GMOワールド
こちらの記事は以前に、日経BP社のFoodScienceに掲載されていた記事になります。
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GM作物と在来・有機農作物との共存および3農法選択の自由を農家に保証するための方策を模索中のEU諸国の中で、2004年6月に最初に国内共存法を立案したのはデンマークである。11月23日、欧州委員会はこの施行に対し、初の承認を与えた。
参照記事1
TITLE: European Commission authorises Danish state aid to compensate for losses due to presence of GMOs in conventional and organic crops
SOURCE: The European Commission
DATE: Nov. 23, 2005
欧州委員会は03年7月に共存ガイドラインを公表したが、実施方法は加盟各国に現状任されている。デンマーク以外にも04年11月には、ドイツ、オランダ、イタリアなどが続々共存法を策定している。
しかし、加盟国がこれらを施行させるためには、欧州委員会に施行細則などを通報し、関連する現行EU法や指令との整合性についてチェックを受けなければならない。この審査を今回始めて通ったのがデンマークの共存法施行細則である。
共存法施行における最大の論点は、GM農産物からの花粉の飛散などによりGMのコンタミネーションが起こり、在来・有機農作物側が経済的被害を受けた場合に生ずる補償問題である。デンマーク共存法では、以下のようになっている。
農家のみを対象とする金銭的補償が発生するのは、GMの混入率が欧州委員会のGM表示のための閾値である0.9%を越えた場合のみであり、補償額は非GMとGMの市場価格差の範囲内に留められる。補償金の財源は、認可制であるGM栽培農家が1ヘクタール当たり100DKR(13.4EUR、約1900円)を拠出する。また、この補償は5年間の時限措置である。
デンマーク共存法は、成案当時同国農業大臣であったMariann Fischer Boel女史の自信作である。Boel女史は、04年11月、欧州委員会の農業・農村開発担当に転出している関係上、仮に今後欧州委員会が補償制度も含めて統一共存法またはガイドラインを策定するなら、その原型はこのデンマークモデルに近くなる公算が大きい。
ところで、北海道の富良野を舞台とする倉本聰のテレビシリーズ「北の国から」をご覧の方は多いだろう。『’98時代』では、有機農業を営む青年のジャガイモ畑に病気が発生し、感染を恐れた隣接する農場主が無断でトラクターを乗り入れて農薬を撒く場面があった。有機農業側からの近隣被害への法的補償は、今まで誰も問題にしなかったのだろうか。
さて、EUでは12月2日、Monsanto社のMON863とMON810をスタッキングして複数の害虫に抵抗性を併せ持つハイブリッドタイプのトウモロコシについて、環境閣僚理事会が輸入と飼料用途使用を審議したが、9月19日の環境専門家会議に引き続き、合意に失敗した。
参照記事2
TITLE: EU Ministers Fail to Agree on Monsanto Modified Corn
SOURCE: Bloomberg
DATE: Dec. 2, 2005
また、スイスでは、11月27日GM作物の国内栽培禁止に係わる国民投票が行われた。全26州の平均投票率42%のうちGM栽培禁止に賛成55.7%で、2010年10月までのモラトリアムが承認された。なお、GM試験栽培は禁止されないが、研究施設をほとんど北米に移したとはいえ、同国に本社を置くSyngenta社にとっては不満足な結果だろう。
参照記事3
TITLE: Swiss back GM moratorium and Sunday shopping
SOURCE: swissinfo
DATE: Nov. 27, 2005
先週触れた11月23日から北京で開催された中国国家農業GM作物バイオセーフティー委員会は、GMイネ品種に関する商業化申請で予想通り合意に達しなかった模様だ。
参照記事4
TITLE: China committee not recommending GMO rice
SOURCE: Reuters, by Nao Nakanishi
DATE: Nov.28, 2005
来日したISAA(国際アグリバイオ事業団)会長のClive James博士は、12月2日東京で講演し、途上国なかんずく人口問題を抱えるアジアにおけるバイオ作物の今後の拡大を強調されていたが、大規模に実現するにはまだまだハードルがある。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)