GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
米国のBSE余波もまだ収まらないうちに、日本も巻き込まれた鳥インフルエンザのアジア蔓延という追い打ちに騒然となった年明け第3週。GMOワールドもヨーロッパなどでいくつかの動きがあったので、フォローアップを中心に5本載せます。
続伸する世界の遺伝子組み換え作物栽培面積(ISAAA)
参照記事
TITLE:Double-Digit Growth Continues for Biotech Crops Worldwide
SOURCE: ISAAA Press Release
DATE: Jan. 13, 2004
世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培面積を継続的に調査している唯一の民間機関である国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、03年の作付面積が1億6720万エーカー(6770万ヘクタール)に達したと公表した。このこの数字は対前年比15%増となり、7年連続で2桁の成長率を示したことになる。
栽培国は02年の16カ国から、政府がGMダイズの栽培を漸く公認した(従来は違法作付けであったためISAAAの統計には入っていなかった)ブラジルとGMトウモロコシの栽培をアジアで初めて開nしたフィリピンが加わり計18カ国となった。栽培農家数も02年の600万戸から、700万戸に増加した。
さらに詳細な情報(日本語)はバイテク情報普及会(CBIJ)に譲るが、GM作物栽培が従来の南北米国大陸の大規模経営農家中心から、開発途上国の小規模な農家の受け入れに徐々に移行しつつある点は、やはり注目される。
もたつくEUのGMモラトリアム解除
参照記事
TITLE: Set back for GM maize decision
SOURCE: Food Navigator
DATE: Jan. 15, 2004
スイスのシンジェンタ社の害虫抵抗性GMスイートコーン(Bt-11)のEUへの輸入認可を巡る昨年12月15日付け拙稿のフォローアップ。昨年12月8日の食物連鎖及び動物保健常設委員会における否決の後、本件の採決は欧州委員会から欧州閣僚理事会へ付託されることになっていた。
しかしながら、1月13日開催された欧州委員会ではさらなる議論が必要ということになり、欧州閣僚理事会に対する付託の提案採択に至らなかった。なお本件は1月28日の欧州委員会で再討議される模様である。
本件は98年以来のEUのモラトリアム(GM食品安全性審査の一時凍結措置)を実質的に解除することになるため、極めて重要な意味を持つ。米国からのWTO訴訟も睨み、ある程度のシナリオは出来ていると見るのが妥当だが、産みの苦しみはここ当分続きそうだ。
英国環境へのリリース諮問委員会(ACRE)がGM商業栽培にゴーサイン
参照記事
TITLE: Green light for transgenic crop
SOURCE: Nature, by Jim Giles
DATE: Jan. 14, 2004
こちらも昨年10月20日付け拙稿で触れた英国学士院のGM作物環境影響調査報告のフォローアップとなる。学士院報告を検討した結果、政府の諮問機関である環境へのリリース諮問委員会(ACRE)はGMトウモロコシの商業栽培に限定的認可を与えた。
しかし、学m院報告において環境への悪影響が在来種より高いとされたGMサトウダイコンとGMナタネは承認を得られなかった模様である。ACREの答申を受けたマーガレット・ベケット環境大臣は、来月にもGMトウモロコシの商業栽培を許す見込みである。
ただ後述のドイツ政府の場合と同様、大衆の不安や反対派の活動を押さえるために、かなり厳格な付帯条件を設けるであろうことは充分予想される。EU自体のモラトリアム解除はもたついても、英国やドイツなど個々の加盟国では解除後を睨んだ動きが加速している。
価格が適正なら英国の消費メの3分の2がGM食品を購入する
参照記事
TITLE: GM foods? Yes, if the price is right
SOURCE: Observer, by James Doward
DATE: Jan. 11, 2004
これは3人のエコノミストによる注目されるGM食品に対する消費メポール(世論調査)の結果である。この調査によれば実際に支払う商品代金が意志決定に導入され、価格が適正と判断された場合には、消費者の3分の2は結局GM食品を購入するという。
最初の質問では消費者の約90%がGM食品に拒否を示したが、価格を考慮した場合には拒否が35%に下がり、十分に安かったなら42%がそれを買うだろうと回答、23%は価格に関係なくGM食品を食すことに不安を持っていなかったという。
この結果には、むしろポールを実施したエコノミストたちが驚いたという。「フランケンフーズ」は人気の高い神話に過ぎないのではないかと、この記事は言う。
ドイツ連立与党がGM関連法案で合意
参照記事
TITLE: Germany To Greenlight GM Food Labeling
SOURCE:Deutsche Welle
DATE: Jan. 13, 2004
赤・緑内閣とも呼ばれる社会民主党(SPD)と緑の党のドイツ連立与党は、ドイツ国内でのGM作物・食品の商業栽培や輸入・販売を許す法案に対し、1?2日内部合意に達した。この結果、法案は2月の閣議で承認され成立する見込みという。
この法案はすべてのGM食品に表示を要求し、在来農作物や有機農作物に対しGMが交雑した場合にはGM栽培農家に弁済を義務付ける内容も盛り込まれる。
我が国でも共産党の天皇制、自衛隊を当面容認というのがあったが、様々な制約が付くとはいえ、ガチガチのプロ環境保護主義政党である緑の党がGM商業栽培を許すというのは、数年前なら、まず考えられなかったことである。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)