GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
11月8日の米国Wall Street Journal紙は、非GM作物へのGM作物コンタミネーションにより引き起こされた被害や対立の特集記事を掲載した。両論併記の例示にはやや新味を欠くが、いかにも経済紙らしい視点からの問題提起は一読に価する。
参照記事1
TITLE: Biotech-Crop Battle Heats Up as Strains Mix With Others
SOURCE: The Wall Street Journal, by Scott Miller & Scott Kilman
DATE: Nov. 8, 2005
記事は、スペインの一農家の紹介から始まる。この農家は、15年間かけて育種し自家栽培した赤い色の有機トウモロコシを、飼料として付近の養鶏家に販売してきた。彼のトウモロコシは、一般の黄色いトウモロコシの2倍の価格で売れた。しかし、近所の農場からのGMトウモロコシの交雑によって、彼の作物の付加価値は失われ、長年の努力が灰燼に帰した。
世界中でGM作物が増えるに連れ不注意や風媒により、批判者から「バイオ工学汚染」と呼ばれるこのような現象が起きている。何十億ドルという農産物販売が危機に瀕し、問題は世界中の政府にとって重要なものになっている。そして、各々が非常に異なるマーケットを相手にするため、非バイオ工学農産物栽培者を巨大なバイオ工学開発メーカーと戦わせはじめている。
米国農家が、海外の顧客がGMコンタミネーションを恐れるため、輸出で負けつつあると言い、ヨーロッパと米国両方の有機農民が、彼らの農産物がGM種子によってしばしば汚染されると言う。米国のバイオ工学農産物栽培者は、争いが彼らのGM農産物の国内外での受け入れを困難にするのを心配する。
カリフォルニア州の3郡がGM栽培を禁止し、4番目の投票が今日行われる。ミズーリ州のビール製造大手Anheuser-Busch社は、GMコメ栽培に120マイルの隔離距離を要求した。EUは、GM農産物の望まれない拡散を止めるための緩衝地帯をいま設けようとしている。スペインは、GM農産物栽培を165フィート離す法律を準備中だ。
しかし、GM農産物の拡散を制限するこのような動きは、しばしば効果的ではない。先月オーストラリア政府は、禁止令にもかかわらず、2つの非GMナタネ品種からGM遺伝子を発見した。国内生産者や海外顧客の懸念に直面したMonsanto社は、去年GMコムギの開発を中止した。海外諸国が非GM農産物にますます厳密な規則を実施するから、GM品種を締め出すことに米国の輸出業者は出費を増大させている。
次章<農業の未来>は、バイオ工学農産物の発展と推進派の主張に費やされる。また、小さな(GMの)漏れは別に驚きではないとしつつ、共存を可能とするバイオ工学開発メーカーの主張、安全性が公認されたGM農産物からの遺伝子である限りGMコンタミネーションには不干渉の米国政府、それに対するカリフォルニア州やバーモント州など若干の地域自治体による介入などが語られている。
また、第3章<多くの用心>においては、そのような地域自治体の試みが一切成功しない中西部における非GM作物・有機作物栽培農家の苦労や、EUのモラトリアム、WTO訴訟、各国の共存法模索などと共に日本、韓国などの規制や受け入れ状況が簡単に紹介されている。
最終章<コンタミネーションした種子>では、まずキューバやメキシコのオアハカにおける原産トウモロコシへのGMコンタミネーションを報告する。オアハカの一老農民は「それぞれの家族は、トウモロコシで表現される自分自身の遺産を持っている。だから、我々の伝統的なトウモロコシが汚染されたなら、何千年にも遡る遺産を失うと感じる」と語る。
そして、ストーリーは再び序章のスペインに戻ってくる。しかし、今度コメントするのは、Btトウモロコシを栽培している農家だ。「トウモロコシの伝統的な品種は害虫によって弱められ、しばしば強風により倒壊される。もし我々がGMを植えなかったら、我々はそれを植える米国とアルゼンチンやほかの国との厳しい競合に直面する。土地を断念して、山羊を育てなくてはならなくなるだろう」
このGM栽培農家と、約220マイル離れて位置する最初に登場した有機農家とに、必要とされるバランスをとることはきわどい。スペインの計画する共存法には、どちらの側も満足できそうにない。GM農家は、規則に従うのは不可能であり、その代わりに植え付けのシーズンをずらす協定を近隣の非GM農家と交わすだろうと言う。一方、 有機農家は165フィートの隔離距離は嘆かわしいほど不十分だと言う。花粉はもっと遠くまで容易に届くと彼は信じている。
以上でWSJの記事抄訳は終わるが、記事中でも触れられていた通り、カリフォルニア州ソノマ郡では、11月8日GM作物を10年間栽培禁止とするか否かを問う住民投票が行われた。結果は、56%対44%で栽培禁止令は否決された。
参照記事2
TITLE: Voters reject ban on genetically modified crops in Calif county
SOURCE: AP
DATE: Nov. 9, 2005
投票日前、ほかの媒体に掲載されたGM栽培禁止に反対する農家の「我々はアメリカ政府が問題ないと言う限り、栽培したいものを栽培する権利を持つべきだ」という発言は、WSJの記事と併せて、考えさせられる。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)