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執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

ワタアブラムシ どこで冬を越しているのでしょうか?

池田 二三高

キーワード:

Aphis gossypii colony

雌成虫だけで増えたコロニー。これらの幼虫も総て雌になる

Aphis gossypii imago in winter

ホトケノザで越冬中の雌成虫

Aphis gossypii

ムクゲに集まった有翅の雄成虫と無翅の雌成虫。雌成虫の腹部は膨れて、黄色の卵が透けて見える

Aphis gossypii-egg

ムクゲの越冬芽付近に産みつけられた越冬卵。産卵直後は黄色だが、やがて緑黒色になる

 作物の汁液を吸ったり、ウイルス病を媒介したり、多様な被害をもたらすワタアブラムシ。2011年4月の本コラム「ワタアブラムシ 体は小さいが多様な被害をもたらす害虫」でも紹介しました。農業現場ではおなじみですが、たくさん集まっているコロニーの中には、雄はいません。雌だけで子供を産んで増えます(単為生殖)。その子供も全部雌で、これを繰り返してどんどん増え続けます。

 しかし、寒い冬はどのようにして過ごしているのでしょうか。暖地では、雌成虫が子供を産むのを止めて越冬します。寒冷地では、晩秋になると、突然雌成虫から翅のある雄成虫(有翅の雄成虫)と翅のない雌成虫(無翅雌成虫)が現れ、これらは交尾をして雌成虫は産卵します。この卵が越冬して春に孵化すると、また単為生殖で子供を産む雌成虫になります。このように、晩秋の一時期だけ、越冬卵を産むための雌雄が発生することになります。不思議な現象です。

 ところが、野外で越冬しているワタアブラムシの成虫や卵を探してもなかなか見つかりません。私は10数年前のことですが、静岡県で調べたところ、平地では成虫も卵も農作物では見つからず、ようやく雑草のホトケノザとオオイヌノフグリで越冬成虫を見つけることができました。平地では、雌成虫で越冬すると言って良いでしょう。

 寒い山地では、どの農作物でも雑草でも越冬成虫を見つけられず、知人の助言をもとにムクゲの小枝で越冬卵をみつけることができました。やはり寒冷地では卵越冬のようです。
 しかし、オオイヌノフグリとムクゲは、ワタアブラムシの越冬植物に間違いありませんが、両種は帰化植物です。もっとほかの植物で越冬しているはずです。成虫や卵が越冬する在来の植物を見つけ出さないと、野外における本来の生活史は解明されません。

 私はそれにこだわって、今なお機会を見てワタアブラムシが越冬する植物を探していますが、探し方が下手なのでしょうか、白内障の目では限界でしょうか、残念ながら新たな発見はありません。皆さんの目と技術に期待しています。

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執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