斎藤くんの残留農薬分析
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
なかなか面白いキャッチコピーである。キユーピーからいただいた今年のおしゃれなカレンダーの表紙の言葉である。作者の意図は、生活の潤いといった意味合いのサプリメントであろうが、巷のサプリメントと野菜について考える題材に使わせてもらいたい。
当たり前のことであるが、野菜の機能は様々である。太古の時代より種々の雑草の中から自分達の生命を維持するため、楽しむため、身をもって試しながら選び育て品種改良してきた。ホウレンソウは昔は御浸しではないが調理をして食べることが多かった。調理することにより生よりもたくさん食べることも可能であった。
しかし、洋風化とともにいろいろな野菜の生食が増えてきた。鮮度、彩り、熱に弱いビタミンCなど、生食の持つよさを引き出した食べ方も多くなっており、若い人では特に顕著だろう。生鮮野菜も当然ながら品種改良も進み、ホウレンソウでもエグミのないものなど、食べやすさを追及した商品開発も進む。
昨年9月に米国食品医薬品局(FDA)が警告を出したのは記憶に新しい。生のホウレンソウ(それを含むサラダ)による病原大腸菌O-157の感染例があり20州以上で200件を超える発生、死亡者も出たとの報告であった。生で食べるのはやめて、加熱調理して食べるように、生のホウレンソウを触った手や調理器具はよく洗うようにとの説明であった。
元来生鮮野菜は見た目はきれいであるから、清潔だと思ってしまう。しかし、野菜は土の上ですくすくと育ってきている。土は微生物の宝庫であり、当然細菌などの微生物は野菜にもたっぷり付着してくる。国内市販品でのカット野菜の調査では、場所によっては一般生菌数(色々な細菌がどれくらいいるかを測る目安)が10の4乗、5乗、作物によっては10の8乗程度のもの、大腸菌群も10の3乗、4乗のものがあるという。
加熱調理すればいいが、そのまま食べることが多いだろう。野菜の微生物の問題は国内でそれほども問題にはなっていないが、米国などでは生食野菜および果物が原因食品となった食中毒事例が報告されている。報告されている(農林水産省:野菜の衛生管理)。このため、米国ではよほど由来が明らかでないと生で食べるのを止める人も増えているという。
確かに一般生菌数、大腸菌群の菌数が多いのは品質管理上問題であるが、多くは食中毒菌ではないであろう。それぞれの作物でどういった常在菌で構成されており、食中毒菌の混入リスクはどれくらいあるか等も調査しておくとよい。素人的発想で申し訳ないが、病原性のない常在菌が多すぎて、O-157など病原菌が生育できない環境もあるのではないか。
本題に戻ろう。野菜はいろいろな栄養素を含み私たちの健康維持に貢献してくれている。いろいろな野菜でその成分、生理作用が解明されている。本当にいろいろであり、だから野菜がいいのであって、すぐにその成分を抽出して、あるいは合成して「サプリメントに」ではないはずだ。野菜のもろもろの成分の1つとして存在し、そのバランスの上での生理活性成分であるべきだろう。
そういう面では、野菜のそのまんま、濃縮ジュース位が野菜に近いサプリメントかもしれない(毎日自分が野菜・果物ジュースを飲んでいるから弁解するわけではないが)。
捏造で問題となった「あるある」が昨年の放送で、金属の亜鉛を貴重なミネラルとして取り上げていた。亜鉛が欠乏すると味覚障害、肌荒れ、免疫力低下など現代人が気にする症状が紹介され、今年はノロウィルスで散々だったカキが多く含んでいたり、肉類を取るとよいとの紹介であった。しかし、あるものがあるとその吸収を妨げますよと言う。
それは何といえば、食物繊維です!従来は健康の源のように言ってきた食物繊維が今回は悪者役を引き受けた。確かに、食物繊維は腸内でいろいろなものを吸着し吸収を妨げる。それは良いこともあれば悪いこともある。要は過剰はだめということであろう。よく皆さんにお話しする時、「あるある」(残念ながら中止になってしまったが)を3年分くらいまとめて見てください。そうしたら、要はバランスのよい食生活と運動をしましょうということですよと。
ポジティブリスト制度施行後8カ月がたち、野菜果実での残留実態を知るデータ、情報もどんどん増えてきている。それは全体的には大丈夫だねという方向だろう。「街のサプリメントは野菜です」—-。すがすがしいいい言葉だと思う。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)