GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
The Pew Initiative on Food and BiotechnologyのGM食品に関する米国消費者意識の世論調査結果が、2006年12月6日に公表された。本調査は、01年以来継続的に行われており、今回が5回目に当たる。サンプル数は成人1000人であり、今回は始めてクローン動物・由来食品に関する設問が置かれ、注目を集めた。
参照記事1
TITLE: U.S. Uneasy About Biotech Food
SOURCE: Washington Post, by Rick Weiss
DATE: Dec. 7, 2006
GM農産物の栽培面積拡大に比べ、米国消費者のGM食品に対する理解度は少しも進んでいないというのが総論である。GM食品を食べたことがあるという回答者は4分の1(27%)にすぎず、消費者の相変わらずの無知・無関心を浮き彫りにしたと分析されている。
01年からの推移では、GM食品反対が46%と低下傾向を示したのに対し、支持は27%であまり変わっていない。一方、安全性に関して分からないと答えた人は36%に下がり、安全だと安全ではないが各々34%と29%と増加している。現在の政府による規制に関しては、より厳しくすべきが41%に対し、過剰規制と考えるのは16%にとどまる。
クローン動物には、51%が不快感を示し、容認の34%を大きく上回る。さらに宗教活動に熱心なグループでは70%対17%と差が拡大し、宗教活動に熱心ではないグループの54%対30%との大きな差異が認められた。
情報源としての信頼性については、友人・家族が37%で最高、01年には41%と高い信頼性を得ていた米食品医薬品局(FDA)が29%という凋落振りが目を引く。マス・メディアは最低の11%で、引用記事のWashington Post紙は「思い出せ、それでもあなたは最初にこれを読んだ」と皮肉っている。
上に引用したWashington Post紙は、10日後の12月16日、この記事に対する読者からのコメントを2通掲載した。
参照記事2
参照記事3
TITLE: What ’Genetically Altered’ Means
SOURCE: Washington Post
DATE: Dec. 16, 2006
最初の投書は、バイテク企業もクライアントに持つ世論研究所の職員からで、半数がGM食品に否定的だとする調査の結果が、消費者行動に直結して反映される訳ではないという注意喚起を行っている。バイオテクノロジーのように一般消費者の知見が低い事柄を扱う場合、自身の経験上、言葉の選択が大きく影響すると指摘しているのだ。
「多くの米国人は『農産物の新品種を開発するためにバイオテクノロジーを使う』ことを支持するが、『食品を遺伝子組み換えするのにバイオテクノロジーを使う』ことには反対する。遺伝子組み換え食品という言葉が嫌われる。」
「同様に消費者は『遺伝的に同一のコピーを作るための動物クローニング』を不快に感じるが、3分の2はクローニングが日常的な動物繁殖技術になることを期待する。FDAについてもこの比率は同じであり、FDAがそれらを安全であると決定したなら、人々はクローン動物由来食品を買ったり、買うことを考えたりするだろう。」
「世論調査は消費者の認識や理解を知る上で有効なツールであはるが、消費行動を予測するためには慎重に判断されるべきだ」というのがこの専門家からの結論である。筆者も大分前に世論調査の問題点に触れたことがあり、この見解は支持できる。
もう一つの意見は、Center for Science in the Public Interestの理事からで、消費者が遺伝子組み換え食品にあいまいな主な理由は、FDAの現行規制システムが不備だからだと指摘し、規制強化を提案している。
「米国政府は、他国と比較してGM農産物の安全を認可しない(筆者注:開発メーカーのFDAに対するガイダンスという形を取る現行システムは、このように表現されても仕方がない部分がある)。もし、FDAが安全だと決定しないなら、消費者はなぜGM食品を受け入れるべきか? バイオ工学食品の認可を必要とする法律は、消費者のそれらに対する意識を改善し、海外市場からら締め出しを食っている農家にも恩恵となるだろう。」
「世論調査のニュース記事が引用したように、メディアも常に米国人の心が安らぐのを手伝うわけではない。ミスリーディングの例として、大豆レシチンやコーンシロップのように高度に精製された食品も、我々が「遺伝子組み換えされた」食品を食べていることを意味する。組み換えられた遺伝子あるいはタンパク質が、それらの製品には含まれない。」
紙数が尽きたので詳細な内容紹介はできないが、もう1本この調査に関連するコメントを貼っておく。
参照記事4
TITLE: Pew’s New Biotech Report Misses the Mark
SOURCE: Truth About Trade & Technology, by Henry I. Miller
DATE: Dec. 16, 2006
GM推進派の論客Henry I. Miller博士が、例によってThe Pew InitiativeやCenter for Science in the Public Interestの主張に対し痛烈な批判を展開している。興味のある方は上記原文でどうぞ。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)