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執筆者

佐藤 達夫

食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

メタボの道理

メタボは病気じゃない

佐藤 達夫

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 コラム連載メンバーの“オープン寄稿”のほとんどは、大災害や原発事故に関連した緊迫した内容で、読み応えがあった。それに比べるとこの【メタボの道理】はなんともノーテンキで、間抜けな印象は免れなかった。
 食べる物がなくて死ぬほど苦しんでいる人たちが大勢いる状況で、「太りすぎて体調を崩す」人たちに対するアドバイスなどしている場合ではないのかもしれない。しかしめげずに、ここでは「健康で長生きするためにはどのような食生活がいいのか」という情報を、これからも淡々と提供していきたいと思う。
 お付き合いいただきたい。

●メタボに“治療”は必要ない
 前回のこのコラムで、メタボリックシンドロームの構成条件を2つあげた。(1)腹囲が基準を超えていること、(2)それに加えて、軽い糖尿病、軽い高血圧症、軽い脂質異常症のうち、2つ以上を持っていることだ。

 ここで疑問を抱いた人がいるのではないだろうか。糖尿病や高血圧症や脂質異常症が「軽くない」場合は、どうなるのか? 軽くない糖尿病や軽くない高血圧症や軽くない脂質異常症を持っている場合は、メタボリックシンドロームには該当しないのだろうか?
 言葉遊びのようになって恐縮だが、その通り、そういう人はメタボリックシンドロームではない。その人の場合は、たった1つだけ持っていても、それは糖尿病であったり高血圧症や脂質異常症であったりするので、「れっきとした疾病(病気)」である。

 逆にいうと、メタボというのは病気ではない。メタボは“生活習慣の改善を始めたほうがいい”という目安なのだ。メタボだからといって薬物療法などの治療を始める必要はない。
 「メタボだ」と指摘されたら、そのまま放置すると、将来、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)や心血管疾患(狭心症や心筋梗塞など)といった命に関わる重大な疾病を招く可能性が高いので、生活習慣を改善すべきというアドバイスを受けた、と理解すればいい。
 メタボは「予防開始の合図」である。この点をきちんと抑えておきたい。

 一方で、糖尿病や高血圧症や脂質異常症の患者では、専門医を受診して「治療」をすべきである。病気の患者は、生活改善なんてしてもしなくても同じだなどというような素人判断をしたり、医師からもらった薬の服用を勝手に止めたりしてはいけない。
 ただし、治療といっても必ずしも薬物治療に限るわけではなく、まず始めに食事や運動などの生活習慣の改善があり、それでも病状が好転しない場合には薬物治療などが取り入れられることになるはずだ。
 仮に「やることはほとんど同じ=食生活の改善や運動習慣の改善など」であったとしても、メタボの人と生活習慣病の患者とでは、その意味がまったく異なってくる。

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    佐藤 達夫

    食生活ジャーナリスト。女子栄養大学発行『栄養と料理』の編集を経て独立。日本ペンクラブ会員

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