GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
EUにおいては、2003年9月22日に欧州議会が承認したEU規則1829/2003(2)に基づき、04年4月18日から消費者の選択に資する目的でGM食品義務表示が施行された。この結果、現在まで少なくとも69種類の加工食品がGM表示を付して域内で市販されているという。これらに対する消費者の購買行動を追跡調査した、興味深い報告書 が08年10月14日に公表された。
このプロジェクトは欧州委員会が資金提供し、英国King’s College Londonが調査を実施した。調査対象国は、チェコ共和国、エストニア、ドイツ、ギリシャ、オランダ、ポーランド、スロベニア、スペイン、スウェーデンおよび英国の域内10カ国だ。GM(表示)食品を購買するか否かという消費者の意向の把握を目的としたポール調査は、過去何回も実施されてきたが、実際の消費者購買行動を大規模に分析したのは、おそらくこれが初めてだろう。
http://www.flex-news-food.com/pages/19824/European-Union/GMO/Labelling/consumers-buy-gm-labelled-foods-when-offered-sale—study.html
TITLE: Consumers Buy GM-Labelled Foods When Offered For Sale – Study
SOURCE: King’s College, London by FLEXNEWS
DATE: Oct.16, 2008
上に引用したフランスの記事は、膨大な報告書の要点を以下の通り上手く整理してくれている。「これら10カ国のうち、スウェーデン、ギリシャとスロベニアではGM表示された食品は市販されていない。残りの7カ国で、最も一般的にGM表示されている商品は、調理用ダイズ油とマーガリンであり、ほかにはポップコーン、フィッシュフィンガー、ポテトチップ、クラッカー、マヨネーズおよびチョコバーなどが含まれる。また、スウェーデンでは例外的にGM表示ビールだけが、一部レストランで提供されている。
ラベル表記は『GMOを含んでいます』または『遺伝子組み換えされたダイズから作られています』が一般的だ。一方、『GMフリー』表示は、ドイツ、ポーランドおよびスウェーデンで実施されているが、オランダでは禁止されている。ほかの国々では、例えば『GM原料を含みません』といったより婉曲的な表現が散見される。このような主にダイズを原料としてGM関連表示をされた製品は、合計185種類見出された。
GM使用表示されている商品が最も多かったのは、チェコ共和国(27製品)、続いてオランダ(18)、エストニア(13)、スペイン(6) UK(3)、ポーランド(1)とドイツ(1)の合計69製品であった。
08年1月に、GM表示された製品を販売している5カ国の市場で、4万1000人の消費者の購買行動を調べたところ、チェコ共和国の13.7%、オランダの11%、ポーランドの2.7%とスペインの2%が、過去12カ月にGMが含まれていると表示された製品を実際に買ったり、買ったと主張したりした。英国では3種類のGM表示食品があるが、今回の分析の対象にはならなかった。
過去12カ月にGM表示食品を買った消費者の20%が、それを買ったことを認識したが、48%はそれを買ったとは思っていなかった。このことは、一部の消費者はしっかり表示を読まなかったか理解しなかった、もしくは全く気にしていなかったことを示している。GM表示食品を買った消費者の30%は、それを買っていたかどうかさえ知らなかった。
『この研究結果は、人々が世論調査でどう言おうとも、大部分が店頭では積極的に遺伝子組み換え食品を避けてはいないことを明らかにしています』とプロジェクトのコーディネーターであるKings College LondonのVivian Moses教授は言った。
調査対象となったすべての消費者の4分の3は、GM成分を含む食品が法律によって表示されなければならないことを知っていると主張した。しかし、60%がどのようにGM製品を在来品から区別すべきかを知らなかったと言っている。このことは、調査への回答者のうち購買前に表示を読んだと述べた消費者が半数以下だったという事実を反映しているかもしれない。積極的にGM製品の購買を避けたという消費者はたった5分の1にすぎない。
『我々が識別したGM表示食品の詳細な販売データを得ることが可能ではなかった間でも、これらの製品はスーパーの棚に対する圧力にもかかわらず、販売のために提供され続けてきたと言えます。従って、小売り業者はそれらを仕入れる価値があると考えなくてはならないし、消費者も商業の必要を満たすために十分な量のそれらを買わなくてはならないでしょう』とMoses教授は述べている。
調査のために抽出された消費者グループが、7カ国のGMに対する消費者心理の深層について現状を精査したものを示すと考えられた。それらの議論は、GM問題がもう大部分の消費者にとってホットなトピックではないことを示唆している。GM食品表示が実は市場参与者によって要求されたけれど、彼らのほとんどが購入時に実際にラベルを見たとは言わなかったのだ」(記事の抄訳おわり)。
この調査で最も注目されるのは、消費者のGM食品に対する意向調査への回答と、実際の消費行動とは必ずしも一致しないという事実が明示されたことだろう。日本でも、一部生協などが任意に実施しているGM任意表示されたサラダ油などの販売実績には、特に変化がないと報告されている。
高騰したGMフリー原料調達コストが消費者に転嫁された場合、仮により安価なGM食品が店頭にあったら、そして氾濫するGMフリー表示食品でも実は5%までGMが含まれる可能性があることを知ったら、消費者が実際にどちらを選ぶのかは興味が尽きないテーマではある。
しかし、10月17、19日に放映された「食糧危機」を扱う天下のNHKスペシャルの大金をかけた割には突っ込み所満載の不勉強あるいは作為に満ちた番組構成振りを見ていると、この国は依然日暮れて道遠しなのだろうか。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)