科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

白井 洋一

1955年生まれ。信州大学農学部修士課程修了後、害虫防除や遺伝子組換え作物の環境影響評価に従事。2011年退職し現在フリー

農と食の周辺情報

遺伝子組換え作物・食品 平成30年間を新聞記事で振り返る (第1回 平成元年~12年)

白井 洋一

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私が以前、勤めていた独法・農業環境技術研究所は日本で初めて遺伝子組換え植物の野外試験ほ場を作った国の研究所だ。そこで耐病性組換えトマトの試験栽培が始まったのが平成3(1991)年。平成の始まりとともに日本で組換え作物、食品が話題になったともいえる。平成の終わりにあたり、スクラップブックにある組換え作物・食品関連の新聞記事の見出しを紹介する。誤報記事もあるが、見出しのつけ方で当時の世相がうかがえるので、そのまま紹介する。

記事は私が購読している毎日新聞が中心だが、研究所の広報係が収集した業界紙や地方紙、平成の半ばからはネット配信記事も採用した。もちろん多くの収集漏れはあるが、読み返してみて、まあ一通り主要な記事は拾ってあるかと思う。なお、記事のほとんどは「組換え」ではなく「組み換え」を使っているので、記事のとおりにした。1回目は平成12年まで。北米での商業栽培が先行し、安全性審査や表示制度など、行政の対応が後手に回った時代だった。

昭和63年(1988年)

1月 植物ミニ化遺伝子導入で品種改良応用へ道 筑波大グループ(毎日)

8月 組み替え体の野外実験 科学技術会議が安全指針作り(毎日)

平成元年(1989年)

4月 薬用植物で遺伝子組換え 国立衛生試と筑波大(日刊工業)

8月 組み替え植物トマト栽培 初めて野外で 安全性で論議呼びそう(毎日)

9月 組み替えトマト 非閉鎖系温室実験 市民団体が質問状(毎日)

10月 組み換えトマト温室で 来夏にも野外試験(日刊工業)

平成2年(1990年)

10月 遺伝子工学技術の環境汚染防止 法規制の動き 環境庁(毎日)

12月 組み換えトマト 隔離ほ場を公開 つくば農環研(毎日)

平成3年(1991年)

2月 組み換えトマト 初めて野外実験 温室から野外に移植(毎日)

3月 組換え実験動物も特許の対象に 特許庁基準見直す(毎日)

8月 遺伝子組み換えトマト 温室より野外の耐病性強い(毎日)

12月 遺伝子操作生物野外試験の法規制見送り 意見対立し両論併記(毎日)

平成4年(1992年)

1月 初の開放系利用申請 組み換えトマト 農業環境技研(毎日)

5月 特別な規制は不必要 バイオ食品で米国食品医薬品局(読売)

10月 ニワトリに外来遺伝子導入成功 農水省試験場(毎日)

11月 遺伝子工学で長生きトマト カゴメと英国メーカー開発(毎日)

平成5年(1993年)

4月 組み換え植物栽培試験 一般住民に説明会 農環研など(毎日)

5月 組み換えメロン定植 農環研の畑で(毎日)

5月 光るカイコできた 遺伝子組み換えで 農水省研究所(毎日)

平成6年(1994年)

3月 遺伝子工学作物で新ウイルスも 米研究者サイエンス誌に(毎日)

4月 アズキゾウムシ抵抗性のバイオ育種 インゲン遺伝子導入(日本農業)

5月 米国で人気 遺伝子操作トマト 3日で完売(毎日)

5月 組み換えイネ植える トマトに次ぐ2例目(毎日)

6月 遺伝子ライス食卓へ 4、5年先にも商品化 安全基準は未整備(毎日)

9月 近い将来食卓に バイテク稲刈り つくば農水省研究機関(毎日)

10月 コシヒカリの耐病性向上へ遺伝子組み込み 農水省センター成功(毎日)

平成7年(1995年)

4月 日持ちのする組み換えカーネーション サントリーが開発(毎日)

5月 米国 組み換え応用 殺虫ジャガイモ販売を認可(産経)

5月 米国ゲノム調査研 バクテリアのDNA全配列解読成功 クレイグ・べンター博士ら(毎日)

9月 組み換え農作物の最前線 米国フレーバーセイバートマト(毎日)

9月 組み換え農作物の最前線 食べるワクチン 新手法に挑む国内研究(毎日)

