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GMOワールド

GM受容に動き出したEU諸国〜ドイツとスウェーデンの場合

宗谷 敏

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 欧州委員会のGM食品認可作業は、相変わらず足踏みを続けるEUだが、一方、加盟各国レベルでは、GM受け入れに向けたさまざまな動きが垣間見られる。先週はドイツとスウェーデンに興味深い変化があった。

参照記事1
TITLE: First ever GM plants approved in Germany
SOURCE: AP
DATE: Dec.15, 2005

 ドイツ連邦種苗登録局は、3品種のGMトウモロコシがドイツ国内で栽培されることを承認するだろうと12月14日に発表した。今までは、ほかのEU諸国(スペインおよびフランスと推測される)が承認したGM種子のみが販売を許されていたが、ドイツとしては初のGM種子の公認となる。

 3品種は、コーンボーラー(アワノメイガの幼虫)に抵抗性を有するMonsanto社とPioneer Hi-Bred 社のGMトウモロコシとあるので、Mon810系統が含まれるであろうことは推測できるが、それ以外は不明である。

 フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガルおよびチェコ共和国で今年既にコーンボーラー抵抗性のGMトウモロコシが栽培された。ヨーロッパの農家のGM種子に対する興味は強く、期待も大きい。Monsanto社は、ヨーロッパにおけるGMトウモロコシの潜在的需要を見積もっている。

参照記事2
TITLE: Monsanto sees 37 mln-acre europe biotech corn market
SOURCE: AgBioView & Bloomberg
DATE: Dec.12. 2005

 これによれば、除草剤耐性のRoundup Readyトウモロコシは2400万エーカー、コーンボーラー抵抗性は800万エーカー、ルートワーム抵抗性が500万エーカーと試算されている。これらの合計では3700万エーカーとなるという。

 一方、スウェーデンでもGMを巡る新たな動きが注目される。農家と畜産最大手の共同組合であるSwedish Meatsが、10年に及んだGM飼料使用禁止を解いて、06年1月からGM飼料由来の家畜を受け入れると公表したのだ。同組合は屠畜業で国内65%のシェアを占めると言われている。

参照記事3
TITLE: Meat processor acceptance of GM marks slow shift in policy
SOURCE: Food Navigator, by Ahmed ElAmin
DATE: Dec. 16, 2005

 GM飼料とは具体的にはダイズカスを指している。Non-GM飼料を保証するための手段とコストに耐えきれなくなったのが、この決断の理由らしい。Non-GMダイズカスの主な供給先であったブラジルでも、04年にはGMダイズ生産が23%を占めるに至った。

 ブラジルにおけるGMダイズ作付けはさらに拡大しており、これに伴いNon-GMダイズカスの価格が06年には2倍に高騰すると予測されたのだ。スウェーデンにおける乳製品価格の下落傾向も、高価なNon-GMダイズカスを使用し続けることを躊躇させたらしい。

 ドイツもスウェーデンも、主に経済性の理由からGM種子認可・製品利用に踏み切らざるを得なかった。EUの反GMの姿勢はもはや持続不可能になるであろうという米国などからの観測を裏書きする事態だ。まだ各国の足並みは揃わないが、来年は域内のあちこちでGM受容に向けた動きが加速するものと予想される。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)