科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食の安全・考

食品リコール報告制度 スタートしてわかったこと

森田 満樹

2021年6月1日より、厚生労働省のウェブサイトで食品の自主回収(リコール)報告制度が始まりました。全国から届出された食品リコール情報がこのデータベースに集まり、公開されています。食品衛生法関連はもちろん、消費者庁所管の食品表示法関連の届出もこのデータベースで見ることができるようになりました。

●フグが混入した真アジの自主回収を調べると…

たとえば最近、スーパーであじのパックにフグが混入して、リコールされたニュースがありました。全国のどこで自主回収されているのか、このデータベースで調べることができます。ここで「食品衛生法違反」「CLASS1(健康への危険性の程度、CLASS1が一番高い)」にチェックを入れて検索すると9月9日時点で6件でてきて、そのうち3件がフグ混入案件でした。(商品名「あじ」で検索してもOKで、この3件が出てきます)

厚労省ウェブサイトの食品リコール「公開回収事案検索」より一例(9月9日、食品衛生法違反、CLASS1で検索した画面で、左側の一部のみ切り取ったもの)

1件ずつ、左の詳細ボタンを押すと、いつ、どこで、だれがどのくらい販売して、健康の危険性の程度、今まで何件回収できたのか等の詳細情報が出てきます。リコールされた商品写真を見ると、アジだかフグだか見分けがつきにくいこともわかります。

食品は安全に食べられることが大事で、食品事故やリコールなどないことが一番です。しかし、衛生管理の不備やシール貼り間違いなどで、販売者や製造者がリコールをする事態が起こることがあります。その時はすぐに消費者に「食べないで」と伝えるのが重要で、その情報は社告、ニュースリリース、店頭告知などで公開されますが、消費者に届かないこともあります。

どんな商品がリコールされているのか、消費者にとって安全にかかわる大事な情報は国が責任をもって集めて公開してほしいと、以前からそう願ってきました。ようやく改正食品衛生法に盛り込まれ、食品表示法も改正されて実現したのが本制度です。たとえば、食物アレルギーの方が、現時点でどのような食品がアレルギー表示の間違いでリコールされているのか、このサイトでもれなく調べることができますので、ぜひ、活用してもらいたいと思います。

●サイトがわかりにくいなど、課題いろいろ

ところが制度がスタートして3カ月、消費者から見てどうもサイトがわかりにくい、使いにくいといった課題も見えてきました。

【課題1】 サイトの場所がわかりにくい

このデータベースに行きつくためには、厚生労働省トップページから「テーマ別に探す」で「食品」に入り、スクロールして、そこから「食品衛生申請等システム」にたどりつかねばなりません。そして「一般の方はこちら」をクリックして、ようやく「食品リコール」のメニューが出てきます。

続いて「食品リコール」の下の「公開回収事案検索」をクリックして、データベースを出します。ここには、届出年月日の期間や商品名など、いくつもの入力ボックスが出てきます。検索条件が明確な場合は、文字やチェックを入れて検索ボタンを押下します。なにも入力しないで検索ボタンを押下すると、現時点で自主回収されている食品が公開年月日の新しい順に出てきます。

サイトの場所がわかりにくく、ここまでたどり着くのが大変です。消費者向けにチラシが作られており、「どこで確認できるようになりますか?」という問いに「オンライン上のシステムで確認できるようになります」として、食品衛生申請等システムのQRコードを示しています。ここからアクセスしてもよいのですが、このチラシもサイトの奥のほうにあり、見つけにくいのが残念です。

同じような自主回収サイトでも、医薬品のサイトは見やすいです。年度ごとにクラスごとの情報がまとめられ一覧でき、トップ画面にサイトの利用にあたっての留意事項やクラス分類の説明もあります。せめて、厚労省のウェブサイトの「食品」のところに「リコール情報はこちら」とか、リコール情報の下に「サイトの利用にあたっての留意事項」の説明があればいいのに、と思います。

【課題2】システムの使い方がわかりにくい

さて、システムの検索画面で自主回収案件を出したら、個別のデータをみていきましょう。案件ごとに、「健康への危険性の程度(CLASS)・回収の理由・届出年月日・整理番号・商品等の一般名称・商品名・食品等の特定情報・管轄都道府県名・管轄保健所名・届出者名・回収担当名・委託を受けた者名・製造所名」の項目が出てきます。左側の「詳細」をクリックして内訳をみると、商品写真や回収理由の説明等の情報が出てきます。

