GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
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Wabash Collegeは、米国インディアナ州にある名門私立大学である。ここで2007年3月14日、「農場、科学と社会」と題された講義が行われた。各員講師は、現在米国Monsantoの国際規制部門でたんぱく質の科学を専門とする研究者だが、01年のMonsanto入社前に17年間University of Arkansas Medical Schoolで食品アレルギーを研究し、教鞭をとってきた。例外もあるが、大学の先生は話が巧みで面白い。ということで、今週はこれを読んでみる。
参照記事1
TITLE: Scientist Cites Ethical Imperative for Modified Crops
SOURCE: Wabash College, by Steve Charles
DATE: March 16, 2007
「公衆は複雑な真実より、むしろ単純な嘘を常に信じるだろう」Gary Bannon博士は、Monsanto社のGM作物に関する公衆の恐れを、フランスの政治思想家Alexis de Tocquevilleの警句により要約した。
「もちろん、私はMonsanto社から来た。しかし、ここでの私の目的は皆さんに科学的な見解を提案することだ」科学ベースのアプローチは、GM作物の討論においてしばしば失われる。「科学的議論が政治的議論に変化した」とBannonが、GM作物の使用をめぐるEUでの戦いを引合いに出して言った。
Bannonは、Monsanto社のGM作物?病気、害虫、雑草に抵抗性を持たせたり、食物の栄養や品質を改善したりするためにゲノムレベルにおいて変更された植物?に対する恐れには理由がないと強調する。
「我々がこれを始めてから10年間、臨床的な文献にされた(GM作物により引き起こされた)否定的な影響がなかった」と、Bannon が説明する。「我々が用いる安全性チェックは、GM作物を安全に保つ。私はすべてのGM作物が必ずしも安全であるとは信じない。しかし、我々がGM作物に課すプロセスを経てきたものは安全だ」
Bannonは科学的事実と公衆の認識とのズレについて、多くの説明をおこなった。宇宙科学者Carl Saganの言葉を引用してBannonは述べる。「我々は、ほとんどの決定的要素が科学と技術に大きく依存する文明社会を構築した。同じく我々は、ほとんど誰もが科学と技術を理解しないようにしてしまった。これは大惨事のための処方箋だ」
「我々は、社会がこの技術を使うことができるような装備をしてこなかった。人々は利用可能な情報に基づいて、批評的に技術革新を評価することができない。そして、時にはありあまる情報がある」
BannonはGM作物の安全性を攻撃しているインターネットサイトを指摘した。「誰もがどんなことでもウェブサイト上にアップできる」彼がこのようなサイトにより行われた非難に起因する膨大な数の電子メールメッセージを受け取っていたことを付け加えて言った。「それは異なったグループによって繰り返し主張されるまったく同じ古い議論だ。そしてそれは査読を経ていないか、信瀬できる科学ではない」
1990年代初頭にGM作物が導入されたとき、公衆を教育しなかったことに対して、Monsanto社が部分的に悪かったことをBannonは認めた。「最初に我々は世間知らずでありかつ傲慢でさえあった。我々は科学が事実を語るだろうと想定した。しかし、the Union of Concerned ScientistsやConsumer Union、Greenpeaceのような団体が健康と環境両面でGM作物の安全性に疑義を呈するという状態から、Monsanto社が逆襲に出たことよって火に油を注いでしまった」
Bannonは、国連WHO(世界保健機関)やFAO(食糧農業機関)による研究と、GM作物使用を支持しているILSI(国際生命科学研究機構)を引用した。「我々は査読を経たジャーナルに我々の研究を発表し、学界の中で働く」と、多くのGM作物批判者との対比についてBannonが言及した。そしてBannonの仕事は、これらのグループによる議論を、査読を経た科学により逐一反論することを含む。
Monsanto社は、農民から消費者まで同じようにそのフォーカスを拡大している。「我々のGM作物の第一世代は、農民に役立つようにフォーカスを絞った」と彼は、栽培者にコスト軽減と反収増をもたらした害虫抵抗性や除草剤耐性のダイズとトウモロコシについて述べた。しかし、第二世代GM作物は、高リジントウモロコシやオメガ3脂肪酸を含むダイズなど消費者のための明確な利益を含む、とBannonが言った。
世界の人口が増加する中で利益と安全を考慮して、GM作物使用を拡大するための「倫理上の緊急性」についてBannonは主張した。しかし、世界的な食糧不足や類似した危機が現在GM作物に反対している国への受け入れを導くのではないかという質問に、Bannonは懐疑的だった。「危機が人々の心を変えると私も思いたい。しかし、2年前米国が飢饉に喘ぐアフリカの国に寄付したGM作物が拒絶された。GMだからという理由から彼らはそれを拒絶し、その結果人々が死んでいった。潮向きは変わりつつあるが、それはまだ長い戦いであるだろう」(抄訳終わり)。
広いスコープと基本を押さえ、反省も含む論旨の明快さは、推進派なら規範とすべき内容だろう。Monsanto社は、大学にまで洗脳に行くのか? と反対派は怒るだろうが、対抗できる人材を出せるのか? 仮にErmakova博士が出かけていっても、科学系の学生からは腐った卵をぶつけられるのがオチだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)