メタボの道理
生活習慣病を予防し、健康で長生きするための食生活情報を提供します。氾濫する「アヤシゲな健康情報」の見極めかたも
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食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員
●高脂血症から脂質異常症へ
【メタボの道理】の第1回目の原稿「メタボを正確に知ろう!」で次のように書いた。
メタボリックシンドロームの構成条件は2つある。1番目が、よく知られている「おへそ周りの腹囲が、男性で85cm以上・女性で90cm以上」であることだ。2つめが、それに加えて「軽い糖尿病、軽い高血圧症、軽い脂質異常症のうちの2つ以上を持っていること」だ。
今回はこの中の「軽い脂質異常症」について考えてみよう。
脂質異常症というのは聞き慣れない人があるかもしれない。以前は高脂血症といっていた。血液中の脂質量が多い(総コレステロール値が高かったり中性脂肪値が高かったりする)状態を高脂血症と呼んでいた。
しかし研究が進むうちに、血液中のHDLコレステロールは、限度はあるが、少ないよりも多いほうが好ましいことがわかってきた(それゆえに“善玉”と呼ばれている)。また、HDLコレステロール量が多いがゆえに総コレステロール値も高い場合には、それほど悪さをしないこともわかってきた。 そのため、高脂血症という病名は誤解を与えるおそれがあるとして、日本動脈硬化学会は2007年に、病名を脂質異常症と改めた。
メタボリックシンドロームでは、血液中の脂質量の基準を「中性脂肪値が150mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満、のいずれか、又は両方」としてある。
●LDLよりもHDLや中性脂肪を気にすべき
ここまで読んできて、注意深い人は、メタボリックシンドロームの定義に「LDLコレステロール」という言葉が登場してないことにお気づきだろう。LDLコレステロールというのは、いわゆる“悪玉”と呼ばれている脂質だ。日本動脈硬化学会は、コレステロールを善玉と悪玉にわけ、狭心症や心筋梗塞等の致命的な病気に悪影響を与えるのは悪玉コレステロール(LDLコレステロール)であり、その治療にはLDLコレステロールのコントロールが欠かせないと主張している。
しかし、少なくとも日本人にあっては、血液中のLDLコレステロールの値が狭心症や心筋梗塞などに悪影響を与えるというエビデンス(科学的証拠)が、必ずしも明らかになってはいない。これらの病気の発症と深く関わっているのはLDLコレステロールではなく、むしろHDLコレステロール(が低いこと)や中性脂肪(が高いこと)らしいということが明らかになってきている。
そのため、メタボリックシンドロームの診断基準には、LDLコレステロールは入っておらず、血中脂質の基準としては、前述の通り中性脂肪値とHDLコレステロール値の2つだけしか入ってないのだ。
つまりは、狭心症患者や心筋梗塞患者の“治療”のためにはLDLコレステロール値をコントロールすることが必要なのかもしれないが、メタボリックシンドロームの“予防”の目安としてはLDLコレステロールは考慮しなくてもよい、ということになる。
ターゲットを間違うと、生活習慣の改善には結びつかないし、当然のことながらメタボ予防もおぼつかない。気にすべきはLDLコレステロール値ではなく、HDLコレステロール値や中性脂肪値である。
私はそもそも「LDLコレステロールを悪玉呼ばわりすべきではない」と考えているので、次回はそのことに言及したい。
食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員
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