、食品の成分由来の“異物”もあります。
 異物混入をすべてひとくくりにするのではなく、安全上問題があるのか、商品回収の必要があるのか、公表の必要があるのかなど、個別に整理して考える必要があるでしょう。

 自治体の保健所の窓口には、さまざまなケースが報告されています。
 例えば、横浜市の衛生研究所は写真解説つきの事例集を出していて参考になります。また、東京都は「食品ナビ」で、苦情事例を紹介しています。
 
 異物混入には消費者の側に原因があるものもあります。
 こんな例もあるのかと感心(?)するのは、
粉ミルクの中のトゲ状の異物
電子顕微鏡等で調査したところ、キウイフルーツの毛と推定された(まな板の上でキウイを切ったあと、その上で粉ミルクを作ったときに混入したらしい)

●未開封のペットボトルの内側に虫の抜け殻(東京都の「食品ナビ」の「異物混入」より)
同じ場所に保管されていた他社製のペットボトルの内側にも虫の抜け殻がみられ、虫は製品購入後、保管中にキャップの隙間から侵入したと推定された。

ヨーグルト中の黒い異物
海苔の破片と推定された(ヨーグルトを食べる前におにぎりを食べていた)。

 黒い異物が海苔だった事例など、拍子抜けするような結末ですが、たしかに白いヨーグルトの中に黒い小さいものが出てきたら、「これは何だ?」とあわてるかもしれません。
 すべての異物混入が製造者側に責任があるわけではありません。混入物は何なのか、きちんとした調査や原因究明が大事であることを教えられます。

 とはいえ、多くのケースではやはり食品供給者側に原因があり、対策を講じることにより防げる混入も多いはず。
消費者にとって異物混入は、たとえ安全性に問題がなくても、不快な経験です。「はずれ」をひいたようなもので、返金されたとしても「損した感」が残ります。
 苦情が届けられたら、企業側はきちんと原因究明に努め、再発防止に取り組むことが求められます。

執筆者

瀬古 博子

消費生活アドバイザー。食品安全委員会事務局勤務を経て、現在フーコム・アドバイザリーボードの一員。

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いろいろな場面で食品安全や食品表示の質問、疑問に遭遇します。自分なりに、気になる質問のコタエを探したい