9月 組み換え農作物の最前線 食べても安全か 厚生省は指針づくり(毎日)

10月 バイオ作物食卓へ 厚生省部会安全性指針示す 表示義務なく消費者反発も(毎日)

平成8年(1996年)

3月 バイオ食品上陸へ 除草剤にも枯れない大豆 厚生省安全性評価審査諮問(毎日)

10月 組み換え作物もうすぐ食卓へ 7品目すでにゴーサイン 消費者団体表示義務要請(毎日)

11月 狂牛病、O157、バイオ農産品の安全性議論 世界食料サミット(毎日)

11月 組み換え農作物 食用油の原料に 消費者団体不買運動へ(毎日)

11月 農薬に強い大豆 虫のつかないジャガイモ 米国から上陸 表示求める声(毎日)

平成9年(1997年)

3月 農水省 組み換え食品表示研究会を設置(毎日)

3月 組み換え食品 表示求める声根強く(毎日)

3月 組み換え作物の輸入 厚生省認可 消費者団体が反対キャンペーン(毎日)

4月 モンサント、アグレボなど申請 組換え作物 農水省一般利用を確認(日本農業)

4月 豪州に除草剤耐性雑草 組み換え作物効果に疑問(毎日)

5月 組み換え農産物 消費者の疑問に答える 農水省労働組合がつくばでシンポ(毎日)

5月 組み換え大豆は使っていない 豆腐でメーカーと生協(毎日)

5月 組み換え作物 8品種安全認める 厚生省食品衛生調査会(毎日)

5月 遺伝子操作食品 表示は避けて通れない(毎日)

5月 組み換え農作物とは わが国の現状は 商品化はまだ先のこと(毎日)

7月 組み換え食品 不安や疑問が相次ぐ 衆院表示問題小委員会初会合(毎日)

8月 組み換えトマト販売延期も 安全確認されても キリンビール(毎日)

9月 組み換え作物食品 使用・不使用表示来年1月から 日本生協連(毎日)

10月 組み換え食品 表示必要が9割 東京都消費生活モニターアンケート(毎日)

11月 組み換え食品認可 会社は資料ごまかし 英文と日本文違う 市民団体質問書(毎日)

12月 病原体に強いジャガイモ 遺伝子操作で開発 弘前大とキリンビール(毎日)

12月 組み換え植物と交配でオゾンに強い植物を 国立環境研(日刊工業)

12月 組み換え作物 8件の環境への安全性確認 農水省(日経産業)

平成10年(1998年)

1月 非組換え農作物 独自に入手ルート確保へ 生協で動き活発(毎日)

2月 組み換え農産物 米国農務省 有機食品に認定か(毎日)

2月 組み換えジャガイモ食べてコレラ予防 米国チーム成功(毎日)

3月 組み換え大豆判別法を開発 大阪の市民生協(毎日)

4月 環境耐性遺伝子組み込み 農作物に応用 国際農林研と理化学研(日経産業)

5月 砂漠向け乾燥に強い遺伝子植物作り成功 地球環境産業技研(毎日)

5月 枝分かれ促進遺伝子発見 農業生物資源研(毎日)

8月 組み換え作物食べたら免疫力低下 英研究所ラット実験(毎日)

8月 実験は不完全 英・発表の科学者、パズタイ教授に引退勧告(毎日)

9月 発芽しない種子 米国で遺伝子操作、特許申請中(毎日)

11月 組み換え食品表示問題 厚生省「安全なので不要」農水省「情報提供で検討」(毎日)

11月 組み換え食品 表示義務付けを93% 大学生のNGO調査(毎日)

平成11年(1999年)

1月 組み換え食品 安全性確認と表示は当然(毎日)

2月 英で科学者グループ警告「組換え作物 発がん率高める可能性」(読売)

2月 豪・NZ 組み換え作物使用食品に表示義務付け(毎日)

2月 組み換え生物の取引規制 国際協定になお難関 コロンビア会議(毎日)

2月 組み換え作物の規制 締約国会議 議定書は不採択(毎日)

3月 文部省学術審議会 ゲノム研究の推進提言(毎日)

4月 乾燥にも低温にも海水にも耐えるスーパー植物開発 農水省研究機関 組み換えで(毎日)

4月 ヒトゲノム計画 米英グループ 1年で塩基配列解読 出遅れ日本(毎日)

