GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
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6月16日、EU(欧州連合)の専門家パネルがモンサント社の除草剤耐性GMナタネ(GT73)の輸入・販売認可の合意に(やっぱり)失敗。6月18日、GM規制関連法案がドイツ議会を通過。このほか、GM食品にポジティブな報告書を出したFAO(国連食糧農業機関)に抗議するNGO(非政府組織)とFAOとの間の応酬などが、先週は目を引いた。しかし今回は、米国の「食」に関する消費者意識・行動についての、なかなか興味深い調査結果を紹介する。
参照記事
TITLE: Confused consumers pose food industry challenge
SOURCE: Food Production Daily
DATE: Jun. 15, 2004
このオンライン消費者調査は、米国国民4000人を対象に、米デロイト&トウシュ社によって実施された。健康に良い食事、外食、店頭での食品選択、消費者責任と食物購買などを含む広範な問題をカバーし、食品産業が直面する多くの消費者意識の矛盾点を明らかにしている。
例えば、アトキンスダイエットのような低炭水化物の食事の明白な流行にもかかわらず、消費者はこのような食事スタイルが最も健康に良いものではないことを知っているようだ。「健康に良い食事」を定義するよう求められた回答者の52%は、それが「適度に食べること」と言い、次いで51%が「穀物と果物をもっと多く取り、脂肪と甘いものを減らすこと」と答えた。「低炭水化物もしくは脂肪分が少ない食物を取ること」と回答したのは、わずか6分の1に過ぎなかった。
そして、食品産業にとって紛らわしく意外なことに、回答者の半数が「ほとんどいつも健康に良い食事を心がけている」と主張した一方で、多くの消費者が健康的に食べることに無関心であることも示された。回答者の3分の1以上が、「健康に良い食事を食べたのは2回に1回だけ」と答え、13%は「健康に良い食事を食べたことはない」と回答している。
回答者の60%近くが低カロリー、高繊維質あるいは低炭水化物の食品を好む。「肥満気味である」と答えた回答者の64%がさらに低カロリーの食品を要求している一方で、「肥満していない」と答えた回答者の52%も低カロリー食品には関心を示した。自分自身はダイエット食を取っていなくても、多くの消費者は肥満の問題が社会に影響を与えている点を理解していることをこの結果は示している。
矛盾は家庭内消費に限定されない。外食をする消費者がカロリー計算をする可能性は、家庭で食べる時に比べて高くないと考えられていた。しかし、外食する人たちもかなりの割合で彼らが食べたものに対して関心があった。「家庭で健康に良い食事を食べることに気を使う」と答えた75%に比較して、ファストフードやカジュアルな食事を食べていた消費者のおよそ半数も、健康に良い食事を食べることについて「関心がある」と答えた。
また、回答者の半数以上(53%)が、「ファストフードの事業規模はあまりにも大きすぎる」と考えており、83%がこれらの簡易食堂が「もっと健康に良い食事の選択肢を増やすこと」を欲している。この要求は幼い子供たちのいる家庭では特に強かった。
食品の表示に関して、この調査では5人のうち3人の消費者(61%)が、「腐敗しやすい食品に対する原産地表示」が「非常に重要」、または「いくらか重要である」と答え、80%は、たとえそのために「多少価格が上昇しても表示を望む」と回答した。
EUと米国の間で国の対応が割れているGM食品の「表示」については、米国のたいていの消費者がGM食品かどうかを食品購買の選択基準にほとんど入れていないにもかかわらず、GM食品を食べることには3分の2(67%)が「懸念を抱いている」という意外な結果も示された。
選択権を持つことは大部分の消費者にとって重要であり、少なくとも健康に良い食物に話が及ぶ時はそう思われる。今回の調査では質問されたほとんどの人が、「健康に良い食事は(自分自身)が選択すべき問題である」と答えたが、かなりの数の回答者が、「食品企業がこれをサポートする努力をしていく」ことを望んでいることも分かった。
健康に良い食事に関する責任の所在は、54%が「個人」、45%が「個人と食品企業」に共有されるべきと答えた。「食品企業のみ」に全責任を帰した回答者は1%以下であり、ファストフードチェーンに対する肥満訴訟が認められていることに関しては、74%がこれらの訴訟は「許されるべきではない」と述べた。
以上が概容だが、同じ調査を日本で行ったらどういう結果になるのだろうか?情報伝達の均一性とそれに素直に洗脳される国民性から、もう少しまとまった結果に落ち着くのではないかとも思う。しかし、食という行為に限っては、矛盾だらけで回答がバラけた自由主義大国と比べて、果たしてどちらがより健全なのかを判定するのはなかなか難しい。我が国の政府が推進する「食育」の着弾点と合わせて、いろいろ考えさせられる問題である。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)