GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
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2006年に米国のダイズ栽培面積の93%(GMダイズの作付面積は89%、08年には92%)が除草剤グリホサート(米Monsanto社の商品名ラウンドアップ)の適用を受けた。識者が憂慮する農業におけるモノカルチャー化である。当然、耐性雑草の問題が浮上しており、特に南部の農家においては深刻な問題となりつつある。ことわるまでもないが、雑草の耐性問題はグリホサートやGMダイズに固有の問題ではない。どのような優れた農薬でも耐性生物発生とのイタチごっこであることは、農業史が証明している。では、米国の農薬業界は、この問題に対し現在どのようにして立ち向かおうとしているのか?
http://www.agriculture.com/ag/story.jhtml?storyid=/templatedata/ag/story/data/1238074882864.xml
TITLE: New soybean weed control technologies coming
SOURCE: Agriculture Online
DATE: March 26, 2009
米国の農業関連産業による年次商品展示会と教育プログラムを兼ねる第13回the Commodity Classic が09年2月26日から28日まで、テキサス州グレープバインで開催された。上記は、そこにおける南イリノイ大学の雑草学者Bryan Young氏によるメディアセミナーの概要である。
「5年ほど前からのグリホサートへの過度の依存は耐性雑草の発生や耐性種子への変化を生み出し、ラウンドアップレディー除草システムはその価値のいくぶんかを失いました。除草剤耐性雑草は新しい問題ではありません。90年代初期に、イマゼタピルのようなALS(アセト乳酸合成酵素)阻害型除草性剤の広範な使用が、その後の10年間に耐性雑草を生み出しました。
単一除草剤への依存が、グリホサートでも繰り返され、International Survey of Herbicide Resistant Weeds Web site のグリホサート耐性ヒメムカシヨモギが、現在500万エーカーあるいはそれ以上の米国耕作地に出現しているだろうという指摘に注意すべきです。その懸念は、08年の南イリノイ州農薬販売業者の調査によって深刻化しました。
数年前、我々はどこであろうと有意な耐性雑草密度や頻度を見いだしえませんでした。グリホサートは、かくも素晴らしいツールであり、我々はそれを使い続けるでしょう。しかし、我々には新しい農薬原体と併用するための除草剤が必要です。ここに、新しいダイズ雑草防除ツールを含むいくつかのリストがあります。
2009年:独Bayer CropScience社が今年発売するリバティーリンクダイズは、除草剤イグナイト(有効成分グルホシネート)と組み合わせて利用されます。Monsanto社も、ラウンドアップレディー2イールドダイズを今年発売します。この新しいバージョンは、グリホサートによる素晴らしいワイドスペクトルな雑草コントロールを提供し、旧来のバージョンに対し7%から11% の反収増加をもたらすと同社は説明しています。
2010年:独BASF社は、Kixor除草剤の導入を計画しています。ダイズにおいては、この PPO(プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ酵素)阻害剤を、グリホサートと組み合わせてワイドスペクトルな速効除草剤として使うことができます。Kixorは、エーカー当たり1オンスの使用により、ダイズ作付け前の7日間で大きい雑草をコントロールできます。それに、Kixorは種子側の(除草剤耐性)トレイトを選ぶことなく使用することができます。
2011年:米Pioneer Hi-Bred社と親会社の米DuPont社は、2年でダイズに最適の オプティマム・GAT (グリホサートとALS阻害剤の影響を受けない)トレイトの発売を計画します。同社は、そのグリホサート耐性がグリホサートを無害な代謝物質に分解すると言います。
それは、Monsanto社のラウンドアップレディーのトレイトとは異なった機能なので、ダイズ生産者 にもう1つの選択モードを与えます。ALS(アセト乳酸合成酵素)除草剤を除草剤グリホサートと補完的に組み合わせることで、双方の除草剤耐性雑草に対応し、よりワイドスペクトルな雑草コントロールが可能になります。
2013年:Dow AgroSciences Technology (DHT)が、米Dow AgroSciences社からダイズのために予定されています。この組み合わせは、2,4-D のようにフェノキシオーキシン耐性を優れた特徴としています。これらの成分はグリホサートを補完して、そしてグリホサート耐性雑草をコントロールするでしょう。
2014年:Monsanto社は、ラウンドアップレディー2イールドダイズにジカンバ耐性を与えることを計画(訳者注:訳者前稿参照 )しています。2,4-D と同じように合成オーキシンのジカンバは、もう1つの選択モードを農家に与えるでしょう。しかし、ジカンバ耐性を持たないダイズも含めて、ジカンバに敏感な他作物への対策は必要でしょう。Monsanto社の科学者が、この問題に取り組んでいると述べます。
『除草剤適用のタイミングは同じように重要です。ラウンドアップのように丈が高い雑草を容易に枯らすことがジカンバではできません。標的を4インチかそれ以下の雑草に絞って、ジカンバを適用するのが理想的でしょう』
Bayer CropScience社は、イソキサフルトール(商品名バランス)耐性ダイズにも取り組んでいます。 イソキサフルトールの HPPD(4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ)抑制剤方式はトウモロコシ除草剤では普通ですが、ダイズには使われてきませんでした。これは、ダイズ農家にもう1つの選択肢を与えるでしょう。
イソキサフルトールが発芽後のグリホサート適用あるいは従来のダイズ除草剤と組み合わせて使うことができます。同社関係者は、2016年までにグリホサート、グルホシンートとイソキサフルトール耐性のスタッキング(掛け合わせ)を狙っていると述べました。
グリホサートのみのダイズ雑草制御プログラムへの耐性雑草出現は、雑草処理を大いに複雑にし、エーカー当たりの努力とコストを上昇させるでしょう。しかし、救いは新しい雑草防除戦略が、耐性種子への変化をおそらく減少させるだろうことです。
雑草のシフトは、おそらく起こらないでしょう。なぜなら新技術は、生き残った雑草への除草剤に対するフォーカスと発芽後の処理のために可能なタンク混合で、多角的な雑草マネージメントシステムを必要としますから。 我々は、すべての雑草防除をたった1つの除草剤では行わないでしょう」(記事抄訳終わり)
筆者も、グリホサート耐性雑草問題を本稿でもしばしば指摘してきたが、農薬各社もいろいろ対策を考えている実態を示す記事を紹介した。これらのうち他社による対策のほとんどはグリホサート(Monsanto社のラウンドアップ)を認め、その補完を目指している事実は、ラウンドアップの代替性のない優秀さを雄弁に物語っている。
安定的食糧供給に責務のある業界や農家が、このかけがえのない宝を少しでも長持ちさせようとする実業の世界での努力と、固有の問題ではない耐性雑草が出たから全部止めてしまえという中傷か、いい加減なラットスタディの仮想リスクによるメディア操作しか対案のないお気楽な一部の反対運動とを比べてみていただきたい。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)