最初に「健康への危険性の程度(CLASS)」が出てきます。本制度はリスクに応じたクラス分類が導入され、消費者にどのくらい危険なのかが、一目で伝わるようになりました。この分類は食品衛生法が3分類食品表示法が2分類で、いずれもCLASS1がもっとも健康被害のリスクを高くなっています。検索の際にCLASS1だけチェックを入れれば、リスクの高い回収情報だけ見ることもできます。

次に「回収の理由」があります。この欄は、食品衛生法か食品表示法か、どちらの法律に関連してリコールしたかが示されます。「食品衛生法違反」「食品衛生法違反のおそれ」「その他(食品衛生法)」「食品表示法違反」「食品表示法違反のおそれ」「その他(食品表示法)」の6項目のどれに当たるかが書かれます。具体的な回収理由は、詳細情報を見るとでてきます。

前述のフグ混入の真アジは、食品衛生法違反で、リスクが高いのでCLASS1にあたります。そこを知っておけば、検索条件で絞り込んでほしい情報をすぐに見つけることができます。

このように、消費者が検索システムを活用するためには、自主回収報告制度の仕組みをある程度理解しておく必要もあります。制度について、厚労省の説明会消費者庁の説明会も開催されてはいますが、その内容は一般消費者に向けとは思えません。消費者の健康被害防止に役立てるためにも、システムの紹介、クラス分類の説明などがほしいところです。

●届出数がめちゃくちゃ多く、食品ロスに配慮されない案件も目立つ

ところで、制度がスタートして3か月間でどのくらい届出がされたのでしょうか。おそらく500件以上だと思います。ウェブサイトは、自主回収が終了したら2週間後に削除され、新たな届出がどんどん加わるため、正確な累積数がわからないのです。

ちなみに6月前半の届出数は40件くらいでしたが、徐々に増え、8月後半の届出数は100件を超えています。8月は多い日で1日15件の届出が公開されています。これまで食品リコールとして民間サイト等で公開されているのは年間で1000件程度だと思っていましたが、倍以上になりそうです。

内訳をみると、食品表示法関連が7割以上を占めます。原因も様々で、シールの貼り間違い、貼り忘れ、印字ミス、なかみ(スープ)の入れ間違いなど、現場の管理ミスなどが目立ちます。シールの貼り間違いが原因でアレルゲンの欠落による食品表示法違反のものが多く、スーパーの総菜など対象品が1、2品でも届出されている事例もあります。

制度がスタートしてみると、これまでは公開されてこなかった小さな案件も届出され、表に出なかったような事例も可視化され数が膨大になっているように見えます。実態が把握できるという点では良いのかもしれませんが、データベースに掲載される情報が多すぎて大事な情報が埋もれてしまいそうな点が気になります。

たとえば、9月9日現在で自主回収のものを調べると、315件出てきます。届出の中には法違反のおそれも健康影響のない案件も含まれ、過剰な自主回収と思わざるを得ないものが散見されます。たとえばハーブティーで「異物(虫の死骸)混入が1件確認されたため」回収した事例など、他には確認されていないのに大量に廃棄されるのはもったいないと思います。

新制度の創設にあたって、厚労省の施行通知も、消費者庁の施行通知も、過剰な食品ロスとならないように努めると明記されているのですが、結局のところ自主回数するのは企業判断に委ねられます。事業者が申請システムに届出すれば、このデータベースに掲載されます。こうした案件が増えると、本当に気を付けるべきリコールが埋もれてしまわないか心配です。

何だか文句ばかり言っているようですが、それは新制度への期待の裏返しでもあります。消費者への被害未然防止はもちろんのこと、食品事業者がリコール事例を参考に衛生管理、商品管理を見直すことにつながれば、食品安全のレベルが一段と向上することになります。どのようなリコールが届出されるのか、これからも注視したいと思います。

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食の安全・考

食品の安全は消費者の身近な関心事。その情報がきちんと伝わるよう、海外動向、行政動向も含めてわかりやすく解説します。