4月 蚕の組み換え成功 クラゲの発光遺伝子導入 蚕糸・昆虫研(毎日)

5月 組み換え食品と英国 全飲食店に表示義務付け(毎日)

5月 組み換えコーンの毒素でチョウも死ぬ 米コーネル大 ネイチャー誌に発表(毎日)

6月 組み換えトウモロコシ 生態系に悪影響の恐れ(毎日)

6月 組み換え食品に疑問 英チャールズ皇太子が批判を展開(毎日)

6月 Btコーンで農水省見解 生態系に影響与えぬ(日本農業)

6月 組み換えコーン 栽培目的の種子禁輸 農水省 新たな評価基準作るまで(日本農業)

6月 組み換え食品の指針 G8宣言盛り込み見送る 米欧対立で(毎日)

7月 組み換え大豆 しょうゆなどは表示困難 農水省懇談会(毎日)

7月 5省庁でバイオ予算倍増要求 農水省など(毎日)

7月 組み換え作物で対策講ずる 米農務長官 日欧の懸念に配慮(毎日)

7月 組み換え食品 表示義務化が原則 中川農相(毎日)

7月 組み換え食品 表示線引き焦点に 任意の意見も(毎日)

7月 組み換え食品の安全問題 WTO新ラウンド交渉に提案 日本政府(毎日)

7月 アルカリ土壌に強い組み換えイネ 東大教授ら開発(毎日)

7月 ドイツ 組み換えブドウの栽培 実験認可に賛否両論(日本農業)

7月 遺伝子操作は福音の技術か 米の文明批評家ジェレミー・リフキン(毎日)

8月 ビタミンAと鉄分豊富 組み換え稲開発 スイスの研究チーム(毎日)

8月 組み換え食品 表示義務28品目 農水省が原案 2001年から適用(毎日)

8月 組み換え食品表示 30品目義務付け 最終案了承(毎日)

8月 組み換え食品表示問題 米国に食糧依存 日本の構造浮き彫り(毎日)

8月 ベータカロチン含有組み換えイネ 欧州連合の研究グループ開発(毎日)

8月 遺伝子認証参入 組み換え農産物判別 日商岩井(毎日)

8月 組み換えトウモロコシ スナック菓子 未承認品種使用 市民団体検査(毎日)

8月 組み換え食品 日本の表示化を批判 米国穀物協議会(毎日)

8月 組み換えしていない原料 力合わせ確保を 中小食品メーカー(毎日)

8月 組み換えトマトの商品化断念 消費者の不安感に配慮 キリンビール(毎日)

8月 輸入国に嫌われ メーカーに避けられ 組み換え穀物で米国農家大打撃(毎日)

9月 義務ではないけど安心大切 組み換え表示の動き 外食チェーン(毎日)

9月 組み換え食品 審査制度を検討開始 厚生省(毎日)

9月 組み換え食品 どうやって判断 検査ビジネス大盛況(毎日)

9月 組み換え食品 米国のトウモロコシ 流通段階で混ざる コーン菓子(毎日)

10月 遺伝子非組み換えビジネス大繁盛 大豆、トウモロコシで大手商社参入(毎日)

10月 欧州 食品管理庁創設へ 組み換え作物安全性を最優先(毎日)

10月 組み換え原料 ベビーフードに極力使用せず 業界大手7社が方針(毎日)

10月 組み換え作物の栽培面積 昨年より44%拡大し3990万ヘクタールに(毎日)

11月 組み換えイネに特殊タンパク質 害虫駆除に効果 日大教授ら発見(毎日)

12月 組み換え食品 安全検査義務付け 厚生省方針(毎日)

12月 組み換え作物 米で集団訴訟 環境保護団体など(毎日)

平成12年(2000年)

1月 組み換え食品表示 格付け機構設立 日本環境財団(毎日)

1月 遺伝子操作で暑さに強い植物 九州大グループ(毎日)

1月 非組み換え食品 流通マニュアル 農水省 分別証明書添付で(毎日)

1月 試行錯誤の青いバラ サントリーの花事業部(毎日)

1月 組み換え作物 輸出に事前通知義務 国際議定書を採択(毎日)

2月 組み換え生物議定書 締約国会議 ルール確立できず カナダで(毎日)

2月 バイオセーフティー議定書 採択されたが 仏作って魂はこれから(毎日)

