九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。
消費者委員会・原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会の第6回会合が、7月6日(水)に開かれた。本調査会は加工食品の原料原産地表示の拡大を進めるに当たり、義務対象品目を制定する際の基本的な考え方などを検討するため、平成22年12月に消費者委員会食品表示部会の下部組織として設置された。6回の審議を経て報告書が示されたが、原料原産地表示に対する基本的な考え方の羅列にとどまり、意見は最後までまとまらなかった。
報告書は、(1)基本的な考え方の整理(2)目的と進め方(3)義務対象品目の選定要件の考え方(4)新たな表示方法の実効性(5)原料原産地表示義務対象品目の選定方法(6)食品表示に関する一元的な法律の制定に向けた取り組みの中でさらに議論を深めるべき課題で構成されている。
生産者側の委員が「現状では輸入と国産の原産地による品質の差異はあいまいで、品質を決めるJAS法で原料原産地表示の拡大を進めること自体が誤りである」と主張。報告書の最終ページには「平成24年度中の法案提出を目指して検討が行われている、食品表示の一元化の法体系の中で、現行のJAS法にとらわれない幅広い議論が行われることを期待する」と一文が入れられた。
議論は平行線のまま結論が見いだせず、今後消費者庁で検討が開始される食品表示の一元化の中で、再び議論が行われることになった。
報告書の最終案は座長に一任され、この議論を踏まえて7月27日の食品表示部会、8月の消費者委員会で検討することになる。当日の配布資料、報告書案は消費者委員会ウェブサイトの原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会のページで公開されている.
加工食品の原料原産地表示は、平成12年に漬物やわかめなど個別品目ごとに義務化されて以来、10年ちかくにわたって対象品目が拡大されてきた。実効可能性のある品目はほぼ義務化されており、これ以上の拡大は難しい。これまでの議論では「さらに拡大すべき」という意見と、「消費者はそこまで望んでいない。表示が見づらくなる」という意見の二手にわかれ、最後まで歩み寄りは見られなかった。
これまで10年越しの議論の中で、その進め方を巡っての報告書はこれで4本目である。しかし、今回の報告書のように具体的な提案が無いケースがあっただろうか。「さらに検討を進める必要がある」という文言ばかりが目立つ内容だ。6回も議論して、結論は先延ばし。今回、委員からは「この調査会は何だったのか」といら立ちの声があげられたが、それは傍聴者のセリフでもある。(森田満樹)
九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。