GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
GMOワールドのあちこちで毎日いろいろなことが起きている。大きな出来事はこのコーナーでも一つずつ論じるが、それだけでは間に合わなくなる場合もある。時には、今週のようにヘッダーだけ並べるような場も設けないと、全体を俯瞰するのが困難になる。紙数からコメントはどうしても舌足らずになるが、その点はご容赦願いたい。
難航するEUのGM作物承認作業
6月28日、モンサント社のGM除草剤耐性トウモロコシNK603製品(飼料用)の上市を承認する欧州委員会からの提案について、欧州環境閣僚会議は合意に失敗した。ラトビア、デンマーク、キプロス、ハンガリー、マルタ、イタリア、ギリシャ、オーストリア及びルクセンブルグの9カ国が反対、英国、オランダなど9カ国が賛成、ベルギーとスペインは棄権した。
各国の意見がまとまらない場合は、先月承認されたシンジェンタ社のBt11と同様、欧州委員会が最終的に承認することになるが、6月16日のモンサント社のGM除草剤耐性ナタネGT73輸入承認を巡る専門委員会も合意に失敗しており、モラトリアム解除は欧州委員会の掛け声ほどには進まない。
なおも続く米国カリフォルニア州の反乱
3月にGM作物と家畜の生産を禁止したメンドシノ郡に続き、マリン、ビュート、ソノマ、フンボルト、アラメダ、サンタバーバラ、サンルイスオビウスなどのカリフォルニア州諸郡は、同様の措置を求め11月の郡民投票に必要な署名を集めており、既に達成した郡もある。
ところで、ビュート郡の農務局は農民の選択オプションを減らすと、GM作物栽培禁止行動に反対を唱え、気骨のあるところを見せている。
GM開発メーカーには頭が痛い事態だが、さらに頭痛の種がオハイオ州にも播かれている。6月25日、オハイオ州議会では民主党下院議員から、農家がGMダイズなど特許のある種子であっても自家採種し播種する権利を認める法案が提出された。
アフリカへ金も出すが口も出す米国
6月30日、ベネマンUSDA(米国農務省)長官は、同省の後援により開催された農業科学技術移転などを主題とする西アフリカの会合におけるバイオ工学など科学技術に対する西アフリカ諸国の大臣たちのサポートに対し賛意を表した。
この会合は6月21日から3日間にわたりブルキナファソのワガドクにおいて開催された。マリ、ニジェール、ガーナ及びブルキナファソの大統領4名、大臣18名を含む300名以上が22カ国から参加した。年内にマリのバコマにおいてフォローアップ会合が予定されている。開発経済援助などを武器にバイテクをアフリカに広めるため橋頭堡を築く米国の試み。
シンジェンタ社の英国撤退
7月1日、スイスベースのシンジェンタ社は英国におけるGM作物研究を中止し、バークシャーのラボを米国ノースカロライナ州へ移すと発表した。これはモンサント、デュポン、バイエルに続く決定で、大手バイテク企業はすべて英国におけるGM作物研究から撤退することになる(参照記事 )。
大学の研究者からは、これで大学のGM作物研究も中止に追い込まれるかもしれないが、いったん中断した研究を再び軌道に乗せるためには膨大な時間がかかると憂慮する声が上がる一方、反GM圧力団体は公衆の深い心配のためにこの技術は既に拒絶されていたと語った。
ドイツにおいても先頃議会を通過したGM規制法案があまりに厳しいため、GM研究が海外に流出する懸念があると研究者グループは心配している。
ようやく結審ブラジルのGMダイズ認可訴訟
7月1日、ブラジル連邦裁判所はモンサント社のラウンドアップレディーダイズの国内販売を許したCTNbio(ブラジル・バイオセイフティー委員会)の権限を問う訴訟を起こしていた環境保護団体の主張を退ける判決を下した。
認可は98年11月に下ろされたものであるが、直ちに環境保護団体から訴訟が起こされ99年にCTNbioの認可を停止する地裁判決が言い渡された。この判決に対するモンサントの上告も00年6月と9月に敗訴した。舞台は上級裁判所へ移り01年年末、連邦裁判所は3人の判事を任命したが意見が割れて判決は下されず、そのうち政権も代わりGMダイズ生産・販売を巡り様々な政治的動きがあった訳だが、ようやく結審した。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)