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GMOワールド

低リノレン酸ダイズ油を採用〜Kellogg社のトランス脂肪酸対策

宗谷 敏

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 シリアルとスナック大手である米国Kellogg社は、来年早々からトランス脂肪酸削減対策として、一部製品に「GMダイズから得られたダイズ油」を使用するだろう、と12月9日公表した。AP他が伝え、米国の国内紙はこの記事をこぞってカバーした。

参照記事1
TITLE: Kellogg to Use Genetically Modified Oil
SOURCE: AP
DATE: Dec. 9, 2005

 引用記事は、全国紙的性格を持つUSA Today紙のAPカバーだ。この記事自体間違えではないが、誤解を招くリードと内容が多少気になった。このダイズはMonsanto社のVistiveブランドであるが、なにもリノレン酸を減らすためにGM技術が使われている訳ではない。

 トランス脂肪酸問題とVistiveのことは去年一度書いたので、そちらも参照願いたいが、Vistiveは交雑育種で開発した低リノレン酸ダイズであり、除草剤耐性を付与してラウンドアップレディーダイズに仕立てるからGMダイズになる。

 だから、Kellogg社が今までダイズ油を使用していれば(していないとは考えにくい)、それは当然ラウンドアップレディーダイズ由来のものであり「GMダイズから得られたダイズ油」のハズだ。したがって、「GMダイズ油」と今さら力む必要は全くないのだが。

 FDAのトランス脂肪酸義務表示は06年1月から発効するため、米国の食品企業はその対策に大わらわだ。ダイズ油からパーム油やヤシ油への代替も目立つが、これら南方系油脂には飽和脂肪酸が多く含まれ、LDLコレステロールを増やすトランス脂肪酸同様それらの大量摂取は心臓疾患(米国での死者は年間50万人以上と言われる)を招くとの説もあり、どっちもどっち状態である。

 ダイズ油などの安定性を増すために硬化させる手段として水素添加が行われるが、この際トランス脂肪酸が発生してしまう。Vistiveダイズは、一般ダイズに7〜8%含まれるリノレン酸を3%以下に押さえることにより、水素添加を軽減させる働きがあるとされる。

 Monsanto社と契約してVistiveダイズ油を販売する製油業者の最大手は、Cargill社だ。06年には最大15万エーカー(約6万ヘクタール)のVistiveダイズが契約先農家で栽培されるという。仮に04年の平均反収(エーカー当たり42ブッシェル)、平均油分(18.7%)で計算すれば、販売されるVistiveダイズ油は、約3万2千トンといったところだ。

参照記事2
TITLE: Cargill to Process Monsanto’s VISTIVE(TM) Low-Linolenic Soybeans
SOURCE: Cargill Inc.
DATE: Oct. 6, 2005

 低リノレン酸ダイズ油全体では、05年8千万ポンド(約3万6千トン)、06年4億ポンド(約18万1千トン)という供給予測もある。APの記事にもあるようにDupont社とBunge社のジョイントベンチャーもVistiveと同じコンセプトのNutriumを開発中で、Kellogg社は07年からはこれも使いたいと述べている。

 Kellogg社報道ではいささか力みすぎの観があるAPに比べて、Reutersはさすがに落ち着いており、その記事中にGMというコトバは一切使われていない。

参照記事3
TITLE: Kellogg touts soy oil alternative to trans fats
SOURCE: Reuters by Nichola Groom
DATE: Dec. 9, 2005

 この記事で興味深いのは、終わりの部分にあるKellogg社の同業他社からのコメントだろう。Kraft社は、ダイズ油、カノーラ油、パーム油を含めていろいろの油種を使うが、トランス脂肪酸が変成する際に飽和脂肪酸レベルが増加しないことを確認すると述べている。

 また、Frito Lay社はポテトチップの揚げ油を、水素添加した油からヒマリワリ油やコーン油に代替したという。Tyson社はノーコメント、シリアル販売分野でKraft社の最大のライバルであるGeneral Mills社は、製品のトランス脂肪酸を識別する努力を支持すると述べている。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

<筆者後記>その後、APはアップデート版でタイトルを”Kellogg to Use Genetically Modified Oil”から”Kellogg to reduce trans fat in products”に変更しました。