GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
本サイトはFOOD SCIENCEであるから食品に関連するコンテンツを扱うべきなのだが、最近のGMOワールドでは非食用分野の話題も多い。以前「光るペット魚」を<箸休め企画>として取り上げたが、今週はその第二弾として食品以外のトピックを纏めておきたい。
参照記事
TITLE: Scotts Testing Genetically Modified Grass
SOURCE:AP, by RUKMINI CALLIMACHI
DATE: April 9, 2004
最初は、米国オハイオ州に本社があるガーデニング大手スコッツ社が05年春に販売を計画するGMベント芝の話題から。モンサント社の除草剤ラウンドアップに耐性を持つこのベント芝は、現在同州マドラス地区のテスト・プロットで栽培が行われている。
このGMベント芝は雑草が混じらない完璧なグリーンをゴルフ場に提供するから、現在マスターズで苦戦中のタイガー・ウッズなどの巧者は更にスコアを伸ばすだろう。ただし、芝目に左右されるような運の部分が減り技術の巧拙がそれだけ素直に反映されるため、ゲームの興趣はいささかそがれるかもしれないが。
USDAは今年1月から3月5日までGMベント芝の環境影響性に対するパブリック・コメントを公募しており、認可の最終段階にある。1万5000とも1万7000とも言われる米国内のゴルフ場が管理費削減の経済性を認めてGMベント芝を導入すれば、スコッツ社は莫大な利益を得るだろう。全米ゴルフ協会もバイテク芝には賛成している。
しかし、スーパー雑草の誕生を懸念するシェラクラブなど有力環境保護団体からの反対の声も強い。ベント芝は米国内に交雑可能な近縁種が12種存在し、うち4種は雑草だからである。どうやらスコッツ社とモンサント社が今後辿る道は、GMベント芝のゴルフコースのように平坦、円滑ではなさそうだ。
参照記事
TITLE: Sweden OKs Modified Potato _ for Industry
SOURCE:AP, by KARL RITTER
DATE: April 9, 2004
次はスウェーデンで、GMポテトが承認されたというニュース。商業栽培のためには手続き上EUの認可を待たなくてはならないが、ダイズ、ナタネ、トウモロコシ以外のGM作物がEU域内で認可されたのは始めてであるため、話題となっている。
プラント・サイエンス・スエーデン社により既に試験栽培が行われているこのポテトは食用ではない。製紙業界向けにスターチを生産し、スターチを抽出した後の副産物は飼料及び肥料用に消費されるという。
参照記事
TITLE: Genetically modified rice crop blocked
SOURCE:The Mercury News, by Paul Jacobs
DATE: April 10, 2004
最後は再び米国からサクラメントベースのヴェントリア・バイオサイエンス社が開発した製薬用のGMコメを巡る話題。同社は、ヒトの母乳や涙、唾液中に含まれ免疫効果を有するタンパク質ラクトフェリンと酵素リゾチウムをGMコメにより作ろうと計画(これらは人工乳に添加される)し、カリフォルニア州における商業栽培認可手続きを進めている。
同社は、50万エーカーのカリフォルニア州ライスベルト地帯を離れた州南部において上限120エーカーの商業栽培を希望していた。去る3月29日、5億ドル産業である同州コメ業界を代表するカリフォルニアコメ委員会の諮問委員会は、6:5の僅差ながら、ヴェントリア社のガイドラインに沿った商業栽培を認める評決を下した。
この勧告を受けたカリフォルニア州食品農業局(CDFA)が10日以内に下す諾否が注目されていたが、4月9日に至り否定的結論が示された。ヴェントリア社の計画実現のためには、州政府のみならず連邦政府の認可も必要とされるが、USDA(米国農務省)も試験栽培は認めても今のところ商業化認可までは考慮していないとの姿勢である。
さらに、FDA(米国医薬食品局)も、製薬植物の食用植物への混入については非常にナーバスであり、ゼロ・トレランスを要求している。一方で、莫大な利潤を産む可能性を持つ金の卵とも言うべきファーマシューティカルスの開発競争は激化しており、規制と開発のせめぎ合いはより激しさを増していくだろう。なお、モンサント社はアグリ・バイオに特化しこの分野へは進出しないと述べており、そうなると長年反対派から目の仇にされてきたヒール(悪役)の位置を他社に譲るかもしれない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)