科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

猛暑の中のセグロアシナガバチの巣を観察中

池田 二三高

キーワード:

nest

樹木の小枝に作られた巣

nest suitable temperature

適温時の巣。働き蜂は終日、育児や巣作りを行う

nest hot

高温時の巣。働き蜂は水を運んで巣を濡らし、ハネをはばたいて送風するのでハネがないように見える。巣の温度は気化熱で下がる

nest toohot

気温35℃の時の巣。日射が当たり、あまりの高温になったので、全ての働き蜂は巣の日陰部分に避難

 セグロアシナガバチは、西南暖地では普通種で建物の軒下や樹木に営巣します。働き蜂は、子供の育児に花や草木を食害するガの幼虫などを与えるので、有益な天敵になっています。

 今年は拙宅の庭木に営巣したので、その巣を観察しています。女王蜂は4月から営巣を始め、巣は8月に最大になります。巣を観察しやすいようにと小枝を切ったら、日中は巣に直射が当たるようになりました。セグロアシナガバチは、もともと高温には強い昆虫ですが、日中の直射による高温は、幼虫の成長には影響があると思います。

 巣の周辺温度がほぼ28℃を越えると、働き蜂は水を運んできて巣にかけ、ハネを激しく振って風を送り気化熱により冷房します。当地の今年の最高気温は、連日30℃を越えて37℃を記録した日もあったので、働き蜂にとっては冷房作業は大変な重労働になったと思われます。

 ところが気温35℃ぐらいまでは、この作業をかなり一生懸命やってますが、それ以上になると、働き蜂は全員水運びも送風も止めて、巣の北側の日陰部分に避難してしまいました。35℃という高温は、人間にとっても熱中症を多発生させますが、暑さに強いというアシナガバチでも労働するには危険温度のようです。

 観察を続けていましたら、もうひとつ興味のあることがありました。この巣にはおよそ30匹のハチがいましたが、この冷房作業を担当するのは、ほんの数匹の働き蜂でした。その他のハチは、30℃になるとさっさと巣の日陰部分に集まって休んでいます。どの世界でもそうですが、働き者は少ないようです。
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執筆者

池田 二三高

1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

虫愛でる爺

定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