2月 ゲノム研究強化を提言 文部省学術審議会(毎日)

2月 組み換え農作物 安全性検討で専門委員会 農水省(毎日)

3月 組み換え作物・食品の安全確認、Btコーンをめぐって大論争(毎日)

3月 組み換えトウモロコシ 国内栽培影響なし 農水省判断(毎日)

3月 組み換え食品 国際規格討議 コーデックス委員会 市民団体不安訴え 幕張(毎日)

3月 組み換え食品に不安 国際規格会議出席のナイジェリア局長(毎日)

3月 組み換え食品の国際規格を論議 EUと米の対立必至 4年以内に結論の方針(毎日)

4月 組み換え作物第2世代 コレステロール低下、貧血予防 健康志向、付加価値高める(毎日)

4月 イネゲノム解読 米モンサント社の情報活用 農水省生物資源研究所(毎日)

4月 未承認の組み換え原料 指摘の菓子から検出されず 農水・厚生省(日経産業)

4月 組み換え作物に危険なし 米下院委員会(毎日)

4月 非組み換え大豆上場認可 来年4月の義務表示前に 1割高(毎日)

4月 組み換え食品 女性の方が強い関心 新社会人意識調査(毎日)

4月 組み換えジャガイモ使用せず 米マクドナルド社(毎日)

5月 組み換え品種開発業者 安全性審査義務付け 来年4月から 厚生省(毎日)

5月 組み換え作物実用化 環境、生態系に悪影響? 品種改良、新品種、未知の毒も?(毎日)

5月 非組み換え大豆上場 東京穀物商品取引所 一般大豆と別建てで(毎日)

5月 未承認の組み換え飼料確認 市民団体発表(毎日)

6月 除草剤に強い組み換え大豆 実際は収量減る 米国環境団体報告(毎日)

7月 作物に組み込まれた遺伝子 生物の腸内に移行 ドイツの研究(毎日)

7月 組み換え大豆で安全性に問題なし 農水省(毎日)

7月 組み換え食品 米国でも販売中止運動 NGOが大規模に(毎日)

7月 組み換え食品 欧州に安全への不安高く 新協議機関設置見送り(毎日)

7月 組み換え食品 推進・規制派に溝 九州・沖縄サミット(毎日)

8月 組み換えトウモロコシ 野外でもチョウの幼虫2割死ぬ アイオワ州大(毎日)

8月 組み換え食品表示 食用油などは対象外(毎日)

9月 組み換え作物の安全性討議初会合 農水省市民代表交え(毎日)

9月 雑草は減ったがヒバリも減った 英国 組み換え作物で環境変化実験(毎日)

10月 組み換え大豆 市民団体が安全性点検 厚生省は認可しているが(毎日)

10月 組み換えコーンの混入防止強化指示 米国政府、農務省に(毎日)

11月 組み換えトウモロコシ 輸出時に検査指導へ 米農務省(毎日)

11月 未承認組み換えトウモロコシ 対日輸出停止を米に要請 農水省(毎日)

11月 組み換え作物 情報公開徹底を提案 農水省設置の市民会議(毎日)

11月 検出された組み換えトウモロコシ スターリンクの問題点(毎日)

11月 未承認組み換えトウモロコシ 厚生省も混入確認 米農務省と輸出時検査で合意(毎日)

11月 未承認組み換えトウモロコシ 15検体中10から反応 農水省調査(毎日)

11月 国内の市販食品で厚生省も含有確認 スターリンク(毎日)

11月 組み換えトウモロコシ 混入食品を食べ 米で44人 体に不調 FDA報告(毎日)

12月 スターリンクの波紋 行政の対策後手に(毎日)

12月 スターリンク混入 厚生省 サンプル検査で確認(毎日)

12月 スターリンク 10検体から検出 農水省(毎日)

12月 飼料用スターリンク 輸出前検査で日米合意(毎日)

12月 穀物の輸入先分散 米国産の地位揺らぐ 組み換え問題が影(日経)

(続く)

執筆者

白井 洋一

1955年生まれ。信州大学農学部修士課程修了後、害虫防除や遺伝子組換え作物の環境影響評価に従事。2011年退職し現在フリー

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一時、話題になったけど最近はマスコミに登場しないこと、ほとんどニュースにならないけど私たちの食生活、食料問題と密に関わる国内外のできごとをやや斜め目線で紹介