野良猫通信
国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。
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東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
畝山 智香子アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)2025-2030 について(その1) – FOOCOM.NET
の続報をお伝えします。
まず関係者の反応と驚きの政府広報について。
2026年1月7日のプレスリリースや記者会見のあと、いろいろな団体や個人がDGA 2025-2030について意見などを公表し、報道もされています。
そのうちの主なものを紹介します。
最も食事ガイドラインに関係の深い栄養士や栄養学者の団体である米国栄養食事療法学会Academy of Nutrition & Dieteticsからの声明
Academy Statement on 2025-2030 DGAs Release (January 7, 2026)
では、
については支持できるものの、以下の内容については問題があると指摘しています。
この学会の声明が栄養学の専門家のコンセンサスだと思います。
これに近いものとして米国心臓協会(American Heart Association; AHA)も類似の声明を発表しています。
New dietary guidelines underscore importance of healthy eating | American Heart Association (January 7, 2026)
新しいガイドラインはアメリカ人の心血管系疾患のリスクをあげる可能性があることを指摘しています。
これら公的団体の声明より率直に批判の声をあげているのが民間団体CSPI(Center for Science in the Public Interest)です。
「新しい食事ガイドラインは科学を覆し混乱の種をまく」
New Dietary Guidelines undercut science and sow confusion | Center for Science in the Public Interest (By Peter Lurie, MD, MPH Updated: January 7, 2026)
CSPIは食事ガイドライン科学助言委員会の報告書の内容がそのまま採用されていた場合のガイドラインを作って公表しています。
20260107_CSPI_uncompromisedDGA_report_4_FINAL.pdf
CSPIは食用合成色素の禁止などでは現政権を称賛していましたが、栄養政策に関してはずっと反対していました。
やや微妙な声明を出しているのが米国医師会です
「米国医師会は食事ガイドラインを称賛し栄養へのコミットを発表」
AMA applauds Dietary Guidelines, announces commitments on nutrition | American Medical Association (Jan 7, 2026)
一般的な医師はこれまで栄養については専門外という立場でしたが、MAHAアジェンダによって医師が患者に食事を処方できるようにすることになっています。つまり権限の拡大、医師という職業でできることが増え、収入の増加が期待できるので、概ね賛成の立場のようです。
AHA(米国心臓協会)のような専門医の学会は治療に与える悪影響をリアルに認識できるのですが、専門外の医師のほうが多くなると反映されないのでしょう。それで栄養については少し聞きかじった程度の医師が患者に「処方」するのがこの新しいガイドラインかと考えると、アメリカ人が今より健康になるとは予想できませんが。
もちろん代替医療の推進団体などは歓迎のコメントを出しています。
そして2026年1月8日にはホワイトハウスが、メディアや専門団体のコメントを集めて発表しました。
WHAT THEY ARE SAYING: Trump Administration Puts Real Food First in Dietary Guidelines – The White House
いつものように自分たちにとって都合のいい意見を集めているのですが、驚くのはその恣意的引用を隠そうともしないところです。
例えばAHAの発表も「このガイドラインを歓迎・称賛する」という文脈で紹介されています。
AHAの発表したコメントは、栄養食事療法学会と同様に、まず最初にこのガイドラインの中に残された科学助言委員会の推奨に従った部分を指摘してそれはいいことだ、と認めたうえで、でもこれとこれは問題がある、と指摘する形式になっています。重要なのは後半の部分です。公式の文書や丁寧な抗議文ではよく使われる文章の構造です。
ところがホワイトハウスの発表では後半部分をカットして、前文の修辞部分だけを抜き出しているのです。政府から資金提供を受けていたり、敵対者とみなされると嫌がらせをされる可能性があると考えられる場合の抗議文の言葉遣いや文章が遠慮がちになるのは当然ですが、それをいいことに印象操作を行っているわけです。
Trump大統領が引用元の発表まで遡って全文を確認するとは思えないので、大統領は本当にみんなが賞賛していると認識している可能性があります。大統領の側近はこれまでそういうやりかたで一貫してきたし、これからもそうなのでしょう。
そして米国HHSの上級アドバイザーであるCalley Means氏の新しい食事ガイドラインを勧めるXへの投稿の一部が図のようなものです。

某社のハンバーガーセットを「偽物の食品」と呼び、自分で作った方が安いと主張する。値段や栄養について事実と違うという指摘が寄せられても全く気にしていないようです。
(2) Calley Means on X: “REAL food is more affordable than fake food. https://t.co/Bng5Ylvpx1” / X
誤解のないように。勧めているのは右側のほうです。
これまでのファストフードのほうがましだった、と言われる時代が来ることを予言するかのようなイメージです。(その3に続く)
東北大学薬学部卒、薬学博士。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長を退任後、野良猫食情報研究所を運営。
アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)2025-2030 について(その1)
アメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)2025-2030 について(その3)科学はどこへ? 国内外の食品安全関連ニュースの科学について情報発信する「野良猫 食情報研究所」。日々のニュースの中からピックアップして、解説などを加えてお届けします。