科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

カブラハバチ 野菜を食べるハチがいる

池田 二三高

キーワード:

Athalia rosae imago

カブラハバチの成虫。羽は黒く腹部は橙色。動きは敏捷

Athalia rosae egg

貝割れ葉の中に産み込まれたカブラハバチの卵

Athalia rosae larva

カブラハバチの幼虫。体色は黒く、触れると地上に落ちて静止する

Athalia rosae nabana

カブラハバチの幼虫に食害されたナバナ

 ハチと言えば、怖いムシの代名詞。「ミツバチとマルハナバチは許せるが、残りのハチはお化けと同じくこの世にいない方が良い」と言う人もいるほど、ハチは嫌われています。
 しかし、ハチの仲間は非常に多く、刺して人に嫌われる種類はほんの一握りのグループです。寄生蜂のように天敵として市販され、害虫退治に役立っている種類もあるので、それらは機会を見て紹介したいと思います。

 今回は、幼虫が植物の葉を食べる蜂の仲間、ハバチを紹介します。農作物の害虫になっているハバチも多数あり、カブラハバチもその一種で「蕪の葉を食べる蜂」の意味です。アブラナ科野菜を栽培すると、4月から11月までどこでも発生が見られます。

 カブラハバチの成虫は葉の組織内に産卵しますが、発芽直後の貝割れ葉も産卵対象になるので、苗の時から被害が早くも発生します。幼虫は真っ黒で、この食痕は何だろう、と葉をめくったわずかの刺激でもポロリと地面に落ち、丸くなって動きません。黒くて動かないムシは簡単には見つかりません。何とこれが、カブラハバチの天敵の攻撃から身を守る方法です。

 幼虫は黒いことから「ナノクロムシ」とも呼ばれ、青虫(モンシロチョウの幼虫)と同じ時期に発生するのでガやチョウの仲間と考えられちですが、れっきとしたハチの仲間です。幼虫の腹部をようく見ると、総ての腹節に脚があり、これがハバチ類の特徴です。

 成熟した幼虫は地面の浅いところに潜って土繭を作って蛹化します。そのため、青虫などと異なり卵や蛹が人目にふれることはありません。いつの間にか現れ、いつの間にか姿を消してしまう害虫だといわれるのも、こうした理由です。

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執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